トシの読書日記

読書備忘録

2月のまとめ

2017-02-28 17:49:28 | Weblog



今月読んだ本は以下の通り


森敦「月山・鳥海山」
稲葉真弓「月兎耳(つきとじ)の家」
イーヴリン・ウォー著 吉田健一訳「ピンフォールドの試練」
大崎善生「ロックンロール」


以上の4冊でした。読書に割く時間はそれほど減ったとは思わないんですが、1冊1冊を結構時間をかけて読んだので冊数としては少なかったんじゃないかと思われます。読むスピードが遅くなったかな?


しかも今月は収穫も少なかったです。ウォーくらいか。残念至極です。



2月買った本 3冊
  借りた本 2冊

岩となれ、そして転がるな

2017-02-28 16:49:43 | あ行の作家



大崎善生「ロックンロール」読了



本書は平成15年にマガジンハウスより発刊されたものです。ずっと前にブックオフで100円で売っていたので買ったんですが、これも読まなくてもよかったですねぇ。ずっと以前に「九月の四分の一」というのを読んで(内容は全く忘れましたが)、なかなか上手い作家という印象があって今回手に取ってみたのですが、かなり安易というか、陳腐で、そういう意味では読み通すのがちょっと大変でした。


中年の作家が執筆のためパリのアパートに缶詰めになり、そこへ他社の出版社の若い女編集者が訪ねてきて。まぁ二人、恋に落ちるわけです。そこへ元彼の主人公に付いている編集者もやって来て…という内容なんですが、作中で主人公の語る小説論がそのまま大崎善生のそれになると思うんですが、その種明かしの仕方があけすけというか、工夫がないんですね。


ストーリー展開も非常に安易なイメージをもちました。またこの作家、村上春樹の影響をかなり受けているようにも見受けられました。


つまらない小説で時間を取られました。残念でした。



ネットで以下の本を購入


和田誠「もう一度倫敦巴里」ナナロク社
イーユン・リー著 篠森ゆりこ訳「さすらう者たち」河出文庫
イーユン・リー著 篠森ゆりこ訳「黄金の少年・エメラルドの少女」河出文庫


また、姉に以下の本を借りる


ポール・オースター著 柴田元幸訳「ティンブクトゥ」新潮文庫
奥泉光「石の来歴/浪漫的な行軍の記録」講談社文芸文庫




姿なき敵に翻弄される

2017-02-21 16:21:40 | あ行の作家



イーヴリン・ウォー著 吉田健一訳「ピンフォールドの試練」読了



少し前に名古屋市内の「丸善」で買ったまま、うっかり忘れていて、今やっと読了しました。


1年前くらいだったか、姉がイーユン・リーの本を買うつもりが、イーヴリン・ウォーと間違えて「ご遺体」というのを買って、それを借りて読んだらこれがめっぽう面白くて、他に何かないかと探していたら本書が見つかったのでした。


いやぁこれもなかなか面白かったですね。何というか、ウォーの持ち味である諧謔とアイロニーたっぷりの文章は、読んでいてにやりとさせられます。


中年の作家、ピンフォールドは、膝の痛みやら寝不足に悩まされ、思い立って船旅に出ます。そこでは上流階級のお歴々が思い思いに過ごしているんですが、ピンフォールドが自分の船室にいると、どこからか音が聞こえてくる。それは最初は騒々しい音楽だったんですが、やがてそれが自分の悪口となり、果てはピンフォールドを襲撃する計画にまで話が発展していくわけです。


でもこれ、全てピンフォールドの幻聴なんですね。本人はもちろんそうは思ってないので、船長に部屋を代えてくれと申し出て、そこでの会話がなんだかかみ合ってなくて、そのあたりがほんと、面白かった。


まぁそんなに深いテーマを構築するわけでもなく、ひとつの読み物と考えればいいんでしょうが、訳者の吉田健一が解説も書いていて、これがまたいつもの吉田健一らしい、つかみどころのない文章で、これがまた笑えました。


イーヴリン・ウォー、吉田健一、ともに食えないおっさんです。

人生の幕引き

2017-02-14 15:36:58 | あ行の作家



稲葉真弓「月兎耳(つきとじ)の家」読了



本書は河出書房新社より去年発刊されたものです。


まぁこれは読まなくてもよかったですね。中日新聞夕刊の「大波小波」に紹介されていたので手に取ってみたのですが、やられましたね。この作家は以前、「海松(みる)」(川端康成文学賞)を読んで、表現力の豊かさ、描写の鋭さに目をみはった覚えがあるんですが、だんだんこんな小説を書くようになってしまったんですねぇ。なんだか小川洋子のようです。


表題作の「月兎耳の家」は、中島京子あたりが書いたらもっと味わい深いものになるような気がするし、「東京アンモナイト」という中編に至っては、はっきり言って陳腐で、読んでいてちょっと恥ずかしくなりました。


かなりこき下ろしてしまいましたが、出てきた頃、ものすごいものを持って現れた作家が、だんだん駄目になっていくケースというのは、ままあります。朝倉かすみ然り、長嶋有然りです。


残念でした。

死出の旅

2017-02-07 14:56:52 | ま行の作家



森敦「月山・鳥海山」読了



本書は昭和54年に文藝春秋より発刊されたものです。昭和49年、第70回芥川賞受賞作です。これは平成25年に黒田夏子が75才で同賞を受賞するまで39年の間、森敦が最高齢受賞者であったそうです。


FM愛知の「メロディアスライブラリー」で紹介されていたので興味がわいて手に取ってみました。がしかし、自分にはちょっとつらい読書でしたね。むずかしいとか、つまらないとか、そういうことではなく、なんというか、こういう作品とは自分は肌が合わない感じですかね。うまく言い表せませんが。


約10日かけて読んだのですが、残念な結果に終わりました。蛇足ながら、小島信夫の解説がすごかった。ここまで読むかって感じでした。