トシの読書日記

読書備忘録

道徳的法則に対する尊敬に基づく動機

2009-05-27 17:09:28 | な行の作家
中島義道「悪について」読了



時々飲みに行くバーの飲み友達で本の好きな人がいて、彼も中島義道を何冊か読んでいるそうで、その中から僕の未読の1冊を貸してもらったのです。


岩波新書から出ているだけあって、他の中島本とは違い、かなり難しかったです。カントの「人倫の形而上学の基礎づけ」と「実践理性批判」を読み解きながら、人間の心の奥に潜む「根本悪」について解説したものです。


例えば「約束を守る」という行為、「人に親切にする」という行為は、一見、道徳的に考えて善であると思われるのですが、そういったことをする人の心の裏側には、「約束を破ると信用がなくなるから」とか「親切にすると他の人から賞賛を受けるから」といったような「自己愛」が潜んでいるというわけです。


では、人間はそういった「自分を大事にしたい」という利己的な気持ちを一切断ち切って道徳的な行為ができるかというと、それは人間である限り無理だと思うんです。じゃぁどうすりゃいいのって話なんですが、本書でも中島氏が言っていますが、その答えは「ない」んですね。どうすればいいのか、悩んで悩んで悩み抜くのが(あえて言うなら)正解であると。


まぁ、こういった哲学的な問題には「これだっ!」というような答はないのが常なんですが、それでも、読み終えてすっきりしない気分です。


中島義道の本は、当分読むの、よそうと思ってたんですが、友達が貸してくれたんで読まないわけにもいかず、そしてまたちょっともやもやした気持ちにさせてくれました(笑)

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