大江健三郎「芽むしり仔撃ち」読了
昭和33年に発表された大江健三郎、初の長編であります。ずっしりと読み応えのある作品でした。
戦争末期、山中の僻村に集団疎開した15人の感化院の少年達の物語です。村に来た少年達は、その村で流行り始めていた疫病のため、村人達が少年達を置き去りにして逃げていくのを目の当たりにして茫然とする。しかし、無人になった村で少年達は、愛と連帯の「自由の王国」を建設しようとするが、それはしばらく経って様子を見に来た村人にもろくも崩されることになる。
お前達が村でしでかした悪業を許してやる代わりに、俺達がお前らを見捨てて他へ行ったことを誰にも言うな、と村長は少年達に取引を迫る。そして、ほぼ丸一日何も食べてない彼らに、握り飯と熱い味噌汁を用意する。「言うことをきくやつは飯を食っていいぞ」と言う村長の言葉に少年達は空腹のあまり、ついに屈服してしまうのだが、主人公の「僕」だけは、頑としてその取り引きをはねのける。が、しかし…。という話です。
まだいろいろなものがすり減っていない若い彼らが、築こうとしていたユートピアが、世俗にまみれた大人達につぶされると、簡単に言ってしまえばそんな物語なんですが、そこで繰り広げられる少年達の喜び、興奮、怯え、緊張、落胆等の心理描写が実に巧みで、彼らの息づかいを間近に感じられるほどの素晴らしい作品に仕上がっています。堪能しました。
昭和33年に発表された大江健三郎、初の長編であります。ずっしりと読み応えのある作品でした。
戦争末期、山中の僻村に集団疎開した15人の感化院の少年達の物語です。村に来た少年達は、その村で流行り始めていた疫病のため、村人達が少年達を置き去りにして逃げていくのを目の当たりにして茫然とする。しかし、無人になった村で少年達は、愛と連帯の「自由の王国」を建設しようとするが、それはしばらく経って様子を見に来た村人にもろくも崩されることになる。
お前達が村でしでかした悪業を許してやる代わりに、俺達がお前らを見捨てて他へ行ったことを誰にも言うな、と村長は少年達に取引を迫る。そして、ほぼ丸一日何も食べてない彼らに、握り飯と熱い味噌汁を用意する。「言うことをきくやつは飯を食っていいぞ」と言う村長の言葉に少年達は空腹のあまり、ついに屈服してしまうのだが、主人公の「僕」だけは、頑としてその取り引きをはねのける。が、しかし…。という話です。
まだいろいろなものがすり減っていない若い彼らが、築こうとしていたユートピアが、世俗にまみれた大人達につぶされると、簡単に言ってしまえばそんな物語なんですが、そこで繰り広げられる少年達の喜び、興奮、怯え、緊張、落胆等の心理描写が実に巧みで、彼らの息づかいを間近に感じられるほどの素晴らしい作品に仕上がっています。堪能しました。