スティーブン・ミルハウザー著 柴田元幸訳「バーナム博物館」読了
本書は平成14年に白水社の白水Uブックスより刊行されたものです。この白水Uブックスは自分のお気に入りのシリーズで、このミルハウザーとか、ジャネット・ウィンターソンとか、ニコルソン・ベイカーとか、ほんとに面白い翻訳物を出しています。ミルハウザーの作品はひととおり読んでいたつもりで、本書ももしやダブり?と思ったのですが、初読でした。安心しました。
しかしすごいですね。相変わらずやってくれます、ミルハウザー。この想像力の豊かさには舌を巻きます。本書は10の作品が収められた短編集なんですが、「不思議の国のアリス」を下敷きにしたものがあったり、「シンドバッドの冒険」を元にしたものがあったり、T・Sエリオットの詩を漫画化し、それをさらに言葉で表してみたりと、もう縦横無尽、自由自在に筆を駆使しています。
中でも出色なのは表題作の「バーナム博物館」でしょう。その博物館の内部の描写はそれこそミルハウザーお手の物なんですが、それよりそこに訪れる人達の心理を巧みに言い表しているところにこの作品の魅力が隠されているように思います。
久々にミルハウザーの魔力にどっぷり浸らせて頂きました。
読書ってほんと、楽しいです。