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神話を作る方法─大友克洋GENGA展

2012-04-10 23:08:03 | マンガ
大友克洋GENGA展@外神田・3331 Arts Chiyoda (開催中~5月30日、1500円、予約チケット制)
デビュー39年を迎える大友克洋、日本マンガ史に「大友以前・以降」との区分を与えるほどの影響を及ぼし、海外も含めフォロワーを生み続けている、その業績を初期作品から最新カラー作品、さらに『AKIRA』の全原稿まで一挙に展示する初の総合原画展!



桂正和の世界展@渋谷パルコ6F・パルコファクトリー(開催中~4月16日、無料)
『ウイングマン』『電影少女』『I”s』などの話題作を生み、近年では大ヒット中の『TIGER & BUNNY』のキャラクターを創案した桂正和の、『ZETMAN』TVアニメ化を記念した個展。ZETMAN原作複製原画や関連資料を展示。



pixivでファンタジー系のイラストを発表してる方々の間では、「ソーシャル系の仕事は単価が安い上に払いが悪い」のが定説なんだそうな。
ソーシャル系の仕事=スマホなどのゲーム・アプリやゲームSNSに、剣を持った少女とかのキャラクターを作って売る仕事。ゲーム自体は無料で、一人でも多くの客を集めることにより、広告や何らかの仲介業で儲けるビジネス・モデルなんだろうけど、無いところからは取れないよなァ
そんなゲームで時間をつぶす連中をいくら集めたところで、将来性のある話になるわけもない。
キャラの絵も、たとえ上手でも、発想がありきたりだ。手に職があってもつぶしが利かない。えらい時代になったものだ。



大友克洋さんの作風を、日本のマンガ離れして、フランスのバンドデシネやアメリカン・コミックに近い─とするのは、ちょっと違う気が。
海外のマンガって、日本のマンガとは似て非なるもので、小説的な言葉を絵で説明する「絵本、絵物語、イラスト・ストーリー」とでも呼んだ方が早い。
日本のマンガは、絵と言葉が渾然一体となって世界観を形成するが、どちらかといえば絵が主導だ。
そこへ散りばめられた、ドドドドド、グワシャ、ズガーン、ゴロゴロ…といった描き文字も、即座に言葉として読み取ることができるわれわれは果報者だ。展示された『童夢』のクライマックス部分の原画を見ながら、涙がにじんだ。大友さんが、読者のためというより、まず自分自身を信じて、納得のいくまで描き尽くそうという信念がもたらした、まったく新しいマンガ。
今も古びていない。マンガの作風とは発明のようなものだ。↓画像のような、身も蓋もないリアルな日本人顔を描きながら、読者を現実ではない夢の世界へいざなうことに成功した大友さんの作風には、多くの追随者も現れたが、誰一人ご本家を超えてはいない。
その後で足を運んだ桂さんも、そうとうに絵の達者な方だが、大友さんに比べるとショボく見えてしまう、キャラクター商売のニオイもあり。大友さんは単体のイラストでも世評高いし、キャラクター的な商売もその気になればこなせるでしょうが、何よりまずマンガを作ることに全力を注いだことで確立された世界観により、一生つぶしが利いてお釣りがくる創造者となった。久方ぶりで気分がアガるイベントとして、ぜひお勧めいたします。

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