トシの読書日記

読書備忘録

手を伸ばす。その先にあるもの。

2007-01-31 01:18:51 | あ行の作家
井上荒野「潤一」読了

島清恋愛文学賞受賞作だそうです。

潤一という男をめぐる9人の女性たちがそれぞれの視点から描いた連作短編集。
下は14歳から、上は62歳までの女性たちが登場する中、この62歳の「あゆ子」の話が一番よかった。もちろん、性的な関係はないのだが、あゆ子の、亡くなった夫に対する気持が、潤一と出会うことによって、見事に浮き彫りになってくる様子が新鮮だった。

しかし、井上荒野好きな私としては(笑)凡作と言わざるを得ないです。

ずっとさようなら

2007-01-26 01:29:29 | た行の作家
大道珠貴「ひさしぶりにさようなら」読了

もうね最悪。びっくりした。なにがって?一度読んでごらん。

大道珠貴は好きなんです。「背く子」を初めて読んでから「裸」「しょっぱいドライブ」「傷口にウォッカ」「銀の皿に金の林檎を」と、なんだかなーと思う作品はあったものの、それでもと思い、めげずにきたら「銀の皿に~」みたいな佳作に出会ったりして、よしよしって思ってた矢先なんです。

たしかにね、たしかに、わりと汚いというか、あらーと思うシーンはこれまでも少なからずありました。でも、さすがにこれはないんじゃないかと。やりすぎですって。大道さん。

どんな描写があったかとか、書く気になれません。胸が悪くなる。

併載されてた「いも・たこ・なんきん」も、平常心で読めばそれなりに評価できる作品かも知れないけど、すでに冷静さを欠いた状態で読んでしまったんで、なにも言う気になれません。

大道珠貴、見損なったぜ。

メタファーの森

2007-01-24 16:59:10 | さ行の作家
清水良典「村上春樹はくせになる」読了

いわゆる村上春樹の研究本なのだが、いつも見るブログのTさんが勧めていたので買ってみた次第。

村上春樹は一番といっていいほど好きな作家なのだが、「アンダーグラウンド」「約束された場所で」は読んでない。というか、読みたくないんです。

村上春樹は、僕にとっては上記のようなルポルタージュなんか書いてほしくないという思いがあって、遠ざけていました。

でも、この「・・・くせになる」で、春樹が何故そういった一連のルポを書くに至ったのか、その謎が解き明かされているとTさんが書いていたので読んでみたんです。

読み始めたら、いきなりその話から始まっていて、本書がそこに力点をおいていることがうかがえた。

理由はわかりました。わかりましたが釈然としないんです。
なぜ、村上春樹は地下鉄オウムサリン事件とか阪神淡路大震災といった俗世間の事件、天変地異に自分の死生観、小説のテーマを重ね合わせるのか。
そんなものとは、隔離された世界で「ハルキワールド」を展開してほしいと願うのは僕の我儘なんでしょうかねぇ。

まぁ、本人が言ってることではなく、清水氏のあくまで推測なのでなんとも言えませんが・・・

でも、ほかの小説、たとえば「ノルウェイの森」「ダンス・ダンス・ダンス」「アフターダーク」等に関しては、その読み解きかたは、なかなか興味をそそるものがありました。

Tさんは、「アンダーグラウンド」「約束された場所で」を書いた理由がよくわかったと言い、わかったので読まないと言ってました。

僕も釈然とはしないけどわかったんですが、やっぱり読みません(笑)

せつなく、そしてけなげで

2007-01-10 19:22:30 | た行の作家
大道珠貴「銀の皿に金の林檎を」読了

16歳の女子高生が31歳になるまでを「16歳」「21歳」「26歳」「31歳」と5年毎の4章に分けて書かれた物語。

本作家のテイストは、いつものままなのだが、「しょっぱいドライブ」「背く子」「裸」とはまた違う世界。

主人公の夏海が、なんとも健気でいじらしいんです。

祖母の子供が、孫の自分より年下という、要するに叔父、叔母が自分より若いという、複雑な家庭に育ち、また、祖母も母も水商売で、自分もまた、ホステスになるんです。

夏海は、いつだって一人で生きていけると思っているのだが、心の奥底では、やはり、愛する人、または家族というものを希求しているのだということが、にじみ出てるんですね。

祖母のツバメである、魚谷陽太郎に対する思いにそれがあふれている。小説の最後、31歳になった夏海は、一人、静岡の海のそばの古い家を借りて住むのだが、そこへ魚谷が突然やってくる。「家を修理しにきたから」と言って。
夏海は、魚谷に、ここにいつまでもいてほしいと願う。それは、男としての恋とか愛でもなく、かといって親として見ているわけでもなく、ここのところの夏海の微妙な心の描写が、なんともせつないんです。

僕が今まで読んだ、大道珠貴のナンバーワンでした。


北尾トロ「キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか」読了

今日、所用で出かけたついでに寄った本屋で買い、即、読み終わりました(笑)

これ、おもしろいです。裏表紙のコピーをそのまま引用します。

知人に貸した僅か2千円の返済を迫る、電車でマナー知らずの乗客を叱り飛ばす、初恋の女性に23年の時を越えて告白する、激マズ蕎麦屋で味の悪さを指摘する・・・・
変人だと思われ相手に逃げられようが、暴力を振るわれようが、後悔するより、まずは行動!ちょっとした胸のつかえを取るために小心ライターが挑んだ、愛と勇気のルポ。

気持がすごくよくわかります(笑)でも、それをやってしまうところがすごい!
決して見習おうとは思いませんが(笑)

(写)せつなく、そしてけなげで

2007-01-10 19:00:00 | か行の作家
大道珠貴「銀の皿に金の林檎を」読了

16歳の女子高生が31歳になるまでを「16歳」「21歳」「26歳」「31歳」と5年毎の4章に分けて書かれた物語。

本作家のテイストは、いつものままなのだが、「しょっぱいドライブ」「背く子」「裸」とはまた違う世界。

主人公の夏海が、なんとも健気でいじらしいんです。

祖母の子供が、孫の自分より年下という、要するに叔父、叔母が自分より若いという、複雑な家庭に育ち、また、祖母も母も水商売で、自分もまた、ホステスになるんです。

夏海は、いつだって一人で生きていけると思っているのだが、心の奥底では、やはり、愛する人、または家族というものを希求しているのだということが、にじみ出てるんですね。

祖母のツバメである、魚谷陽太郎に対する思いにそれがあふれている。小説の最後、31歳になった夏海は、一人、静岡の海のそばの古い家を借りて住むのだが、そこへ魚谷が突然やってくる。「家を修理しにきたから」と言って。
夏海は、魚谷に、ここにいつまでもいてほしいと願う。それは、男としての恋とか愛でもなく、かといって親として見ているわけでもなく、ここのところの夏海の微妙な心の描写が、なんともせつないんです。

僕が今まで読んだ、大道珠貴のナンバーワンでした。


北尾トロ「キミは他人に鼻毛が出てますよと言えるか」読了

今日、所用で出かけたついでに寄った本屋で買い、即、読み終わりました(笑)

これ、おもしろいです。裏表紙のコピーをそのまま引用します。

知人に貸した僅か2千円の返済を迫る、電車でマナー知らずの乗客を叱り飛ばす、初恋の女性に23年の時を越えて告白する、激マズ蕎麦屋で味の悪さを指摘する・・・・
変人だと思われ相手に逃げられようが、暴力を振るわれようが、後悔するより、まずは行動!ちょっとした胸のつかえを取るために小心ライターが挑んだ、愛と勇気のルポ。

気持がすごくよくわかります(笑)でも、それをやってしまうところがすごい!
決して見習おうとは思いませんが(笑)

ミステリはどうもね・・・

2007-01-05 01:24:16 | あ行の作家
今邑 彩「つきまとわれて」読了

12月にもう一回更新するつもりだったんですが、それもままならず年を越してしまいました。

本書は、12月に読み終わってたんですが、やっと感想を書けます。
こういった、いわゆるミステリってのは全然読まないんですが、なんとなくその気になって読んでみた次第。

なかなか面白かったです。8話からなる短編集で、前の作品の脇役が、次の作品の主人公になるという、趣向を凝らしたものになってます。ある事実があって、その裏に隠された真実というテイストで、いろいろ考えるもんだわいと感心しました。

12月の末に購入した本

清水良典「村上春樹はくせになる」
糸糸山秋子「海の仙人」
山田太一「路上のボールペン」
山田太一「いつもの雑踏いつもの場所で」
阿部和重「グランド・フィナーレ」
山口瞳「木槿の花」

購入理由は、面倒なので省略(笑)