トシの読書日記

読書備忘録

1月のまとめ

2008-01-31 21:16:39 | Weblog
休みをとって愛知県美術館へ「日展」を見に行く。
ついでに「丸善」へ寄って本を物色。

購入本
野坂昭如「死刑長寿」
川上未映子「わたくし率イン歯ー、または世界」
新潮社刊「ヨムヨム」第5号

川上未映子、楽しみです。



1月に読んだ本

桜庭一樹「少女七竃と七人の可愛そうな大人」
嵐山光三郎「チューサン階級の冒険」
絲山秋子「海の仙人」
桜庭一樹「私の男」
町田康「テースト・オブ・苦虫」
長嶋有「いろんな気持ちがほんとうの気持ち」
長嶋有「パラレル」
イーユン・リー「千年の祈り」
小川洋子「アンネ・フランクの記憶」

なんとこの忙しい時期に9冊も読みましたとさ(笑)

今月はまだ今年にはいったばかりだというのに魂を揺さぶられる本に何冊も出会いました。

今月のベスト1はなんとっても「私の男」でしょう。とにかくドキドキしながら読みました。あと、よかったのは「千年の祈り」「海の仙人」かな。

2月もこんな感じで充実した読書ライフが送れたらいいなぁと願ってます。

ふるえる心を受け止める

2008-01-31 20:36:07 | あ行の作家
小川洋子「アンネ・フランクの記憶」読了


ずっと前にこのブログで「アンネ・フランクの記憶」、ファンならずとも読まねばならない1冊であろう・・・とかなんとかえらそうなこと言ってずっと読んでなかったので、いわば義務感にかられて手に取った次第。

小川洋子がアンネ・フランクにまつわるもろもろのことを取材するため、ヨーロッパ各地を訪ねたルポルタージュ。

自分は「アンネの日記」を読んだ記憶がなく、内容もあちこちで聞きかじったくらいの知識しかないので、読んでいくうちにいろんな発見があり、なかなか興味深かった。
作家小川洋子の原点を知る上では必須といってもいいくらいの本なのだが、当の小川洋子の記述があまりにも感傷的にすぎるきらいがあり、ちょっと鼻白んだ箇所もままありました。

しかし、ナチスの犠牲になって早世したユダヤ人の少女の日記いうことだけでは片付けられない重い重いテーマをこの日記は含んでいることを忘れてはならない。

自分が生きるということ、自分が生き延びるためにナチスに密告してしまう人たち。いや、密告せざるを得なかった人たち。その人たちの心情を考えると語るべき言葉もない。後にそのことで考え苦しんだあげく、自殺した人もいたそうです。

「生きる」ことの意味、「生きていくこと」の意味を真正面から見つめた渾身のルポであると思います。

清冽な風

2008-01-31 20:30:52 | あ行の作家
イーユン・リー「千年の祈り」読了


以前「週刊ブックレビュー」で取り上げられていた短編集で、ちょっと前に買ってあったもの。

よかったです。すごくおもしろかった。なんていうか、「キレ」のある文章です。なかでも「市場の約束」という短編が出色でした。

自分の恋人の夢をかなえさせてあげるために同性の友人と偽装結婚させ、アメリカに行かせ、しかしその友人とほんとに結婚してしまった彼と決別し、二度と結婚しないことを自分に「約束」する彼女。そして市場で自分と同じものを持っている男に出会う。
『やっと会えた。何年さがしてもいなかった、約束とは何かを知っている人。気がおかしいと世間は思うかもしれないけれど、わたしたちはもう孤独じゃない。これからはずっとおたがいがいる。これが人生の約束だ。これが醍醐味だ。』

すごいです。ぞくぞくしました。これも、早くも年間ベスト3かなぁ(笑)


結婚とは文化か?

2008-01-27 15:58:53 | な行の作家
長嶋有「パラレル」読了

長嶋有、マイブームなのでちょっと前に買ってあったのを引っ張り出して読んでみたんですが、これはちょっとねぇ・・・

そもそも登場人物が自分とは全くかけ離れた世界の人達ばっかりで、全然感情移入ができない。話もそんなに面白いわけでなく、それで?って突っ込みをいれたくなるくらい。残念でした。
解説のくだらなさにとどめを刺されました(苦笑)


父親の知り合いの葬儀の送り迎えを頼まれ、間の時間つぶしに近くの本屋へ。

購入本
絲山秋子「エスケイプ/アブセント」
山田詠美「無銭優雅」

前者は絲山作品ならはずれはなかろうと思って。
後者はT氏のブログで、本作品が去年の年間ベスト3だったので興味をそそられました。普段、山田詠美なんか読まないんですがねぇ(笑)

透明な気持ち

2008-01-21 15:37:55 | な行の作家
長嶋有「いろんな気持ちがほんとうの気持ち「読了

これもエッセイです。エッセイというのは、おしなべて「なんだかなぁ」というものが多いのだが、これはよかった。この作家の持ってる感覚、好きです。ちょっと皮肉っぽいんだけど、あったかい。でもそんなあったかさをおくびにも出さないような、そんな感じ。
しょーもない、瑣末な話が最初続いてて、それはそれで面白いんだけど、ずっとこんなんかよって思ってたら、違ってたのでほっとしました(笑)

「好きな作家はたくさんいる」の章でのサリンジャー論が出色でした。小説ってこうやって読むと面白いんだなぁと教えられました。ていうか、僕は長嶋さんのように賢くないんでこんなふうに読めないんですがねぇ(とため息をつく)

パンクの自意識のパンク

2008-01-21 15:22:33 | ま行の作家
町田康「テースト・オブ・苦虫」読了

ヨミウリウィークリーという週刊誌(?)に連載していたのをまとめたエッセイ。
やっぱり町田康はエッセイじゃなく小説ですね。つまんなくはないんですがね。ていうか、情けない話ばっかりで笑わせるんだけど、味が薄まってしまってる感じ。
しかし、定価1700円って!「ブ」でも900円で躊躇したのに(笑)買って面白かったけど、ちょっと損した気分です。

久々の「ブ」

2008-01-21 15:12:25 | Weblog
久しぶりに仕事を夕方で切り上げ、ブックオフへ。
友人に小川洋子の「夜明けの縁にさ迷う人々」が面白かったと聞いたので、単行本を本屋で買う前にもしかして「ブ」にないかと思って行ってみた。

で、ありませんでした(笑)
でも、いろいろ面白そうな本を見つけ、収穫はありました。

以下、購入本

町田康「テースト・オブ・苦虫」
町田康「告白」
桜庭一樹「青年のための読書クラブ」
奥田英朗「ララピポ」
山田太一「異人たちとの夏」
富岡多恵子「波うつ土地」
関川夏央「中年シングル生活」

最後の「中年・・・」はダブりであった。ていうか3冊目でした(笑)



雨の匂いのする男

2008-01-21 14:54:11 | さ行の作家
桜庭一樹「私の男」読了

こんなにぞくぞくしながら小説を読んだのは久しぶりのことです。
また、読み終わったあとこんなにすぐ読み返したくなったのもしばらくなかった。

それくらい面白い小説でした。面白いというか、すごいというか、ヤバい感じ?

2008年から1993年に物語は遡る形で進行する。ここがまず面白い。

養女、花と養父、淳悟の濃くてそしてある意味醜いつながりが延々と続く。

登場人物の心理を描くのに説明的すぎるきらいがあったり、会話の部分も稚拙なところがあったり、直木賞選考委員の北方謙三氏の言うように物語の整合性に問題があったりと、いろいろまずいところはあります。けれどもしかし、それを補って余りある迫力!読む者をぐいぐい引き込むのではなく、逆にこっちにどーんとぶつかってくる感じ。読了後、しばし茫然としました。
そしてはっと我に返ってまたすぐさま逆から読み返しました。物語がどんどん過去へ戻っていくので、今度は時代の流れに沿って読んでみようと思ったのでした。
逆から読んでみて普通に読んだのとはまた違う感じ方もできて、よりいっそう深く読むことができました。そしてラスト、第1章のクライマックスへとつながるのです。

おりしも、読んでいる最中に直木賞の発表があり、同作品が第138回直木賞受賞の報を聞き、さもありなんと納得した次第。

まだ今年にはいったばかりだというのに、すごい小説に当たりっぱなしです。
「私の男」は、今年のベスト3に間違いなく入ると思います(多分)。

2007年のまとめ

2008-01-11 03:02:37 | Weblog
他のブログでも皆さんやってらっしゃるので、僕もそれにならって去年1年間を総括してみようと思います。

僕が選んだ年間ベスト10

①小川洋子「薬指の標本」
②絲山秋子「イッツ・オンリー・トーク」
③堀江敏幸「雪沼とその周辺」
④町田康「権現の踊り子」
⑤川上弘美「真鶴」
⑥関川夏央「やむにやまれず」
⑦上原隆「雨にぬれても」
⑧井上荒野「もう切るわ」
⑨辻仁成「白仏」
⑩山田太一「飛ぶ夢をしばらく見ない」
⑪長嶋有「ジャージの二人」
⑫橋本治「生きる歓び」
⑬大道珠貴「銀の皿に金の林檎を」


13冊になってしまいました(笑)

ほかにもランク入りさせたい本はいくつかあるんですが、きりがないのでなんとか13冊に収めました。

今年は正月早々、ベスト3に入るくらいのに立て続けに2冊当たっているので先が思いやられます。あ、ちがった、めっちゃ楽しみです。

孤独の三重奏

2008-01-10 20:22:28 | あ行の作家
絲山秋子「海の仙人」読了

今まで何冊か同作家の小説を読んできたが、ベストといってもいいくらいの作品でした。

敦賀で、一人で古い借家を借りてきままに暮らす主人公に二人の女がからむというストーリーなのだが、みんな孤独なんですね。心が通い合っているかのように見えても実は「孤独」という玉を抱えているんです。

読んでてちょっと悲しくなりました。でも、それだけで終わらないところがこの作家で、主人公の恋人が乳がんで亡くなったり、主人公自身も落雷で失明したりと、話はどんどん悲惨な方へいくんだけど、ラストに近づくにつれて、明るい光が射し込むような、そんな温かい気持ちにさせてくれる小説です。

今年は、1月からおもしろい小説を立て続けに読むことができて、幸せです。