トシの読書日記

読書備忘録

5月のまとめ

2008-05-31 14:05:32 | Weblog
5月に読んだ本は、以下の通り


野瀬泰申「日本全国マズイ店列伝 ちゃぶニチュード!」
朝倉かすみ「田村はまだか」
高橋源一郎「君が代は千代に八千代に」
ジャネット・ウィンターソン著 岸本佐知子訳「灯台守の話」
スティーブン・ミルハウザー著 柴田元幸訳「ナイフ投げ師」
朱川湊人「花まんま」
ジュディ・バドニッツ著 岸本佐知子訳「空中スキップ」
角田光代「庭の桜、隣の犬」
小池昌代「タタド」
宮沢章夫「サーチエンジン・システムクラッシュ」
大道珠貴「ショッキング・ピンク」

11冊ですねぇ。

やっぱり「タタド」が群を抜いて良かったです。あとは似たようなものかなぁ。
今月は、海外文学をめずらしく読んでみました。たまにはいいですね。でも、この後、ずっと読まないかもです(笑)

肉体の悪魔

2008-05-31 13:50:52 | た行の作家
大道珠貴「ショッキング・ピンク」読了


「悪女の深情け」という思いで、つい買ってしまう大道珠貴。

しかしこれはすごい。あまりにもあけすけ。赤裸々。エロ満載です(苦笑)おおっぴらにセックスのこと(女性からの目線で)書いてますが、どうなんでしょうねぇ。著者がこれを書きたかった訳を知りたいです。

でも、表題作の「ショッキング・ピンク」は、ちょっと読ませました。ちょっとだけですがね(笑)

曖昧さに耐える力

2008-05-31 13:45:02 | ま行の作家
宮沢章夫「サーチエンジン・システムクラッシュ」読了

この人は演劇の方で、自分で劇団も持ってる人なんですが、エッセイがおもしろくて、それなら小説も面白かろうと手に取った次第。

しかしこれは評価が分かれるだろうなぁ。僕は決してきらいではありません、こういうの。現実と虚構がないまぜになって、いわく言い難い世界を作っている。あえて物語の展開を遅々として進めず、読み手をいらいらさせる技術は大したものです。

まぁ、きらいではないんですが、この1冊でごちそう様という感じです(笑)

爛熟と枯寂

2008-05-31 13:37:46 | か行の作家
小池昌代「タタド」読了

「タタド」「波を待って」「45文字」の3編が収められた小説集。
「タタド」で川端康成文学賞を受賞してます。

以前読んだ蜂飼耳の「紅水晶」を思い出した。著者のプロフィールを見ると、詩人とのこと。やっぱりと思った。

言葉の選び方のセンスが抜群にうまい。独特の雰囲気を醸し出してます。細かい部分ですが、片仮名をうまくつかってますねぇ。そのへんは川上弘美っぽいといえなくもないですが。

表題作の「タタド」も良かったが、個人的には「45文字」に惹かれた。堀江敏幸に見られるような淡い人間模様が見事に描かれていて、静かに感動してしまいました。


やはり、富岡多恵子といい、詩人の書く小説はひと味もふた味も違います。

小説を構築する力

2008-05-28 02:02:42 | か行の作家
角田光代「庭の桜、隣の犬」読了

何だろう。この小説。
読み終わってなんにも残るものがなく、角田光代がそんなうすっぺらな小説を書くわけがないと思い、自分の読み方が浅かったのだと恥じ入り、2度読んでみた。
で、やっぱりなにもなかったです(苦笑)

だいたい、こんな夫婦、現実にいるのかなぁ。お互いの情愛ってものが、かけらも感じられない。結婚に至るエピソードが記されているのだけれども、お互いの恋愛感情ってものがすっぽり抜け落ちてる感じ。なんでこの二人は結婚したんでしょうか。その必然性が感じられないから主人公である房子の心情にリアリティを感じない。
言いたいことはわかるんです。わかるんですが、設定自体にムリがあるので読み手の胸に深く突き刺さらないんです。

ついでに言うと、解説の栗田有起さん、もっともらしい言葉を並べてますが、全然中身のない解説はやめてもらいたいもんです。
文庫の解説は、結構とんちんかんなのが多くて苦笑させられますが、こういったのが一番タチが悪いですねぇ。


角田光代、さらに読んでみます。


妄想力に解放される

2008-05-21 19:36:33 | さ行の作家
ジュディ・バドニッツ著 岸本佐知子訳 「空中スキップ」読了

翻訳物が続きます。この間読んだ「ナイフ投げ師」とちょっとテイストが似ていました。全部で23の短編が詰まってます。

ありえない状況、事柄が、何故か普通に行われていくという、読んでて不思議な感覚に捉われました。訳者の岸本氏の命名によると、こういうのを「アンリアリズム」というようです。

でも、翻訳物ってやっぱり読んでて違和感を感じずにはいられないんですねぇ。僕はやっぱり日本人が日本語で書いた小説が好きです。しっくりきます。

まぁ、そうは言っても、中には秀逸な短編もあって、「犬の日」「借り」「道案内」「チア魂」「アートのレッスン」「イェルヴィル」・・・・と挙げていたら、ほとんどがおもしろいのばっかりでした(笑)
これは、文章は違和感があっても、着想が飛び抜けておもしろいってことなんですね。岸本佐知子の訳もすごくよかったです。

なんだか、褒めてるんだか貶してるんだかわかんない記事になってしまいました(苦笑)

本屋で思うこと

2008-05-18 18:59:54 | Weblog
仕事を夕方で切り上げ、久しぶりにブックオフへ行き、以下の本を購入。


山口瞳「結婚しません」
角田光代「これからはあるくのだ」
井上光晴「明日」
宮沢章夫「サーチエンジン・システムクラッシュ」
山田太一「岸辺のアルバム」
中村文則「悪意の手記」
川上未映子「乳と卵」
小川洋子「夜明けの縁をさ迷う人々」
中川いさみ「クマのプー太郎③」
中川いさみ「クマのプー太郎④」


最後の2冊はマンガです(って当たり前っすね 笑)


本屋へ行って本を買うとき、バリバリの買いモードのときと、厳選モードのときがあるんですが、どういうときにそうなるのか、その相関関係がいまだにわかりません。なんででしょうね・・・

ちなみに今日は「買い」でした(笑)

濃密に漂う「昭和の香り」

2008-05-16 19:32:15 | さ行の作家
朱川湊人「花まんま」読了

第133回直木賞受賞作

どんな内容の小説なのか、まったく予備知識なく読んだんですが、なんだかいまひとつでしたねぇ。昭和30~40年代の大阪の下町を舞台に、当時小学生だった主人公が体験する不思議な出来事の数々。

解説の重松清さんが「単なるノスタルジーで終わってない」と言ってますが、たしかにそれだけの話ではないんですが、なんていうか・・・とりあえず文章が未熟です。それがいまひとつのめり込めない最大の要因ですね。

著者の略歴を見ると、第41回オール讀物推理小説新人賞、第10回ホラー小説大賞短編賞をそれぞれ受賞してるんですね。それで、この作家の持っている空気がわかる気がしました。僕はその空気、あんまり得意ではありません(苦笑)

飛翔する想像力

2008-05-16 19:17:59 | さ行の作家
スティーヴン・ミルハウザー著 柴田元幸訳「ナイフ投げ師」読了

これも、いつか「週刊ブック」で推してたやつです。

12編が収められている短編集。ミルハウザーを読むのは初めてなんですが、なんともいえない奇妙な小説でした。ありえないようなことにもっともらしい理屈をつけて、途方もない方向へ物語りがどんどん展開していきます。これはハマる人はハマるんだろうなぁ。僕はちょっとツボではなかったですが。

大概にして、海外文学というのはあんまり得意じゃないんですねぇ。「訳」という問題が常につきまとうわけで、たとえばこの柴田さんって方は、かなり訳者としては有名な方らしいんですが、修飾語とか、非常に読みづらいところがあって、何度か挫折しそうになったくらいです(苦笑)


「訳者あとがき」より・・・・ミルハウザーを好きになることは、吸血鬼に噛まれることに似ていて、いったんその魔法に感染してしまったら、健康を取り戻すことは不可能に近い。


残念ながら感染しませんでした(笑)

<物語る>ことで人は救われる

2008-05-12 19:10:40 | さ行の作家
ジャネット・ウィンターソン著 岸本佐知子訳「灯台守の話」読了

以前、「週刊ブック・レビュー」で紹介されていて、気になってた本です。岸本佐知子訳というのにも惹かれて手に取りました。

ビューという灯台守とシルバーというみなし子の女の子の話です。

なんていうか、不思議な雰囲気が全編に漂っていて、読んでる間、自分が自分じゃないような、なんともいえない気持ちでした。
話が、過去からいきなり現在になったり、また知らない間に過去へ飛んだりと、けっこう真剣に読まないとついていけなくて、そこがちょっと疲れました(苦笑)

しかし、小説全体を貫くテーマである「愛」、ずっしりと心に響きました。



仕事を夕方で終えて床屋へ行き、帰りに本屋へ寄って以下の本を購入。


小池昌代「タタド」
大道珠貴「ショッキングピンク」
角田光代「庭の桜、隣の犬」
角田光代「人生ベストテン」

奇しくも女性作家ばかりでした(笑)