トシの読書日記

読書備忘録

甘やかな青春の残像

2010-03-15 18:27:32 | か行の作家
黒井千次「たまらん坂」読了


以前、「日の砦」でこの作家はすごいと思い、気になっていたのですが、同書をたまたま書店で見かけ、読んでみた次第。

七編の短編が収められている短編集です。中央線沿線、いわゆる武蔵野といわれている地域の坂、用水路、通りの名前を小説の題材に仕立て上げ、主人公は人は違えど、全て50代半ばから後半くらいの男という設定です。


やっぱりうまいですね。多分、小島信夫とか、そのあたりの作家と同世代だと思うんですが、黒井千次はひとつ抜きん出ている感じがします。

ストーリーは、概ね50代の定年間近の男が30年も前の淡い思い出をたよりに「お鷹の道」とか「滄浪泉園」へ行き、感慨にふけると思いきや、こんなはずではなかったと思うような事が起こり…というような作りになっています。


自分は、東京の人間ではないのですが、中央線沿線、特に国立、国分寺、武蔵小金井あたりに住んでいる人が本書を読んだなら、また格別の面白さがあるんでしょうね。

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