トシの読書日記

読書備忘録

言葉の持つ毒

2012-03-21 17:18:44 | や行の作家
吉本ばなな「とかげ」読了



毎晩寝る前に少しづつ読んで、読み終わるのに3ヶ月ほどかかってしまいました。吉本ばななの「キッチン」という作品があるんですが、これがまた素晴らしい小説で、この作家の力量に感心したものでしたが、これはちょっとどうなんですかねぇ。


ちょっと自分の書く言葉に酔ってるきらいがあります。何を言ってるのかわからないところがちょいちょいあって、例えばこんな文章…


<私の愛は君のと少しちがう。たとえば君が目を閉じた時、まさにその瞬間に宇宙の中心が君に集中する。すると君の姿は無限に小さくなり、後ろに無限の風景が見えはじめる。君を中心にして、それはものすごい加速でどんどん広がる。私の過去のすべて、私の生まれる前のこと、書いたことのすべて、今まで私が見てきたすべての眺め、星座、遠くに青い地球の見える暗黒の宇宙空間まで。>



表現したいことはなんとなくわかるんですが、なんだかなぁという思いが、どうしてもつきまとってしまうんですね。それで、なんだかいらいらしながら読んだ3ヶ月でありました。



この作品を読了した翌朝の新聞で、ばななの父である作家で哲学者の吉本隆明氏の訃報を知って、ちょっと不思議な気持ちになりました。

裏切りという名の兄弟愛

2012-03-21 17:12:29 | な行の作家
西川美和「ゆれる」読了



同名の映画を監督した西川氏がシナリオをもとに小説化したものだそうです。


まぁ面白いといえば面白いんですが、自分はこの手の作品ははっきり言ってあまり興味がないですねぇ…テーマは兄弟愛ということなんでしょうが、兄を裏切ることで真の兄弟愛を貫いた弟ですが、それほどシンパシーを感じませんでした。残念。

生きる意味

2012-03-09 16:28:10 | な行の作家
中島義道「人生に生きる価値はない」読了



雑誌「新潮+45」に連載されたエッセイをまとめたものです。相変わらずの中島節であります。しかし、今まで読んできたものと少し違う点があるとするなら、「どうせ死んでしまうのなら生きていても意味はない」と言っているにもかかわらず、意外とジタバタしているところですかね。


とまれ、中島義道の提唱する「明るいニヒリズム」には、やはり強いシンパシーを感じないではいられません。



先日、姉から以下の本を借りる


大江健三郎「読む人間」
稲葉真弓「唇に小さな春を」
カズオ・イシグロ「浮世の画家」
バルガス・リョサ著 西村英一郎訳「密林の語り部」
西川美和「ゆれる」
フォークナー著 加島祥造訳「サンクチュアリ」
辻原登「抱擁」
多和田葉子「雪の練習生」


またたくさん貸してくれたもんです。読みたい(読まなきゃいけない)本が山とあるのに…ちょっとありがたメイワク(笑)