多和田葉子「犬婿入り」読了
本書は平成10年に講談社文庫より発刊されたものです。
ずっと以前読んだものの再読です。考えてみれば、自分が多和田葉子と最初に出会ったのは本書でした。この芥川賞受賞作の「犬婿入り」を読んで以来、すっかり多和田葉子の魅力にとりつかれてしまっております。
再読して思ったのは、一度読んで深い感動を味わった作品を、何年か後に再読してみたとき、当時の思いのそれほどのレベルにならないという経験を何度もしているんですが、本書は違いましたね。やっぱりこの小説は何度読んでも面白い。
併載されている「ペルソナ」という中編、これもなかなかのものです。言語にこだわる、いかにも多和田葉子らしい作品でした。
解説の与那嶺恵子という人、全く存じ上げないんですが、なかなかむつかしい言い回しで本書を分析しているんですが、これが名解説なのか、はたまた迷解説なのか、よくわからないんですが、例えばこんな文章…
<言葉が伝達の手段を超えて<もの>の本質として屹立する言語空間が立ち現れているのである。>
まぁなんとなくわからないでもないですが、犬の婿入りという日本各地に伝わる伝説、昔話を多和田葉子流に料理した話を、面白く読むだけでいいのでわ?と思ってしまうのは私だけでしょうか。