トシの読書日記

読書備忘録

2月のまとめ

2012-02-29 17:38:45 | Weblog
今月読んだ本は以下の通り


ミランダ・ジュライ著 岸本佐知子訳「いちばんここに似合う人」
J・L・ボルヘス著 土岐恒二訳「不死の人」
朝倉かすみ「好かれようとしない」
安原顯「乱読すれど乱心せず」
久世光彦「桃」
小池昌代「自虐蒲団」


以上の6冊でした。今月はなんといってもボルヘスに時間がかかりました。今月半ばから始めたキャンペーンで、仕事がめっちゃ忙しくなり、店でおちおち本を読んでいられなくなりました。忙しいのは結構なんですが、読めないのはつらい。ストレスたまりまくりです。

言葉の官能

2012-02-29 17:20:35 | か行の作家
小池昌代「自虐蒲団」読了



先日、書店でたまたま見つけ、買ったものです。自分の大好きな作家の未読本を書店で偶然見つけると、すごく得をした気分になります。


「言葉」を仕事とする人達を主人公に据えて、8つの短編が収められています。詩人、俳人、腹話術師、コピーライター等々…。どこかユーモラスでそれでいて哀しい話です。


先日読んだ「怪訝山」の爆発力に比べると、ちょっとぬるい感じは否めないものの、やっぱり小池昌代だと思わせるなんとも不思議な世界が展開していて、面白かったです。





書店で以下の本を購入


中島義道「人生に生きる価値はない」

中島義道は、もう読むのはよそうと思っていても、新しいのが出るとついつい買ってしまうダメな私です。

滴り落ちる濃密な苦恨

2012-02-21 17:23:50 | か行の作家
久世光彦「桃」読了



堀江敏幸の書評集「本の音」で紹介されていて興味が湧き、買って読んでみました。久世光彦という人は、いわゆる玄人筋に受けのいい作家で、この前読んだ安原顯も絶賛しておりました。


しかし、どうなんでしょうねぇ。自分には合わないっすねぇ…。この本は八つの作品が収められている短編集なんですが、一言で言うとあざとい感じがどうもつきまとうんです。自分で書く文章に酔っている気味合いもあって、どうにも好きになれません。


テレビドラマの演出をしたり、小説を書いたりと非常に多才な人ではあるんですが、僕はダメでした。残念です。

正義の人

2012-02-15 17:13:40 | や行の作家
安原顯「乱読すれど乱心せず」読了



2003年1月、癌のため64才で亡くなった書評家で編集者の書評集であります。書棚を眺めていたら、なぜかこの本が目に飛び込んできました。何年か前に読んだものの再読です。


日本文学の名作と呼ばれる46の作品を、安原顯が歯に衣着せぬ語り口で解説をしております。


この中で自分も読んだ本は12冊。自分の感じたものと比べてみるのもなかなか面白かったです。こういった書評集を読むのは、大きな楽しみのひとつでもあるんですが、読みたい本がさらに増えてしまうという弊害もあります。


で、この本を読んで、読みたくなった(又は読まねばと思った)本を列挙します。



永井龍男「蜜柑 その他短編」
久世輝彦「聖なる春」
中上健次「蛇淫」
上林暁「白い屋形船/ブロンズの首」
澁澤龍彦「ねむり姫」


またまた読みたい本がこれだけ出てきました。ほんと、困ったもんです。

大人の恋

2012-02-08 18:09:43 | あ行の作家
朝倉かすみ「好かれようとしない」読了



ボルヘスでいい加減肩が凝ったので、軽めのやつをいってみました。これは姉から借りたもので、姉はこの作家の「肝、焼ける」にいたく感動して、ちょいちょい朝倉かすみを買っては読んでいるようなんですが、僕にしてみれば朝倉かすみは、とうの昔に見限っておりまして、この作品もまぁ息抜きに読んでみっかという程度の気持ちで読んだのでありました。


やっぱり息抜きにはちょうどいい本でありました。面白いんですがね。いかにも軽い。しかし、山崎ナオコーラよりはいいかな。



この小説は、20代後半から30代前半くらいの未婚女性が読むにはぴったりだと思われます。まぁそんな本を50ヅラ下げたおっさんが読むのもどうかと思いますが(笑)

アレフ---無限定にして純粋な神性

2012-02-08 17:56:33 | は行の作家
J・L・ボルヘス著 土岐恒二訳 「不死の人」読了



以前、同作家の「砂の本」というのに手を出してその難解さに音を上げ、挫折したという苦い経験をしたのですが、このままおめおめと引き下がるというのもいかにも口惜しく、ネットでわざわざ本書を取り寄せて再挑戦した次第です。


しかし、これも難解でありました。同じ作家が書いているんですから当たり前といえばそうなんですが、もう修行のような心持ちで読了致しました。


どこの国のどの時代の話なのかが曖昧で、しかも登場してくる人物達の名前がやたら長く、難しく、本当に苦労しました。


これで感想を書こうなどとは到底おこがましく、まぁ読んだということでよしとします。



疲れた――

孤独が放つ火花

2012-02-05 15:40:16 | さ行の作家
ミランダ・ジュライ著 岸本佐知子訳「いちばんここに似合う人」読了



姉に「あなたは気に入ると思うよ」と言って貸してくれた本です。気に入りました。


16の作品からなる短編集です。テーマは共通しています。「孤独」です。人とつなが合いたい、わかり合いたいと願う彼ら、彼女らのなんと不器用なこと。時にはほほえましく、時にはなんともやり切れない気持ちにさせられます。


しかし、読後、不思議と暗い気持ちにならないのはなんでしょう。訳者の岸本氏があとがきで「人はみな孤独だ。だが孤独を通じてつながることができるのかもしれない」と書いていますが、そういう逆説的な希望を感じるからかもしれません。


著者は1974年生まれといいますから、まだ38才の気鋭であります。もともと映画の制作をしたり、パンクバンドのプロモーションビデオを監督したりと、映像方面で活躍していた人だったようです。それと平行して小説も書き始めたということですから、多才な人なんですね。


またまたすごい作家を発見してしまいました。目が離せない作家がどんどん増えて、うれしい悲鳴であります。