中村南「サイドショー」読了
ずっと前に買ってあったものです。ふと思い立って手に取ってみました。
著者は北海道の出身ということで、本作品の出版社も柏櫓舎という北海道の出版社のようです。「ゆるくない」「昼の月」「サイドショー」という中編が三編収録されています。「ゆるくない」というのは北海道の方言で、簡単でない、大変だというような意味だそうです。
三作品に共通しているのは、登場人物が皆老人ということ。市井の老人が、教養がないばかりに珍妙なやり取りを繰り広げます。
特にどうということもない小説ばかりなんですが、何か心に引っかかるものがあります。それが何であるか考えて見ると、気がつきました。この作品たちは、どこかレイモンド・カーヴァーの世界に通ずるものがあるんですね。世間から虐げられて生きている人達の救いのない人生。しかし彼らはそれをひょうひょうと受け流す技術をいつしか身につけているわけです。
しかしそれは読む側にとっては非常につらいことでもあります。なんとも複雑な思いにさせられます。
この中村南という作家、何の予備知識もなく読んだんですが、ひとくせもふたくせもありそうな人です。