トシの読書日記

読書備忘録

2月のまとめ

2019-02-26 13:53:40 | Weblog



今月読んだ本は以下の通り


村田沙耶香「コンビニ人間」
大江健三郎「見るまえに跳べ」


以上の2冊でした。「村上春樹祭り」と言ってるのに2月は1冊も読みませんでした。来月、「献灯使」読んだら「ねじまき鳥」3部作に取り掛かろうと思っております。


実は今日、仕事が休みで、大阪の天王寺の美術館へ「フェルメール展」を見に行こうと思っていたんですが、今年42になる甥が今朝、急逝しまして、今日通夜、明日告別式と、そんな物見遊山している場合ではなくなってしまいました。いいやつだったんですがね。朝からがっくりしております…。


2月 買った本 11冊
   借りた本 6冊

屈服感と自己欺瞞

2019-02-26 13:12:50 | あ行の作家



大江健三郎「見るまえに跳べ」読了



本書は昭和49年に新潮文庫より発刊されたものです。


何年か前に「大江健三郎祭り」を開催しまして、本作家の著作を20冊ほど読んだんですが、この初期の短編集を見落としておりまして、タイトルがなんだかかっこよかったので、買って読んでみたのでした。



大江健三郎という作家は「悪文」ということで知られているんですが、本書は特にその兆候が顕著で、例えばこんな文章…


<麻薬煙草はわたしに水のような量感と重みのある時が静かに流れる川に体をひたしているという感じの時間認識の感覚をもたらし、それはまたわたしを静止しているのではない現実の流動する本質に近づけ認識を深化させる効能をもつのである。>(「上機嫌」より)


またこんなのも


<それに現実はいかなる場合にも静止して存在するものではない。存在する、という言葉にすでに時間の観念が混入しているのであって、事物が存在するとは時間の推移のある一区切のあいだ各瞬間にわたって存在しつづけるということである。静止した現実はないのだから現実をあたかも静止しているかのようにとらえるやりかたはまちがっている。>(同上)


よーくかみくだきながら読まないと何を言っているのかさっぱりわかりません。


しかし、全部で10編の作品が収められているんですが、全体に青年の懊悩といったものを描いていて、秀逸なものが多かったという印象です。特に最後の「下降生活者」という短編、これはすごいです。自分を欺いて大学の助教授までのし上がっていった男が、本当の自分を見つめたいがために噓をつき、そのせいで一人の男が死んでしまうという話なんですが、40年以上前の作品でも全く古びてない人間の弱さの本質を鋭く突く素晴らしい作品だと思いました。


「村上春樹祭り」と言いながら寄り道ばかりしておりますが、おとといのFM愛知の「メロディアスライブラリー」で、再来週に多和田葉子の「献灯使」を取り上げるというじゃありませんか!これは前に姉から借りててずっと読まなくてはと思ってた本で、今、ちょっと「ねじまき鳥」読みかけていたんですが、まぁ仕方ないっすね。またまた村上春樹は後回しにして多和田葉子を読みます。



買った本

2019-02-19 17:14:21 | Weblog



先週、読了した本が1冊もないので、昨日、名古屋駅へ行って本を買ってきたのでそれを記しておきます。


JR高島屋の三省堂書店とジュンク堂書店で以下の本を購入

武田百合子 画・野中ユリ「ことばの食卓」ちくま文庫
武田百合子 写真・武田花「遊覧日記」ちくま文庫
リチャード・ブローディガン著 藤本和子訳「西瓜糖の日々」河出文庫
リチャード・ブローディガン著 藤本和子訳「アメリカの鱒釣り」新潮文庫
山口瞳著 小玉武編「山口瞳ベスト・エッセイ」ちくま文庫
橋本治「お春」中央公論新社
四方田犬彦「すべての鳥を放つ」新潮社
レイモン・クノー著 朝比奈弘治訳「文体練習」朝日出版社
平松洋子「そばですよ」本の雑誌社
松家仁之「光の犬」新潮社
ミランダ・ジュライ著 岸本佐知子訳「最初の悪い男」新潮クレストブック



「普通」であることの不思議

2019-02-12 13:39:25 | ま行の作家



村田沙耶香「コンビニ人間」読了



本書は去年の9月に文春文庫より発刊されたものです。第155回芥川賞受賞作で、姉から借りた本です。この作家は、読もうと思って自分から買ったことはないんですが、本書もまぁ借りて読むくらいでよかったかな、と思わせる作品でした。


小さい頃からちょっと「変わった」女の子がそのまま大きくなって大学へ入り、コンビニでバイトを始め、卒業してからもそのままフリーターとしてコンビニバイトを続けている女性が主人公の話です。古倉恵子、36才。コンビニバイト歴18年。独身、彼氏なし、処女(多分)というプロフィールはそんなに珍しいものではないかなとも思うんですが、考え方がちょっと変わってるんですね。あとで調べてみたら、こういった人はアスペルガー症候群と呼ぶらしいです。


こういった、少し特異な考え方をする、いわゆるマイノリティに対して、周囲が「普通」を押し付けようとする構図はあまりに分かりやすすぎて、逆について行けませんでした。文章も平易すぎて面白みに欠けるし、まぁほんの1・2時間で読める本なんで、時間のムダが少なかったのがせめてもの救いでした。


非常に残念でした。

1月のまとめ

2019-02-05 17:33:24 | Weblog



1月に読んだ本は以下の通り


大本泉「作家のまんぷく帖」
村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」(上)(下)
谷口ジロー「描くよろこび」


以上の3タイトル4冊でした。


村上春樹の絶頂期の作品を読む喜びをかみしめております。今後は「ねじまき鳥」の3部作を経て「海辺のカフカ」あたりでしめようかなと思っております。「国境の南、太陽の西」とか「スプートニクの恋人」とかありますが、まぁそのへんはいいかなと。他にも読みたい本がいろいろあるので、寄り道しながらゆっくりやっていこうと思います。


1月 買った本0冊
   借りた本0冊



姉と今さっき飲んでしゃべってきて、今、帰ってきました。それで以下の本を借りてきました。



大竹昭子「須賀敦子の旅路」文春文庫
清少納言「枕草子」角川ソフィア文庫
伊藤比呂美+枝元なほみ「なにたべた?」中公文庫
ガブリエル・ゼヴィン著 小尾美佐訳「書店主フィクリーの物語」早川書房
ブルース・チャトウィン著 芹沢真理子訳「パタゴニア」河出文庫
リチャード・パワーズ著 柴田元幸訳「舞踏会へ向かう三人の農夫」 河出文庫


またまた未読本の山がふえてしまいました。いいんですけどね。

読むよろこび

2019-02-05 17:17:40 | た行の作家



谷口ジロー「描くよろこび」読了



本書は平成30年に平凡社より発刊されたものです。


言わずと知れた「孤独のグルメ」の原作の漫画を描いた作家です。何年も前に「犬を飼う」という作品を読んで、市井の人々の何でもない日常に妙に感動してしまった記憶があったんですが、本書はその谷口ジローの生涯の仕事と、それにかかわった人達の追悼文で構成されたものです。そう、谷口ジローは約2年前に69才という、あまりにも早い生を閉じたのでした。


やっぱりこの人の絵はいいですねぇ。「孤独のグルメ」の主人公、井之頭五郎が物を食べるとき、その口に入れる瞬間の目がすごい。ちょっと他の漫画家にはあれは描けないと思います。ちょっと変な表現ですが、目が泳いでるんですね。それが何とも言えない味を醸し出している。これが計算なのかそうでないのか、知る由もありませんが。


本当に惜しい人を亡くしました。もう一度家にある彼の作品を読み返してみたいと思います。確か、「散歩もの」と「犬を飼う」があったはず。