内田百閒「私の『漱石』と『龍之介』」読了
本書は平成5年にちくま文庫より発刊されたものです。内田百閒の夏目漱石と芥川龍之介にまつわる思い出を綴ったエッセイ集です。
本書を読むと、百閒の漱石を敬愛して止まない姿が鮮明に見えます。百閒が漱石をこれほどリスペクトしていたとは、恥かしながら存じ上げておりませんでした。
「木曜会」と称して、百閒をはじめ漱石の門弟が集まり、談論風発する様子が臨場感あふれる筆致で描かれています。ここから「吾輩は猫である」が生まれたんですね。
生活に困窮した百閒は、金の無心をするために漱石邸を訪れると、湯河原へ療養に行っていて留守だという。ならばと片道の汽車賃だけかき集めて湯河原へ行き、借金の申し込みをするわけですが、漱石は一言、「いいよ」と承諾するエピソード、泣かせますねぇ。いい話です。しかし、これだけ百閒に慕われていた漱石、幸せ者ですね。
本書は漱石に関する部分にかなりの頁を割いており。芥川龍之介に関する記述はかなり少ないんですが、そこに芥川の意外な一面がうかがい知れるエピソードがいくつかあり、なかなか面白かったです。芥川龍之介は、神経衰弱とかノイローゼとかのあげくに自死してしまって、暗いイメージがつきまとうんですが、意外とおっちょこちょいです。そこが笑えました。
もう一冊、内田百閒の未読本があるので、つぎも百閒先生、いってみます。
姉から以下の本を借りる
イザベラ・バード著 高梨健吉訳「日本奥地紀行」平凡社ライブラリー
また、ネットで以下の本を購入
小山田浩子「庭」新潮社