トシの読書日記

読書備忘録

急逝した作家の遺志

2016-09-13 17:39:30 | な行の作家



野呂邦暢「白桃―野呂邦暢短編選」豊田健次編 読了



先日読んだ同作家の「草のつるぎ/一滴の夏」で、本書をまた読みたくなり、再読してみました。


これもやはりいいですね。前にも書いたと思うんですが、「藁と火」、これがすごいです。長崎の原爆投下をモチーフに書かれた作品なんですが、センテンスを極端に短く切った文体が小説全体に揺るぎない緊張感を与えています。まさに渾身の力作であると言えると思います。


そして最後に収められている「花火」、これもいいですね。巻末の豊田健次氏の解説を読んで知ったのですが、本作は野呂の代表作「諫早菖蒲日記」の後日譚とのこと。以前、これをネットで調べてみたとき、けっこうな値段がついていたんですが、今、見てみたら、梓書院というところから新装版として1741円で出てるので(古本ですが)、注文してみます。


「花火」の舞台は明治維新後の諫早なんですが、登場人物の描き方が実にていねいで、読んでいてなんともいえないいい心地にさせてくれる作品です。


何度も言いますが、昭和55年、42才という若さで亡くなった野呂邦暢。本当に惜しい人を亡くしました。残念でなりません。

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