トシの読書日記

読書備忘録

「かっこう」とメイが言う

2019-01-29 17:32:22 | ま行の作家



村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」(下)読了



本書は平成3年に講談社文庫より発刊されたものです。


「僕」はユキの世話をしたり、映画俳優で同級生の五反田君と会ったりして毎日を過ごします。殺されたメイについては警察の捜査は何の進展もありません。


そして「僕」はなんというか、話の流れでユキとハワイへ行くことになります。ハワイで10日ほどのんびりして日本に戻るんですが、「僕」はなんと、ハワイでキキに出会うんですね。しかし、それは現実のことなのか、そうでないのか、そのあたりははっきりとしません。「僕」は絶対に現実のことだと思い込もうとするんですがね。


そして「僕」は東京に帰って来るんですが、いろんな人が死にます。ユキの母親のアメの世話をしている片腕の詩人、ディック・ノース。そしてキキ、それから五反田君。何かがつながりそうでつながらない、そんな手詰まりの状況の中、「僕」はもう一度札幌へ行こうと思い立ちます。そこでユミヨシさんに会おうと。


こうして「僕」はさまざまな希望と絶望を通り抜けながら、ユミヨシさんと結ばれるわけですが、札幌のドルフィンホテルで羊男のいる「あちら側」の世界へユミヨシさんと行ったくだり、あれが夢オチだったとは、いささか陳腐な感も否めないんですが、そのラストを除けば、ほんと、面白い小説でした。この当時の村上春樹には読む者をぐいぐい引き付けるとてつもないパワーがありました。やっぱりこの頃の村上春樹が絶頂なのかなぁ。


次は「ねじまき鳥」にいってみようと思います。その前にちょっと別の本をはさもうかなと思っております。

オドルンダヨ。オンガクガツヅクカギリ

2019-01-22 14:20:42 | ま行の作家



村上春樹「ダンス・ダンス・ダンス」(上)読了



本書は平成3年に講談社文庫より発刊されたものです。


「羊をめぐる冒険」から4年。激しく雪の降りしきる札幌の町から「僕」の新しい冒険が始まる…。と裏表紙のキャプションにあります。


そうなんです。本書は「羊をめぐる冒険」の続編ともいうべきもので、「僕」のその後の話になっています。


北海道で衝撃的な出来事にいくつも遭遇した後、「僕」は東京に戻ってしばらく隠遁生活を続けます。しかし、数ヶ月するうち、「僕」はもう一度札幌へ行かねばという思いを強くし、再度札幌を訪れます。しかし、そこにはかつての「いるかホテル」はなく、新しく巨大な「ドルフィンホテル」が建っていたのです。


この小説はいくつかの軸のようなものがあって、そのひとつがこの「ドルフィンホテル」が、なぜ「いるかホテル」に取って代わったのか、という謎。そして有名な女流写真家の娘の13才のユキという少女の面倒をみることになり、そこから派生する物語。これは、後半へ続いていくと思われます。


そして、高校の時の同級生で、今や一流の映画俳優の五反田君との出会い。そして、そこから札幌で失踪したキキの情報を得るんですが、前半ではまだキキとはめぐり合っていません。そしてキキの仲間のメイの死。自分のうろ覚えですが、メイもキキも五反田君が殺したのではなかったか?


いくつもの謎を孕みつつ物語は後半に突入していきます。めちゃ面白いです。細かい内容を忘れちゃってるんで何回でも楽しめます。

食の大切さと言葉の力

2019-01-15 18:22:48 | あ行の作家



大本泉「作家のまんぷく帖」読了



ちょっと寄り道しました。本書は平成30年に平凡社新書より発刊されたものです。


タイトルの印象で、作家の食にまつわるエピソードを並べただけのものと思い、息抜きにと手に取ったのですが、あにはからんや、思ったよりそれぞれの作家に対する強い思いと、かなり綿密な資料の裏付け等があり、相当深い内容になっていました。


登場する作家は総勢22名。それぞれにそれぞれの味があり、非常に興味深く読むことができました。

中でも出色なのは、やはり山口瞳ですね。まぁ自分のひいきもあるんですがね。山口以外の文士もよくかよったという鉢巻岡田。「鉢巻岡田の鰹の中落ちを食べないと夏が来ない」は、有名なセリフです。


また、武田百合子が夫の武田泰淳が亡くなる直前に食べた枇杷の話を読んで、「ことばの食卓」早く買って読まねばと思った次第です。


この大本泉さんという方、全く存じ上げないんですが、大学の教授のようです。それぞれの作家へのアプローチの仕方がなかなかうまいなと思いました。


面白く読ませていただきました。

2018年を総括

2019-01-08 17:56:38 | Weblog



では、2018年を振り返ってみたいと思います。読んだ冊数自体が少なく、また、再読もけっこうあったので、今回はベスト10とします。


<1> 吉田知子「千年往来」
<2> フリオ・リャマサーレス著木村榮一訳「狼たちの月」
<3> カズオ・イシグロ著 土屋政雄訳「忘れられた巨人」
<4> 吉田知子「日本難民」
<5> 若竹千佐子「おらおらでひとりいぐも」
<6> フランツ・カフカ著 辻ヒカル訳「審判」
<7> 幸田文「おとうと」
<8> 渡辺利夫「放哉と山頭火―死を生きる」
<9> 町田康「ギケイキ」
<10>坂口恭平「現実宿り」



という結果になりました。吉田知子の未読本がまだあったことの喜び、なにものにも代えがたいです。そして姉に教えてもらったリャマサーレス。寂寥感ハンパないこの作家、大注目ですね。若竹千佐子も次作がすごく楽しみです。それからカフカの不思議と滑稽感の漂う理不尽な面白さ、この作家もすごいです。「城」、読まねば。


坂口恭平も訳が分からないんですが、なんというか、文学に立ち向かう姿勢に好感がもてるのでランクインさせました。


2018年は仕事の人手不足もあいまって読んだ数も少なく、また、10月頃から村上春樹祭りを始めたため、見た目はなんとなく実りの少ない感じではありますが、自分自身は全然そんなことなくて、いい作家にたくさん出会えたし、なにより村上春樹の初期の傑作群を再読できた喜びをしみじみかみしめて年を越せたことは今までにない幸せなことでありました。

今年は「ダンス・ダンス・ダンス」でスタートしようと思っております。


2018年 読んだ本 41冊(前年比76%)
      買った本 28冊(前年比74%)
      借りた本 41冊(前年比146%)

12月のまとめ

2019-01-08 17:03:04 | Weblog



クリスマスから年末年始と、息をもつけぬ忙しさが続き、今日、やっと休みがとれました。アルバイトは去年ほど悲惨な状態ではなかったので、(それでも充分な人の手配はできなかったですが)まぁなんとか乗り切ることができました。  それはさておき…。


112月に読んだ本は以下の通り


村上春樹「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」(上)(下)


と、1タイトル2冊にとどまりました。12月なんで、ま、こんなもんですね。しかし、中身は充実してました。この小説はほんと、面白い。「羊をめぐる冒険」が一番と思っていたんですが、こっちの方が上かもしれません。でもでも、今、読み始めている「ダンス・ダンス・ダンス」、これもなかなかどうして、めっちゃ面白いです。今、この村上春樹の初期の傑作集を読む幸せをしみじみかみしめております。


12月 買った本4冊
    借りた本0冊