トシの読書日記

読書備忘録

7月のまとめ

2008-07-31 19:12:45 | Weblog
7月に読んだ本は以下の通り

ニコルソン・ベイカー著 岸本佐知子訳「もしもし」
梨木香歩「家守綺譚」
黒井千次「日の砦」
小池昌代「感光生活」
中島義道×香山リカ「生きてるだけでなぜ悪い?」
絲山秋子「ニート」
角田光代「これからはあるくのだ」
中島義道「どうせ死んでしまう・・・・私は哲学病」
筒井康隆「最後の喫煙者」
橋本治「夜」
町田康「壊色(えじき)」


11冊でした。今月は小池昌代「感光生活」がNO.1ですねぇ。橋本治「夜」もよかった。ニコルソン・ベイカー「もしもし」もおもしろかった。黒井千次「日の砦」もなかなかのもんでした。

おもしろい本にたくさん出会えたんですが、どうでもいいような本にもぶつかってしまいました。2冊だけですが。


最近、本をちょいちょい買ってるんですが、自分の頭を整理するためにも今後の読書予定をかきとめておきます。

井上荒野「切羽へ」
井上荒野「誰よりも美しい妻」
小池昌代「屋上への誘惑」
岸本佐知子編「変愛小説集」
堀江敏幸「河岸忘日抄」
堀江敏幸「回送電車」
吉田修一「さよなら渓谷」
佐野洋子「がんばりません」
カミュ「異邦人」
中村文則「悪意の手記」
中島義道「醜い日本の私」
中島義道「孤独について」
中島義道「人生を<半分>降りる」
中島義道「行きにくい・・・私は哲学病」

この順番通りに読むかどうかは定かではありません。

中島義道は、全て再読です。内容をほとんど忘れてしまったので(笑)人が生きていく上で、最も大切で重いテーマを真正面から取り組む姿に好感がもてます。(ってえらそーだっつーの!)

真摯で過激な言葉のライブ

2008-07-31 19:05:00 | ま行の作家
町田康「壊色(えじき)」読了

書棚にこれがあって、「あれ?読んでないじゃん」と手に取った次第。

これはなんでしょう。小説でもない、詩でもない、もちろんエッセイでもない・・・。でもすごいです。言葉が炸裂しまくってます。記事のタイトル通り、過激な言葉のライブですねぇ。途中、日記のようなものもあったり、童謡の替え歌があったりと、種々雑多な言葉の群れです。

町田康、堪能しました。ほんっと、おもしろい!

夜霧に彷徨う

2008-07-31 17:22:46 | は行の作家
橋本治「夜」読了

以前読んだ「蝶のゆくえ」は女性を中心とした短編集だったのに対して、本作は男の側から描いた作品集です。全部で五つの話が収められているんですが、最後の「蝋燭」を除く4作は、結婚した男が女をつくって出て行くという、ほとんど同じパターンをあえて踏襲して作り上げた実験作みたいな印象を受けました。似てるとはいえ、やはり、登場人物が違うように話の感じは微妙に違っててそれなりに楽しめました。

最後の「蝋燭」は、それまでの短編と、全く趣きを異にしていて、短編とはいえ150ページのかなり長い「短編」です。この「蝋燭」がよかった。主人公の勝哉は若いサラリーマンなんですが、ゲイなんですね。で、拓郎という男と知り合うんですが、この拓郎はゲイでもなんでもないんですが、なんとなくそれっぽい感じになったりもするんです。その拓郎の一挙手一投足に振り回される勝哉。喜んだり、悲しんだり、疑心暗鬼になったりと、見ててほんと、いじらしいんですね。自分が「ゲイ」であることは「普通ではない」という意識が完全に自分にしみついているわけなので、なかなか前に進めないし、とにかく不安だらけなんです。これはある意味、すばらしい恋愛小説だと思いました。

橋本治、相変わらず好調です。

ドタバタ・ナンセンスの極致

2008-07-26 01:51:20 | た行の作家
筒井康隆「最後の喫煙者」読了

作者本人の自選による、傑作集。

いやぁおもしろいです。全部で9編がおさめられた、ドタバタ・ナンセンス小説集です。著者の面目躍如といったところです。

「最後の喫煙者」など、初出が昭和62年というから20年ほど前の短編なんですが、近い将来、こんなことが実際起こっても不思議ではないという、リアリティがあります。(ってそんなわけないって 笑)

筒井康隆、今も昔も変わらず元気です。

不条理を直視する勇気

2008-07-26 01:41:45 | な行の作家
中島義道「どうせ死んでしまう・・・私は哲学病」読了

先に「生きてるだけでなぜ悪い?」でちょっとすっきりしなかったので、再読してみた次第。

本書は、あちこちで書いたものをまとめた作りになっているので、論旨が一貫しておらず、散漫になってしまっているきらいがある。やはり、ひとつのテーマに沿って書かれた本を読まないとだめですねぇ。

しかし、「どうせ死んでしまうのに、なぜ今自殺してはいけないのか」という問いに中島氏同様、暗然と黙するしかない自分がいます。

もーかんべんしてー

2008-07-20 15:42:21 | か行の作家
角田光代「これからはあるくのだ」読了

エッセイです。読まなきゃよかったシリーズ第二弾になってしまいました。
角田さんって、こんな俗物だったのかと悲しくなってしまいました。

ほんと、よくありがちなエッセイです。自分がいかに変わった人間か、常識を知らないかという、いわゆる「天然自慢」とでもいいましょうか(笑)「恥ずかしい」とは言うものの、全然恥ずかしそうではなく、むしろ自慢げなんですねぇ。

久々につまんない(どーでもいい)本を2冊立て続けに読んでしまいました。

次は、橋本治の「夜」を読もうと思ってます。橋本氏にすがりつきたい思いです(笑)

世界の片隅で愛なんかいらねーと叫ぶ

2008-07-20 15:33:47 | あ行の作家
絲山秋子「ニート」読了

この作家は、はずれが少なくて安心して読めます。書店で見かけて「あ、これまだ読んでないじゃん」と思い、手にとった次第。

ところがところが、はずれました。全然つまんない。作者の実体験を元に書かれたものとうかがわせる内容なんですが、なんだかねぇ。ニートの男に手を差し伸べる、その心根がねぇ・・・なんで?プライド?自己満足?まるでヒモじゃん!

5編が収められてるんですが、最後の「愛なんかいらねー」ってこれなに?さいてー。
スカトロ云々はいいんです。性に対する欲望はそれこそ人様々ですから。でもね、何年かぶりで会った男と、しかもただの一度も寝てない男に、いきなりケツ出して浣腸させるか?あり得ないっしょ。もう、設定にムリがありすぎです。どこかでこんな話を聞いて、「あ、これネタに使えそう」って思ってさらさらっと書いたんでしょうね。絲山さん!もっと真面目にお願いします!

読まなきゃよかった・・・・

「生きる」ことは気晴らしにすぎない

2008-07-20 15:05:12 | な行の作家
中島義道×香山リカ「生きてるだけでなぜ悪い」読了

哲学者と精神科医の対談です。

中島義道の著作はかなり読んでますが、有名な女性精神科医との対談ということで、ちょっと興味を惹かれて手に取ってみました。

内容は、期待したほどでもなく、平凡なものでした。おまけに、若い人(大学生くらいか)を対象にしたようなものになってて、少なくとも自分にはこの本によって、生きる指針とか、なにかのヒントになるようなものはありませんでした。

どちらの先生も、大学の教授ということで、自分の学校の生徒を若者の代表として、いかに物を知らないかということを、延々あげつらっていくんですが、どうにも聞き苦しいです。そんな話はいろんな人がそれこそ数え切れないくらい言ってますから。聞き飽きました。もっと鋭い分析というか、そんな切り口で「人生いかに生くべきか」を指南していただきたいもんです。

照射される心象風景

2008-07-20 14:52:48 | か行の作家
小池昌代「感光生活」読了

先日、書店で偶然見つけていそいそと買ってきました。小池昌代が好きなら、ネットで著作を調べて、アマゾンなりなんなりで注文すれば事足りるんですが、「本屋で見つける」ということが、本好きにはたまらない楽しさなんですね。

15の話が収められている短編集です。読んでいると、作者本人の実体験をもとにしたのでは、と思わせるような内容ですが、そこはやっぱり昌代さんです。それだけで終わらない独特の世界を作ってます。

中でもよかったのは「島と鳥と女」「げんじつ荘」「蜂蜜びんの重み」「クラスメイト」あたりかな。ほかの掌編も全部いいんですがね。

この作家の世界観は、僕のつたない表現力ではうまく言い表せられません(笑)とにかくいいんです。他の小説、エッセイも読んでみたいです。

日常から溢れ出す軋み

2008-07-11 16:32:51 | か行の作家
黒井千次「日の砦」読了

買った動機は不明です(笑)なんとなく面白そうだったんですね。で、思ったとおり面白かったです。もっと小難しい小説を書く人ってイメージがあったんですが、本書に限っては全然そんなことなくて、数時間で読めてしまいました。

定年で会社を辞した夫、その妻、結婚を控えた長男、OLの長女(妹)という、どこにでもあるような家族が日々暮らす日常の中で、ちょっとした行き違い、小さな事件ともいえないような出来事に、それぞれの家族の気持ちがいいしれぬ不安な気持ちに陥っていく・・・・。
この小説の雰囲気、井上荒野に似てなくもないです。タクシーに乗って、そのときの運転手の応対、マッサージを受けに行って、その先生とのやりとり、普通で考えたら、こう言えばこんな答えが返ってくるだろうという予想を裏切って発せられる相手からの言葉に思わずたじろいでしまう・・・。内心、驚き、慌てて途方に暮れる感じは、井上荒野の小説を読んでいてもよく出てくるシーンです。

解説が、あの「タタド」の小池昌代だったのもちょっと得した気分です(笑)さすが、いい解説書いてます。

かなりお年の作家のようですが、ほかにはどんなのを書いてるのか、ちょっと興味が湧いてきました。