トシの読書日記

読書備忘録

ボブ・ディラン「激しい雨」

2018-12-18 18:46:16 | ま行の作家



村上春樹「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」(下)読了


本書は昭和63年に講談社文庫より発刊されたものです。




博士が「私」の脳に細工をしたために、「私」には現実世界での「死」が訪れる。「ハードボイルド・ワンダーランド」の章では、「私」が現実世界で死ぬまでのことを書いてるんですが、「私」の心の動きが、時間の経過と共に刻々と移り変わっていく様が、村上春樹ならではの筆力で描かれていきます。


博士の孫である、ピンクのスーツの太った娘と朝を一緒に過ごしたあと、コインランドリーへ行ったり、ビアホールでビールを飲んだりしたあと、図書館の女の子と食事をする。そしてそのあとは、女の子の家へ行って一緒に過ごす。翌朝、「私」は日比谷公園の芝生に寝転んでビールを飲んだ後、港へ車を走らせ、そこで「私」に眠りがおとずれます。現実世界での「死」がやってくるわけです。


「世界の終わり」の方はというと、「僕」は自分の影と、今いる世界からの脱出を試みます。しかし、最後の最後、「僕」はその世界にとどまることを選びます。影と「僕」が離ればなれになってしまうと、「僕」は森の中にしか住めなくなり、そして森から永遠に出ることができなくなるんですが、それでも「僕」は森の中に住むことを決断します。なぜならその世界は「僕」の意識下で作った世界だから。「僕」自身の責任のためにも「僕」はそこを出ることはできないというわけです。そして影は「たまり」から出ていきます。


ここで、やっと「ハードボイルド・ワンダーランド」で現実世界での死を受け入れた「私」が「世界の終わり」に来たんだということが、遅まきながら自分は理解することができました。


一角獣の頭骨、光をまぶしいと感じる感覚、図書館の女の子等、二つの世界には呼応するものがいくつかあります。そのあたり、この小説のテーマとなり得るメタファーとして読んでいくと、なかなか味わい深いものがあります。表層意識とか深層意識とか、いろいろ難しく読む方もいらっしゃると思いますが、自分はもっと単純にこの世界を楽しませてもらいました。


いやぁほんと、この作品は何度読んでも面白い。先日、姉と会ってこの話をしていたんですが、この作品が生まれたのは、ほとんど奇跡といってもいいくらいのものであるとということで意見が一致しました。


次はちょっと寄り道して、またまた村上作品、いってみたいと思います。



今年もいよいよ押し詰まってまいりましたが、来週の火曜日はクリスマスということで、お店は営業いたします。そして翌週の火曜日は1月1日、お正月ということで、ここも営業。2週連続休みが飛んでしまうので、次のブログ更新は来年の1月8日になるかと思います。もし、毎週見ている方がいらっしゃるのなら、すみません、そんな訳ですので、よろしくお願いいたします。


どうぞよいお年を。





夢を読む人

2018-12-18 18:25:17 | ま行の作家



村上春樹「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」(上)読了



本書は昭和63年に講談社文庫より発刊されたものです。


さて、いよいよ脂ののってきた村上春樹の長編小説です。前に読んだ「羊をめぐる冒険」よりも長い作品です。


タイトルの通り、「世界の終わり」という物語と「ハードボイルド・ワンダーランド」という物語が別々の章立てになっていて、それぞれ語られていきます。どちらの世界もすごいですね。ほんと、面白い。特に「ハードボイルド・ワンダーランド」の方は、話がどんどん展開していって、下巻ではどんな事態が「私」を待ち受けているのか、もうわくわくですね。そして「世界の終わり」の「僕」。こちらも静謐な世界で、なんというか、たんたんと過ぎていく感じが「ハードボイルド・ワンダーランド」の世界と全く対照的で面白いですね。


さぁ、下巻では「ハードボイルド…」の「私」と、「世界の終わり」の「僕」はどうなってしまうのか。刮目して待て!ってなもんです。ずっと昔に読んだきるで、どちらの結末も全く覚えてないので、すごく楽しみなのであります。



久しぶりに名古屋市内に出て、パルコの中にある映画館でエリック・クラプトンのドキュメント映画を見て(あまり面白くなかった)、パルコの本屋で以下の本を購入


カズオ・イシグロ著 古賀林幸訳「充たされざる者」 ハヤカワ文庫
イタロ・カルヴィーノ著 米川良夫訳「見えない都市」河出文庫
平野啓一郎「ある男」文藝春秋
谷口ジロー「描くよろこび」平凡社コロナブックス

11月のまとめ

2018-12-04 17:08:29 | Weblog



11月に読んだ本は以下の通り


村上春樹「羊をめぐる冒険」(上)(下)


と、たったの1タイトル2冊という結果でした。


それでも、自分のイチオシの村上作品が読めたことは僥倖でした。今、「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」を読んでるんですが、「羊」に負けず劣らずすごい小説です。これも、もう3回目か4回目くらいの再読なんですが、毎回わくわくさせられます。


姉からまたまた以下の本を借りる


佐藤泰志「黄金の服」小学館文庫
池澤夏樹「静かな大地」朝日文庫
萩耿介「イモータル」中公文庫
内田百閒「大貧帳」中公文庫
村田沙耶香「殺人出産」講談社文庫
多和田葉子「献灯使」講談社文庫
田辺聖子「新源氏物語」(上)(中)(下)新潮文庫


やれやれです。


11月 買った本0冊
    借りた本9冊