トシの読書日記

読書備忘録

12月のまとめ

2008-12-29 16:57:28 | Weblog
12月に読んだ本は以下の通り


須賀敦子「ヴェネツィアの宿」
辺見庸「自動起床装置」
山口瞳「男性自身 禁酒時代」
山田太一「いつもの雑踏 いつもの場所で」
田辺聖子「言い寄る」
町田康「真説・外道の潮騒」
平安寿子「愛の保存法」
つげ義春「ねじ式/夜が摑む」
山口瞳「江分利満氏の華麗な生活」


今月は9冊でした。まぁ12月ですからこんなもんでしょう(苦笑)

今月は特別出色な本には出会わなかったものの、山口瞳を2冊も読んで、まずまず充実したのではないかと思っています。


「今年を振り返って」みたいな」記事は、たいてい年末に書くようですが、僕としては今月がきっちり終わってからでないと書く気がしないんで(笑)今年1年のまとめは来月早々に書くつもりです。残り3日で今、読みかけの本を読んでしまうかもしれないしね。

市井の人

2008-12-29 16:39:21 | や行の作家
山口瞳「江分利満氏の華麗な生活」読了

言うまでもなく「江分利満氏の優雅な生活」の続編であります。

「優雅な・・・」もそうなんですが、小説というよりエッセイというか、作者の主義、理念、そういったものを主人公に言わせているといった体裁をとっています。ずっと以前読んだ、野坂昭如の「死刑長寿」もそんな感じだったんですが、なにか、そういったジャンルがあるんでしょうかね。

とにかく、山口瞳のダンディズム満載で読んでて非常に気持ちがいいです。

江分利満氏(山口瞳)の好きなもの、嫌いなもの、そしてそのわけ。思わず「そうそう!」と膝を打ちたくなるところが何箇所もありました。僕はこの人のセンスが好きです。

山口瞳で今年の読書を締めくくったということで、「山口瞳の会」の会員の面目がなんとか立ったかな(笑)

非日常の誘惑

2008-12-29 16:25:47 | た行の作家
つげ義春「ねじ式/夜が摑む」読了

読了といっても漫画ですが(笑)いつも行く本屋のちくま文庫のコーナーにずっと前からあって気になっていたのです。

高校生のころ、「ガロ」という漫画雑誌を読んでいたのですが、そのあたりの作品ですね。もう30年以上前の話です。当時の僕は、本作家よりも鈴木翁二とか阿部慎一あたりが好みで、つげの漫画はあまり読まなかった記憶があります。

でもしかし、現在こうやって35年経った今でも新刊として刊行されるというところに彼の漫画の底力をみる思いがします。

実際、今読んでみると、むしろ今の時代だからこそ感じ入るものがあるように思い、漫画の普遍的な力を思い知らされます。

以外とエロチックなシーンが多いのにはちょっと驚かされましたが(苦笑)

保存と消去は紙一重

2008-12-17 11:50:19 | た行の作家
平安寿子「愛の保存法」読了

この作家、なんとなく好感がもてるんですが、かんじんの作品がいまひとつなのばっかりですねぇ。よかったのは「グッドラックららばい」くらいかなぁ。

この短編集もご他聞にもれずあんまり・・・でした。

「・・・・困り者のダメ男にわがまま女。全編、くすっと笑えて、ちょっぴりしみじみの傑作短編集」とありますが、全然笑えないし、しみじみもしませんでした。残念!

長幼の序について

2008-12-17 11:42:23 | ま行の作家
町田康「真説・外道の潮騒」読了

「外道」シリーズ(?)第2作といっていいのかな?以前、「実録・外道の条件」というのがあり、それに続くものです。内容はまったく別の話ですが。

まぁ、相変わらずです。読まなくてもよかったかも(笑)

前回読んだ田辺聖子とは両極をなす感じの作家ではありますが、共通点があります。「大阪弁」です。でも、田辺聖子の小説の大阪弁は、たとえば人の行動をとがめる場合、「なにしはりますのん」みたいな感じですが、町田康のそれは「なにさらしてけつかんねん!ぼげぇ!しばくど くぅらぁ!」になるという、大きな違いがあります(笑)

徒労感満載の小説で、読了後、しばし放心状態でした(笑)

女心と冬の空

2008-12-17 11:27:33 | た行の作家
田辺聖子「言い寄る」読了

川上弘美が「大好きな本」で強力に推していたので買ってみたんですが・・・。

うーん・・・どうなんだろ。「そんなに?」というのが第一感。もちろんおもしろいんですが、どうにも古くさいんですねぇ。といっても設定は現代だし、自由奔放にふるまう女性も出てきたりしてるんですが、登場人物の色分けのしかたが非常にわかりやすく、手法が古典的なんですね。

1500円の価値は僕にはありませんでした。残念!

読みたい本

2008-12-10 17:03:30 | Weblog
「ダ・カーポ」が知らない間に復刊していて、「今年最高の本」という特集をやっていたので思わず買ってしまいました。

その中から読みたい本をここに書きとめておきます。


丸谷才一「蝶々は誰からの手紙」
エイミー・ベンダー「わがままなやつら」
大崎善生「将棋の子」
ベルンハルト・シュリンク「朗読者」

以上4冊です。未読本がどんどん増える中、いつ買うかわかりませんが(笑)

自分の思想を懲らしめる

2008-12-10 16:42:10 | や行の作家
山田太一「いつもの雑踏 いつもの場所で」読了

山田太一の小説は好きでよく読むんですが、これはエッセイです。著者、4冊目のエッセイとのことです。

やっぱり視点が常人とちがいますねぇ。はっとさせられるものがいくつもありました。例えば「・・・・通常マイナスと思えるもの、邪魔と思えるものが、実は私たちをどれだけ豊かにしているかということを思うのである。」として、たまたま見に行った小学校の運動会が、後半雨になってしまい、中止になるのかと思いきや、最後の全員参加のリレーだけを生徒がずぶぬれの泥だらけになりながら敢行したことに対する感動が綴られている。

ほかにも「『オーケストラの少女』はひどい映画か?」というエッセイでは、指揮者の岩城宏之氏の著作から話を起こし、高校生の頃に岩城氏が「オーケストラの少女」という映画を見て余りにも感動し、夢遊病者のようになって「今に音楽家になろう」と決心するのだが、後年、その映画がNHKで放送され、今度は「実に、なんともやりきれないくらいのひどい映画だ」と感じてしまう。「目の前がまっ暗になるほど、ぼくは失望した」とも。

ここから何を考えるかというと、若い人が見て感動するものは、老境にさしかかったような大人が見ればなんてことない、つまらないものが実に多いということなんですが、だからといって、それを若者が見ることを抑制してはならないと、筆者は言うわけです。岩城氏の例が示すように、いわゆる「怪我の功名」になることも充分あり得るからと。ここに教育問題のむずかしさがあると山田氏は述べています。

自分は教育問題に対しては関心がないので(失礼!)それ以上は深く考察しませんが、この著者の視点、切り口が新鮮でおもしろいんですね。あんなおもしろい、素晴らしい小説を書く所以だと、深く感じ入った次第です。

市民にして無頼

2008-12-10 16:30:15 | や行の作家
山口瞳「男性自身 禁酒時代」読了

この間読んだのに続く男性自身シリーズです。

日々のどうということのない出来事を綴ったエッセイなんですが、相変わらずいいですねぇ・・・。出典は失念しましたが「日々是無事」という言葉を思い出します。やはり山口瞳、時々は読まねば。

覚醒という名の奈落

2008-12-10 16:21:38 | は行の作家
辺見庸「自動起床装置」読了

以前、「メロディアス・ライブラリー」で小川洋子が同作家の「もの食う人びと」の紹介をしていて、興味が湧いたんですが、家の本棚からこれを見つけたので読んでみました。本作品は第105回芥川賞受賞作とのことです。

何百人もの社員をかかえる通信社の仮眠室に眠る男達を起こすバイトをする主人公。通称「起こし屋」と呼ばれている男二人が眠りについて様々な現場を見て「眠り」、「覚醒」について深い思いにとらわれていくといったストーリーです。途中、自動起床装置なるものが導入されて、二人はお払い箱になってしまうのですが・・・。

まぁ、眠りに関する新境地を描いた佳作といった印象でしたが、これが芥川賞ですか・・・。

解説に今自分がはまりかけてる村田喜代子だったのがちょっとびっくりでした。

併載の「迷い旅」。こっちのほうが衝撃でした。これを例えば中島義道が読んだらどんな感想を漏らすのだろうか。「どうせ死んでしまうのに一所懸命生きててもしかたない。」こんな思想を粉々に打ち砕く小説です。小説というよりこれはルポかもしれないです。私は打ちのめされました。自分の考えを根底から揺さぶられる思いでした。