トシの読書日記

読書備忘録

小説っていいね!

2006-09-30 19:19:32 | た行の作家
高橋源一郎「もっとも危険な読書」読了。

といっても、これは書評本です。
2年前に、病気で入院していたときこれを読み、読みたい本をチェックして、退院後すぐさま本屋に走った記憶がある(笑)

今回再読したのは、関川夏央についての記述がたしかあったはずと、ぱらぱらやってるうちにおもしろくて、また読んでしまったというわけです。

そしてそして、また読みたい本が出てきました。

荒川洋治「夜のある町で」
夏目漱石「こころ」
関川夏央『「坊ちゃん」の時代』(コミック)
関川夏央「豪雨の前兆」
松元寛「漱石の実験」
サイモン・シン「フェルマーの最終定理」
上野千鶴子「上野千鶴子が文学を社会学する」
奥泉光「フォギー 憧れの霧子」

とまぁこんなとこです。
2年前に20冊ほどピック・アップして、10冊くらいを本屋で見つけて買ったのだが、3冊くらいつまらなくて途中で放り出したままである(笑)

後書きから・・・・

>スリル、緊張、集中、ほとんど恐怖に近い感情の揺れ。やがてわたしたちの前で世界が一変する。静かで単調な表面の奥に、そんななにかを隠した本を読んでみたい。
 わたしたちに必要なのは危険な読書だ。いや、あらゆる読書は危険でなければならないのである。

これがすべてとは思わないが、そそる言葉ではあります。

こんなもんかな

2006-09-28 20:28:46 | あ行の作家
奥田英朗「マドンナ」読了。

「最悪」が手強そうだったので、まずこちらからと思って読んだのだが、軽すぎました(笑)

5編からなる短編集で、それぞれ40代の課長が主人公という構成。

自分はサラリーマンでもないので、共感するところもないし、まぁ、毒にも薬にもならない本でした(苦笑)

ただひとつ。「ボス」という短編で、新任の女性部長が歓迎会の席で、「部長、ワインが好きなんですか」という質問に答えて、「ワインだと、今はシャトールージュなんかが好きですけど」と答えるのだが、そんな銘柄のワインはありませんから(笑)

奥田英朗の、この小説に対する気持のこもらなさが如実に伝わってくる。
ちょっと調べればすぐわかることなのに。

この本1冊で奥田英朗のイメージを作ってしまうと、コアな奥田ファンから猛然と抗議がきそうなので、「最悪」は読みます。いつかね(笑)

「こちら側」に生きることの意味

2006-09-23 19:26:17 | ま行の作家
村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス・」読了。

いつも見るG氏のブログより・・・
> 「無常観」とはまさにこのようなもの。10回でも100回でも読むべし。生きるとは何かということの一面がわかる。小説の最後の一行の奇蹟がある。

以前に読んだ小説なのだが、このコメントに触発されて再読。

読み始めると、夢中になって止まらなくなる。読んでないときも頭から離れない。
こんなに小説に没頭したのは、ほんとに久しぶりのことである。

「こちら側」の世界と「あちら側」の世界、それを繋げる羊男、キキの耳、五反田君との出会いと死・・・・
春樹ワールド満載です(笑)

ただ、難をいうと結末があれではまずいのではないかと・・・。
ユミヨシさんとハッピーエンドになってしまっては、それまでのメタファーに意味がなくなってしまうと思うのだが。

ともあれ、久々に「物語」のおもしろさを堪能した次第です。

物語の終焉

2006-09-20 17:32:27 | さ行の作家
関川夏央「石ころだって役に立つ」読了。

この作家に興味があって読んだのだが、この作家に興味があるものにあまり興味をもてない。

1964年に公開された松竹映画「乾いた花」とか、須賀敦子の話とか、ルナールの「にんじん」とか、山本七平の話とか、僕には興味のない話で、関川夏央がなぜ、これらをとり挙げるのか、もっぱらその心理を解き明かそうとして読んでいた。

書棚を見たら、「中年シングル生活」という同作家のエッセイを見つけた。「既読」のコーナーにあるので、以前に読んだと思うのだが、まるで記憶にない(笑)
今度、再読してみることにしよう。

混濁に困惑 魑魅魍魎になす術なし

2006-09-17 02:09:30 | は行の作家
古川日出男「LOVE」読了。

なんと言ったらいいのか・・・言葉が見つからない。
とりあえず、疲れました(笑)

読み終えて、こんな開放感を味わった小説は未だかつてない。

3分の2くらいまで、なんの話なのかわからない、登場人物が多すぎてわけがわからない、
この話を俯瞰する角度から見る人がいて、その人の語りによって話が進むのだが、それが、どんな意味を持つのかわからない・・・・
と、わからないことだらけで、久々にしんどい読書をした。

登場人物を列記してみよう
カナシー(椎名可奈)、吉村キシ、ドナドナ(巽葉)、江原由佳、ユウタ(田渕佑多)、秋山徳人、ジャキ(横井真沙季)、シュガー(佐藤美余)、山辺麻衣佳、礼山礼子、丹下健次朗、トバスコ(藤村加奈芽)、ボーイ(戸田慎)、磯部朋子、大嶽陽一、オレンジ、非、涙腺、オリエンタ(錦織円太)、黒澤カズヤ。以上20人。

それぞれについて話が進んでいく。で、誰かと誰かが出会ったりする。出会わなかったりもする。そこになにか必然性があるのかというと、そうであるような、そうでもないような・・・

正直言って、僕の手には負えませんでした(苦笑)
でも、途中で放り出す気にもならなかったのは、それなりにおもしろかったからなのだろう。
誰か、この小説の素晴らしさを僕に熱っぽく語ってほしい。
切に願う次第です(笑)

犬と家族

2006-09-14 01:42:25 | た行の作家
谷口ジロー「犬を飼う」読了。
といっても、これはコミックですが。

「犬を飼う」「そして・・・猫を飼う」「庭のながめ」「三人の日々」「約束の地」の五編からなる漫画集。

犬を飼うことの楽しみ、そして犬が死ぬつらさ・・・谷口ジローの絵がまたいい。
その分、感情移入が激しくなる(笑)
動物の死は、言葉を交わすことができないだけに切ないものである。
普通に泣けました(笑)

あと、印象に残ったのは、「約束の地」。
ヒマラヤのアンナプルナ登頂に失敗し、再度アタックすることを一時は断念するが、
やはりあきらめきれず挑戦し、ついにアンナプルナの頂を踏むという男の話。
谷口ジローの絵が美しい。  


今日も今日とてブックオフ

2006-09-07 19:54:42 | Weblog
仕事を夕方で切り上げ、ブックオフへ。

購入本
久世光彦「触れもせで」
橋本治「シンデレラボーイ シンデレラガール」
杉浦日向子「呑々草子」
杉浦日向子「合葬」
笙野頼子「二百回忌」
奥田英朗「マドンナ」
谷口ジロー「犬を飼う」
中村南「サイドショー」

「触れもせで」は、向田邦子との20年間の交流を綴ったもの。
「シンデレラ~」は、橋本治の未読本なので。「人生の実用書」と帯にある。
「呑々草子」は、杉浦日向子なので。
「合葬」も同じ。これは漫画です。
「2百回忌」は、この作家は、以前「タイムスリップコンビナート」を読んで、ひっくり返ったんです(笑)すごい小説だったんだけど、(芥川賞受賞)なんだか小説として完成してない感じがして、もひとつ読んでみようと思ったわけです。
「マドンナ」は、この間、同じ作家の「最悪」というのを買ったのだが、ちょっと手強そうなので、見た目も軽そうなこっちからやっつけようかと(笑)
「犬を飼う」、これも漫画です。谷口ジロー、好きなんです。犬とかペットにはあまり、興味はないんだけど、なにしろ谷口ジローなので(笑)
「サイドショー」、この作家は、まったく知らない人なんですが、ぱらぱら見ておもそろそうだったので。



今、古川日出男の「ラブ」を3分の1ほど読みかけている。予想を越えた面白さ。
「ポスト・村上春樹」と、どこかの書評に書いてあったてが、当たらずとも遠からずといったところか。

小説のあたたかさ

2006-09-06 00:46:57 | は行の作家
堀江敏幸「いつか王子駅で」読了。

最近読んでいる本とは、まったくスタイルが違うので、少々面食らったが、
素晴らしい小説であった。
しかし、修飾語の多いこと!(笑)ほとんど1ページ句点のない箇所も一つや二つではなかった。村上春樹もここまではやらんでしょってくらいです。

でも、ほんと、いい小説でした。馬というモチーフを下敷きにして話は進んでいくのだが、そこに出てくる人達に対する作者のあたたかさが、じんわり伝わってくる。

島村利正とか、瀧井孝作とか、いつも見るブログのVさんとか、Hさんがいかにも好みそうな話ではある(笑)

昨今の薄っぺらな作家(そんなのばかり読んで喜んでいるのだが 笑)とは一線を画した、本物の文学がここにある。


薄められた感覚

2006-09-05 03:57:13 | た行の作家
大道珠貴「傷口にはウォッカ」読了。

「背く子」で度胆を抜かれ、「裸」でひっくり返り、「しょっぱいドライブ」で、ま、こんなもんかと思った人なんですが、この小説を読んで、さらに大道テイストが薄まった感じ。
ぬるさ加減が糸糸山秋子に近いというか、それとはまたちょっと違うのだが、
糸糸山秋子のできそこないかな(笑)

悪くはないんです。悪くはないんですが、なんていうか、もうちょっと「背く子」とか
「裸」で見せたような切れ味がないんですね。禍々しい虚脱感のようなものがこの作家の持ち味なんですが、かなり薄まってます。

でも、もし永遠子さんのような人が恋人だったらどうなんだろってちょっと考えさせられた(笑)