野坂昭如「妄想老人日記」読了
いやぁびっくりしました。我が敬愛する野坂昭如が12月9日に亡くなったという新聞記事を読んで茫然としてしまいました。この作家の本は何冊も読んできましたが、やはり「エロ事師たち」が一番面白かったです。また一人、素晴らしい作家がいなくなってしまいました。
本書は平成12年に新潮社より単行本として、平成22年に中公文庫より発刊されたものです。先日ネットで偶然本書を購入したので早速読んだ次第です。
平成10年5月から11年12月までの約1年半の日々を日記という形式で綴ったものです。なので、野坂氏、68~69才の時期ということになります。まぁ日記なので野坂氏のプライベートのいろいろなことが解ってきます。奥様は元タカラジェンヌで、現役のシャンソン歌手とのこと。二人の娘も宝塚OGのようです。
しかしそれはいいとして、この人の酒の飲み方は只者ではないですね。一応断酒と言いつつ嫌酒薬なるものを服用しているようなんですが、その狭間で缶ビール24本とか飲んでいるようです。1日何も食べずに飲んではうつらうつらし、それが3日も続いたりと、ほとんどアル中です。
文中には戦争の悲惨さを思う箇所が随所に見られ、野坂の戦争に断固反対する強い思いが測々と伝わってきます。
晩年は脳梗塞で倒れてからはリハビリの身だったとか。先日のあの「戦争法案」をどのように受け止めたのか、今となっては聞くこともかなわなくなりました。
85才の激動の生涯を閉じられ、今頃あの世で思いっきり酒を飲んでいることでしょう。心よりご冥福をお祈りいたします。