トシの読書日記

読書備忘録

没落者の粋

2007-10-28 18:47:05 | ま行の作家
町田康「きれぎれ」読了

またまた町田康です。芥川賞受賞作とのこと。

「くっすん大黒」「へらへらぼっちゃん」等、テイストは同じなんだけど、やっぱりそれぞれ微妙に違うところがあり、本作が一番おもしろかった。あ、あと「権現の踊り子」もよかったなぁ。
池澤夏樹の解説にあるように、この作家の文体は、一見だらだらしゃべってるだけのように見えるが、実によく計算されている。
古典的常套句を随所に散りばめ、徹底した一人称。読んでいて爽快なドライブ感がある。

併載の「人生の聖」も、なかなかでした。



ここ最近の購入本

太宰治「走れメロス」
長嶋有「いろんな気持ちが本当の気持ち」
大道珠貴「ミルク」
角田光代「対岸の彼女」
倉橋由美子「あたりまえのこと」

「走れメロス」は15分で読んでしまいました(笑)またいずれ感想を・・・

振り返ってみます。

2007-10-13 16:39:11 | Weblog
友人のK氏にすすめられてこのブログを始めて、気がついたら1年2ヶ月が経っていた。

ここで、既読本の整理をしてみようと思い立った。
カテゴリを50音別にして、作家を振り分けてみました。一回の記事で複数の作家の本の感想があるものは、コピーしてそれぞれに分類しました。

そして、ここで、時間の流れに沿って過去を振り返ってみようと思います。
まず、月別の読んだ本の数。


2006年  8月  5冊 
       9月  8冊
      10月  8冊
      11月 12冊
      12月  5冊
2007年  1月  6冊
       2月  6冊
       3月  3冊
       4月  1冊
       5月  1冊
       6月  2冊
       7月  2冊
       8月  2冊
       9月  5冊
    
              合計66冊


4月から仕事の環境が大幅に変わり、また人手不足もあって3月あたりからいきなりペースが落ちてます。まぁ、読書は義務でもないし、まして数を競うものでもないのでいいんですがね。
あと、自分の精神状態によって本に向かう気持ちが強いときもあれば弱いときもあるので、これからも好きなように読んでいこうと思ってます。

ここで、記録として、この1年2ヶ月で読んだ本を列記してみます。(作家名は、あいうえお順です)
 


安部公房 「人間そっくり」
嵐山光三郎 「寿司問答 江戸前の寿司」
池田清彦 「他人と深く関わらずに生きるには」
いしかわじゅん 「業界の濃い人」
泉麻人 「ありえなくない」
絲山秋子 「イッツ・オンリートーク」
井上荒野 「ヌルイコイ」「もう切るわ」「潤一」
今邑彩 「つきまとわれて」
上原隆 「雨にぬれても」
魚住陽子 「公園」
内海隆一 郎 「居酒屋志願」
大崎善生「九月の四分の一」
太田和彦 「東海道居酒屋五十三次」
小川洋子 「犬のしっぽを撫でながら」「薬指の標本」「海」「物語の役割」
     「妖精が舞い降りる夜」「ブラフマンの埋葬」
奥田英朗 「マドンナ」
金井美恵子 「愛の生活」
川上弘美 「真鶴」
岸本佐知子 「ねにもつタイプ」「気になる部分」
北尾トロ 「キミは他人に鼻毛が出てますと言えるか」
桐野夏生 「OUT」「アンボス・ムンドス」
佐藤智加 「肉触」
重松清 「きよしこ」
清水良典 「村上春樹はくせになる」
関川夏央 「石ころだって役に立つ」「やむにやまれず」
杉浦日向子 「4時のおやつ」「ごくらくちんみ」
大道珠貴 「傷口にはウォッカ」「銀の皿に金の林檎を」「ひさしぶりにさようなら」
高橋源一郎 「もっとも危険な読書」
高見広春 「バトルロワイアル」
辻仁成 「ピアニシモ」「白仏」
筒井康隆 「日本以外全部沈没」
中島義道 「<対話>のない社会」
長嶋有 「ジャージの二人」
夏目房之介 「風雲マンガ列伝」
ナンシー関 「小耳にはさもう」
橋本治 「生きる歓び」
古川日出男 「LOVE」
堀江敏幸 「いつか王子駅で」「雪沼とその周辺」「めぐらし屋」
町田康 「夫婦茶碗」「権現の踊り子」「くっすん大黒」「町田康詩集」
三崎亜記 「バスジャック」
村上春樹 「ダンス・ダンス・ダンス」「短編集 象の消滅」
山口正介 「山口瞳の行きつけの店」
山口瞳 「巨人ファン善人説」
山崎マキコ 「さよなら、スナフキン」
山田太一 「君を見上げて」「飛ぶ夢をしばらく見ない」
渡辺淳一 「白き狩人」


こうしてみると、小川洋子が1番多くて6冊、次に町田康で4冊、あと井上荒野、大道珠貴、堀江敏幸がそれぞれ3冊となっている。
あくまで、ここ1年2ヶ月の傾向なのでなんともいえないが、小川洋子は3年くらい前に知ってはまりました。町田康も同じくらいかな。
書棚を見ると、圧倒的に場所を占めてるのは山口瞳です。最近はとんと読んでませんが・・・。数えたら山口瞳、58冊ありました!

でも、1冊しか読んでない作家が圧倒的に多くて、最近は広く、浅くという傾向にあるようです。

でも、こうして自分の読書歴を作ることができたのもひとえにK氏のおかげです。この場を借りて改めて御礼申し上げます。ありがとうございました!

透明な日常

2007-10-11 19:12:46 | あ行の作家
井上荒野「だりや荘」読了

井上荒野の長編を久しぶりに読みました。
今までの小説とどこかが違うという思いをずっと抱きながら読み、そしてその違和感が拭えないまま読み終わってしまいました。

これは一体なんだろうと、ずっと考えてて一つ思い当たることが。

この小説は、舞台が信州の山の中で、その景観というか、自然の描写がそこここに描かれててそういったものが今までの荒野にはなかったものだったんですね。

「グラジオラスの耳」「もう切るわ」などに代表される荒野の世界。それは、たとえば男と女が喫茶店で話をしてるシーンがあったとしたら、その店の様子は一切書かれてないんです。そんなものは邪魔だと言わんばかりに。
それが、この小説では山の緑の色の様子だとか、姉妹が老人たちの社交場のようになっている岩風呂へ行ったときの、そのお風呂場の様子だとかが割とていねいに書かれているんです。

井上荒野の小説は、ひとつひとつのシーンを切り取ってそれを集めて展開していくような鋭さがあって、そこが好きだったんですが、「だりや荘」ではそんな手法が影をひそめてしまっていて、そこがちょっとねって感じでした。

でも、話の内容はなかなか引き込まれるものがありました。

カバー裏の紹介をそのまま引用します。

両親の死を機に、東京を引き払い、信州でひとり暮らす姉のそばへ越してきた妹夫婦。両親の気配の残る小さな宿を引きついで、おだやかな日常が始まったように見えたが、そこでは優しさにからめとられた残酷な裏切りが進行していた―――精緻な描写と乾いた文章が綴るいびつな幸福。うつくしく痛ましい愛の物語。

解説の川本三郎・・・まったく見当はずれの解説で「はぁ」って感じです。この小説を全然読まずに書いたのでは、と思わせるくらいひどいです。



今日、出かけたついでに本屋に寄って、以前「週刊ブックレビュー」で角田光代が推していた「千年の祈り」(イーユン・リー著)を買い求める。「ズームーデイズ」は見当たりませんでした。堀江敏幸のエッセイが出ていたので、これも買う。「アイロンと朝の詩人 回送電車Ⅲ」というタイトルで、この人は回送電車シリーズみたいな感じで書き溜まったものを定期的に出しているようです。これはその第3弾のようです。
これの前に「バン・マリーへの手紙」を読まねば(笑)

虚飾のビバカッパ

2007-10-01 02:05:02 | ま行の作家
町田康「浄土」読了

文芸誌に発表したものを集めた短編集。
「犬死」
「どぶさらえ」
「あぱぱ踊り」
「本音街」
「ギャオスの話」
「一言主の神」
「自分の群像」
の7編が収められている。

相変わらずの町田ワールドです。いいなぁこういう世界。
でも、つまんないのもいくつかあって、全てを心ゆくまで味わえなかったのがちょっと残念。
「犬死」、「あぱぱ踊り」、「一言主の神」が出色でした。

しかし、昨日も書いたように大崎善生を読んでからこれを読むと、同じ文学でもこうも違うもんかと、ほんと、びっくりします。


NHKテレビでやってる「週間ブックレビュー」を毎週楽しみに見てるんですが、
今日、角田光代が薦めてた本に興味が湧きました。ひとつは「千年の祈り」(著者名失念、中国の人)、あと井上荒野の「ズームーデイズ」。
今度本屋へ行ったらチェックしてみよっと。


これからの読書予定本

堀江敏幸「バン・マリーへの手紙」
中村文則「土の中の子供」
モブ・ノリオ「介護入門」
阿部和重「グランド・フィナーレ」

めずらしく、男性作家ばかりです。しかも堀江以外、芥川賞受賞作でした(笑)