辻原登「村の名前」読了
さて、辻原登祭り、第2弾のスタートです。表題作は1990年の芥川賞受賞作です。この本にはもう一編「犬かけて」という作品が収められていて、これが辻原登のデビュー作とのことです。
どちらも大変面白く読ませてもらいました。「村の名前」は、畳に使ういぐさの買い付けに中国に乗り込んだ主人公の橘とその取引先の商社勤務の加藤。現地の人の案内で、そのいぐさの工場に向かうのですが、そこが桃源県桃源村という、いわゆる桃源郷伝説の名前そのままなのです。しかし、その村へ着くと、いろんな奇怪なことが次々に起こります。主人公の橘の思い込みの強さもあいまって、物語は思わぬ方へどんどん流れていきます。
このストーリーのドライブ感が面白いですね。そして、歓迎パーティーの給仕の女性に一目ぼれし、その女性が自分はこの村に監禁されていて香港に逃げたいと言い、そのためには3千元必要だと言う。橘は、翌日の夜、同じ場所でその金を渡す約束をするのだが…。という、自分の仕事はどうなってんだ?という問いも出てきますが、まぁとにかく、ハラハラドキドキの小説でありました。
もう一編の「犬かけて」。これも面白かった。ストーリーというのがあるようでないようで、かなりきちんと読まないとなかなか理解しづらいです。でもその分、じっくり味わうこともできるわけで。
ミシンのセールスマンの「五円玉」というニックネームを持つ男が主人公なんですが、自分の妻、春子との関係に不安をかかえている。春子は以前、埼玉県の狭山で売春組織に入っていたという話をひょんなことから耳にし、ミシンのセールスをしがてら、その話の真偽を確かめるため、狭山あたりを調べるわけです。結局、彼はその話は根も葉もないデマであると、自分の中で解決するわけですが、そこに至るまでの心の動き、その描写がすごいですね。とてもデビュー作とは思えない老練の技ともいうべきものがありました。
この本も解説がよかった。千石英世という、全く知らない人なんですが、辻原登の文庫本の解説陣は、みんな、なかなかいいですねぇ。辻原氏が指名しているのかも知れません。
あと、2冊ほどレビューを書いて、今月のまとめもしないといけないんですが、ちょっと出かけなくてはならないので、今日はこのへんで。乞うご期待!
さて、辻原登祭り、第2弾のスタートです。表題作は1990年の芥川賞受賞作です。この本にはもう一編「犬かけて」という作品が収められていて、これが辻原登のデビュー作とのことです。
どちらも大変面白く読ませてもらいました。「村の名前」は、畳に使ういぐさの買い付けに中国に乗り込んだ主人公の橘とその取引先の商社勤務の加藤。現地の人の案内で、そのいぐさの工場に向かうのですが、そこが桃源県桃源村という、いわゆる桃源郷伝説の名前そのままなのです。しかし、その村へ着くと、いろんな奇怪なことが次々に起こります。主人公の橘の思い込みの強さもあいまって、物語は思わぬ方へどんどん流れていきます。
このストーリーのドライブ感が面白いですね。そして、歓迎パーティーの給仕の女性に一目ぼれし、その女性が自分はこの村に監禁されていて香港に逃げたいと言い、そのためには3千元必要だと言う。橘は、翌日の夜、同じ場所でその金を渡す約束をするのだが…。という、自分の仕事はどうなってんだ?という問いも出てきますが、まぁとにかく、ハラハラドキドキの小説でありました。
もう一編の「犬かけて」。これも面白かった。ストーリーというのがあるようでないようで、かなりきちんと読まないとなかなか理解しづらいです。でもその分、じっくり味わうこともできるわけで。
ミシンのセールスマンの「五円玉」というニックネームを持つ男が主人公なんですが、自分の妻、春子との関係に不安をかかえている。春子は以前、埼玉県の狭山で売春組織に入っていたという話をひょんなことから耳にし、ミシンのセールスをしがてら、その話の真偽を確かめるため、狭山あたりを調べるわけです。結局、彼はその話は根も葉もないデマであると、自分の中で解決するわけですが、そこに至るまでの心の動き、その描写がすごいですね。とてもデビュー作とは思えない老練の技ともいうべきものがありました。
この本も解説がよかった。千石英世という、全く知らない人なんですが、辻原登の文庫本の解説陣は、みんな、なかなかいいですねぇ。辻原氏が指名しているのかも知れません。
あと、2冊ほどレビューを書いて、今月のまとめもしないといけないんですが、ちょっと出かけなくてはならないので、今日はこのへんで。乞うご期待!