トシの読書日記

読書備忘録

2012年をふりかえって

2012-12-28 16:51:28 | Weblog
今年も残すところあと3日なりました。恒例の今年のまとめをしてみようと思います。
今年読んだ本は59冊。買った本は27冊、姉から借りた本は50冊でした。2月からスタートした販促(グルーポンみたいなもの)で6月くらいまでずっと忙しく、去年に比べて読了した本の数はずっと減りました。まぁでもかなり中味の濃い読書ができたと思っております。


今年のベスト30を並べてみたいと思います。



〈1〉 堀江敏幸「なずな」
〈2〉 大江健三郎「取り替え子(チェンジリング)」
〈3〉 大江健三郎「われらの時代」
〈4〉 マーセル・セロー著 村上春樹訳「極北」
〈5〉 大江健三郎「万延元年のフットボール」
〈6〉 大江健三郎「日常生活の冒険」
〈7〉 大江健三郎「同時代ゲーム」
〈8〉 多和田葉子「雲をつかむ話」
〈9〉 小池昌代「自虐蒲団」
〈10〉堀江敏幸「燃焼のための習作」
〈11〉辻原登「抱擁」
〈12〉大江健三郎「憂い顔の童子」
〈13〉大江健三郎「さようなら、私の本よ!」
〈14〉中勘助「銀の匙」
〈15〉堀江敏幸「本の音」
〈16〉松浦寿輝「半島」
〈17〉大江健三郎「洪水はわが魂に及び」(上)(下)
〈18〉阿部公彦「小説的思考のススメ」
〈19〉ミランダ・ジュライ著 岸本佐知子訳「いちばんここに似合う人」
〈20〉大江健三郎「遅れてきた青年」
〈21〉中島義道「人生に生きる価値はない」
〈22〉田中慎弥「共喰い」
〈23〉大江健三郎「個人的な体験」
〈24〉リチャード・ブローディガン著 青木日出夫訳「愛のゆくえ」
〈25〉葛西善蔵「哀しき父/椎の若葉」
〈26〉大江健三郎「新しい人よ眼ざめよ」
〈27〉ドン・デリーロ著 上岡伸雄訳「ボディ・アーティスト」
〈28〉大江健三郎「芽むしり仔撃ち」
〈29〉大江健三郎「死者の奢り/飼育」
〈30〉G・ガルシア・マルケス著 野谷文昭訳「予告された殺人の記録」



とまぁこんな具合です。例によって11位くらいからは順不同です。あと、大竹昭子「図鑑少年」とか田中小実昌「ポロポロ」とか入れたかったんですが、きりのいいところで30冊にとどめておきました。


30冊中、13冊が大江健三郎です。大江フェアをやっているので、これもむべなるかなといったところでしょうか。でもやっぱり自分は堀江敏幸、好きですね。


来年も大江祭り、継続していきます。あと10冊ほど残しております。姉から借りた本も消化しないといけないし、自分の読みたい本も買って読みたいし、これが仕事と思うとなんだかなぁって感じなんですが、あくまで好きでやってることなんで、めっちゃ楽しみであります。


来年も充実した読書ができますように。

12月のまとめ

2012-12-28 15:53:36 | Weblog
今読んでいる大江健三郎の長編を昨日までに読み終えて、そのレビューを書いてからまとめにしようと思ったんですが、ちょっと間に合いませんでした。


今月読んだ本は以下の通り



大川渉「酒場めざして――町歩きで一杯」
丸谷才一「持ち重りのする薔薇の花」
池波正太郎「そうざい料理帖巻一」
葛西善蔵「哀しき父/椎の若葉」


以上4冊でありました。今月は大江健三郎が1冊もありませんでした。4冊の本も特別強く感銘を受けたものもなかったし、ちょっと寂しい月になってしまいました。また来月から大江健三郎フェア、続けていくのを楽しみにします。

人生的精進の人

2012-12-19 16:09:27 | か行の作家
葛西善蔵「哀しき父/椎の若葉」読了



ちょっと前にFM愛知の「メロディアス・ライブラリー」でこの短編集に収められている「子をつれて」を紹介していて、ずっと探していたのでした。ネットで調べればすぐ見つかるとは思うんですが、やっぱり書店で見つけたいんですね、自分としては。


大正末期から昭和にかけて純文学の象徴といわれた私小説家であります。しかし、初めてこの作家を読んだんですが、なんというか、読んでいて陰々滅々としてくるというか、相当暗いです。


東北の片田舎に生まれ、若くして上京するも、なかなか芽が出ず、生活できなくなると郷里へ帰り、また気合を入れなおして上京するということを繰り返し、肺結核のため42才の生涯を閉じた激流の人生を生きた作家であります。


巻末の解説を読むと私小説家とはいえ、多分にフィクションも混じえて作品の深みを出そうとしていたとのこと。そこが車谷長吉などの私小説家とはまた一味も二味も違う味わいを見せているのでしょう。


底なしに暗い小説ではありましたが、でも心に響く短編集でありました。

四季折々の滋味

2012-12-11 17:16:21 | あ行の作家
池波正太郎「そうざい料理帖巻一」読了


以前にも同じような本を読んだ覚えがあるんですが、池波正太郎の小説、エッセイに出てくる料理、その文章を掲載し、イラストレーターの矢吹申彦が実際に作ってイラストも書き、コメントもつけるという企画の本です。


しかしいいですねぇ。池波正太郎とういう人はやはり食通です。決して高級な食材を使うわけではないんですが、季節季節に合わせてうまいものを食べてます。鷄細切れ肉の水炊きとか、ポテト・フライ(フライドポテトではなく)、秋鯖のレモン〆等々…


今度、是非作ってみたいです。

カルテットの不協和音

2012-12-11 16:49:41 | ま行の作家
丸谷才一「持ち重りする薔薇の花」読了



この10月に87才で亡くなった丸谷才一を追悼する気持ちを込めて読んでみました。生前の最後の長編小説ということで期待して読んだのですが、いささか拍子抜けしてしまいました。


さる財界の重鎮がふとしたことで知りあった弦楽四重奏のメンバーの結成のいきさつから今に至るまでのよもやま話とでもいいましょうか、まぁゴシップも含めての行状記であります。


文章はいいんです。やはり丸谷才一です。抜群にうまい。もうすらすら読めます。しかし、どうなんでしょう。この作品はカルテットのリーダー格の厨川という男を中心に、彼らの行状を財界の重鎮が編集者に語っていくという構成になっているんですが、いかにも中身が軽いと言わざるを得ません。以前読んだ「横しぐれ」や「笹まくら」の緊迫した空気とは比ぶべくもありません。


やはり年老いてある程度の名声を得るようになると、どうしても奢りというものが頭をもたげるんでしょうかねぇ。ちょっと淋しい気持ちになりました。


ところで岡崎武志氏のブログで、この丸谷才一が亡くなったことをきっかけに「エホバの顔を避けて」という小説を読んだことが書いてあったんですが、絶賛してましたねぇ。それで自分も本屋へ走ったんですが、これが見つからない。まぁ亡くなってまだ日も浅いので、ほとぼりがさめたらまた探してみます。あと、丸谷才一の作品で、読みたいものをここに覚え書きとして記しておきます。


「エホバの顔を避けて」
「年の残り」
「にぎやかな街で」
「たった一人の反乱」



先日、姉と会って、「極北」の素晴らしさを語りあったのち、以下の本を貸してくれました。


辻原登「許されざる者」(上)(下)
伊藤氏貴「奇跡の教室」(中勘助の「銀の匙」だけをテキストに灘中学で教え続けた橋本武という教師のノンフィクション)
文藝春秋12月号(丸谷才一の遺稿となった「茶色い戦争ありました」収録)

路地を徘徊する楽しみ

2012-12-03 16:44:53 | あ行の作家
大川渉「酒場めざして――町歩きで一杯」読了


たまにはちょっと肩の力を抜いてこんな軽いものもいいかと手に取ってみました。

まぁこれはレビューというほどのものでもないので、本のキャッチコピーをそのまま引用しときます。

<名所・旧跡を訪ねるのもいいが、下町の路地から路地へと散策するのも面白い。そして、ふと立ち寄った居酒屋で飲む最初の一杯の旨さ!酒場めぐりの達人が、東京の繁華街から場末まで、縦横無尽に歩きまわる。人と出会い、風景になごみ、たどり着くのは、なじみのカウンター。町歩きの最後は酒で締める。これぞ大人の楽しみ!>


しかし、東京というのはいい居酒屋が多いですねぇ。うらやましい限りです。でも、名古屋にもこの本に紹介されたようないい店があるかも知れません。僕も大川氏にならって名古屋の町を散策してみるとしますかね。


久しぶりに劇場で映画を見、(人生の特等席)近くのジュンク堂に立ち寄り、以下の本を購入。



上林暁「聖ヨハネ病院にて/大懺悔」
武田泰淳「ニセ札つかいの手記」
武田百合子「犬が星見た――ロシア旅行」
スティーブン・ミルハウザー著 柴田元幸訳「マーティン・ドレスラーの夢」