トシの読書日記

読書備忘録

2月のまとめ

2008-02-29 19:35:38 | Weblog
2月に読んだ本は以下のとおり

川上未映子「わたくし率イン歯ー、または世界」
絲山秋子「ダーティ・ワーク」
奥田英朗「ララピポ」
安部公房「他人の顔」
山田詠美「無銭優雅」
町田康「告白」
大森望・豊崎由美「文学賞メッタ斬り!」
町田康「実録・外道の条件」
大道珠貴「素敵」
蜂飼耳「紅水晶」
橋本治「蝶のゆくえ」

11冊ですねぇ。けっこう読みました。

2月のナンバーワンはなんといっても「告白」です。僅差で「紅水晶」ですかね。
今月もなかなか充実した読書ライフを過ごせました。
3月はまず、筒井康隆の新刊を読もうと思ってます。

母とは、家とは

2008-02-29 19:19:56 | は行の作家
橋本治「蝶のゆくえ」読了

第18回柴田錬三郎賞受賞作。

様々な年齢の普通の女性たちを主人公にした短編集。

相変わらずの橋本治です。いい感じです。いい感じなんですが、なんていうか、扱うテーマは興味深いし、それなりに面白いんですが、この文体がどうもね。なにが読みづらいといって「」(カッコ)が多いんですね、この人。

たとえばこんな具合。・・・・若いOLが同僚のOLとひとしきり会話をしたあと、「油断がならない」と思った。「敵に回さなくてよかった」と思った。・・・・

これ、なんで「かぎカッコ」つける必要があるんですかね。わかりません・・・

でも、いろいろな年齢の女性がいろいろな立場のなかで自分の考えに疑問をはさみつつ、健気に生きていく姿は可愛らしくもあり、滑稽でもありながら「美しいなぁ」と思った次第です。

創造と破壊の波

2008-02-27 00:37:27 | は行の作家
蜂飼耳「紅水晶」読了

本の帯には「現代最高の若手詩人・初の小説集」とある。

五つの短編(中篇?)から成る小説集。まず読み始めて思ったのは、川上弘美の「真鶴」に似たテイストだなと。しかし、読み進めていくうちに、それとはまた違った味わいもあってなかなかおもしろかったです。

物語で感動させるのではなく、「ことば」で読み手を酔わせるんですね、この作家は。さすが、詩人です。一番初めの「崖のにおい」これでまずガツンとやられました。そして「くらげの庭」これもよかった。で、極めつけは表題作の「紅水晶」。
あ、その前に収められてた「こぼれ落ちる猿の声」これもよかったなぁ

前後の話となんの脈絡もない言葉が、たまに挟まれる。曰く「虚しさが昂じて、ある種の昂揚感に転じる」とか。

読んでいて、何度もどきりとさせられました。こういう小説、好きです。

こういう本に出会う時が本が好きでよかったと思う瞬間です。

それでも現実は素知らぬふりで

2008-02-24 01:07:53 | た行の作家
大道珠貴「素敵」読了

大道珠貴、最近つまんないなぁと思いつつ、書店で見かけるとつい買ってしまうダメな僕です(笑)
なんていうか、情が移っちゃてるんでしょうかねぇ。

で、この小説集。五つの短編が収められてるんですが、やっぱり昔のような衝撃はありません。でも、従順に従ってるような奥さんが実は夫に対してすごいことを考えていたり、仲のいい姉妹に見えててほんとはお互いものすごい憎悪の塊だったり、ちょっとぎくっとするような内容になってます。このへんの感覚が本作家らしくていいですねぇ。

新刊が出たらまた買ってしまうと思います(苦笑)

ぬるい悪夢

2008-02-22 02:18:28 | ま行の作家
町田康「実録・外道の条件」読了

おそらく実話に基いたフィクションと思われる話が四つ収められている。
いつもの町田康テイストはあまりなく、そこはちょっと物足りなかったが、しかしこれ、その業界の人が読んだらあまりに生々しくて戦慄するのでは(笑)
まぁ、私はそういう世界とはまったく関係のない人間なのでおもしろおかしく読ませていただきました。

賞の行方

2008-02-22 02:03:56 | あ行の作家
「ブック・マーク・ナゴヤ」というイベントを名古屋市内のいろんな書店でやっているという情報を得、今日、どんなものかと行ってみました。
東京の不忍ブックストリートというところで毎年「一箱古本市」なるものが開催されていて、それが今、名古屋市内のパルコの「リブロ」でやっているということで覗いてみたんですが、店の一角にしつらえたコーナーに東京のいろいろな古書店からの出品が並べられているのはいいんですが、あまりにも数が少なすぎ。ちょっとがっかりでした。
それでも、山口瞳の未読本が2冊見つかったので購入しました。
そのあと、普通の書籍の売り場で以下の本を買う。

蜂飼耳「紅水晶」
井上荒野「ベーコン」
筒井康隆「ダンシング・ヴァニティ」
大道珠貴「素敵」
中上健次「十九歳の地図」

「紅水晶」、「ベーコン」、やっと手に入れられました。


大森望・豊崎由美「文学賞メッタ斬り!」読了

文学賞の裏側にまつわるあれこれを二人の対談(?)で綴ったもの。自分はノンフィクションとかミステリー、エンタメ系はほとんど読まないんで半分くらいしか読むとこはなかったです。

心に蹲る真実

2008-02-20 18:16:17 | ま行の作家
所要のついでに本屋に寄る。
以前、週刊ブックレビューで出演した蜂飼耳の「紅水晶」、直木賞候補になった井上荒野の「ベーコン」を探すがいずれも見当たらず。田舎の本屋はしょぼいっす。

購入本

大森望・豊崎由美「文学賞メッタ斬り!」
橋本治「蝶のゆくえ」
笙野頼子「三冠小説集」(タイムスリップコンビナート・二百回忌・なにもしてない)
堀江敏幸「おぱらばん」



町田康「告白」読了

676Pに及ぶ長編。第41回谷崎潤一郎賞受賞作。

相変わらずの町田ワールドで、終盤までは笑いっぱなしでした。しかし、最後の松永家への襲撃シーンは凄絶で、圧倒されました。

人一倍悩み、論理的な思考を試みようとする城戸松太郎。しかし、それ故に周りから疎んじられ、馬鹿にされてしまうのだが、自分は松太郎の中に人間のあるべき生き方があるように思います。感動しました。

情けない男を書かせたら、当代随一の本作家であるが、この小説はそれだけでは終わらない、深く、重いテーマを掲げています。

世にも真摯な三文小説

2008-02-19 00:31:22 | や行の作家
山田詠美「無銭優雅」読了

どうなんですかねぇこれ。42歳の男と女。いわゆるオトコイってやつなんでしょうけども、僕はだめです、こういうの。
だって全編のろけまくりだし。まぁ中年を過ぎてからの生き方の指南書のつもりなのかもしれませんが、ついていけません。

最後に山場を作って、そこには不覚にも涙しましたが(笑)まぁ先の奥田某と同じで山田さんの小説は二度と読まないと思います。残念!

行為の起爆力

2008-02-17 02:45:33 | あ行の作家
安部公房「他人の顔」読了

現代文学ばっかりにうつつを抜かしていてはいけないと、たまにはこんなのもねと思って読んでみたんですが、やっぱり安部公房はすごいです。同作家に限らず、たとえば大江健三郎、富岡多恵子、中上健次なんかもそうなんですが、文章の重みが全然違うんですね。やっぱりたまにはこういうのも読んでリハビリしないと、と思った次第です。

化学者である主人公が液体酸素の爆発で、顔にケロイド状の大火傷を負い、自己の開放を目指して仮面を作る。
物語は、男がその妻に宛てた手記という形で延々続いていくわけですが、後半からは思いもよらない展開で非常に面白く読めました。

仮面をかぶって赤の他人になりすました男が妻をナンパしてしまうんですね。そして、こともあろうに妻は男とできてしまうんです。男は妻への復讐という意味もここに込めていたんですが、あとで妻は、誘ってきた男は自分の夫であると先刻承知だったという、どんでん返し。すごい展開です。

次は久しぶりに大江健三郎でも読もうかな。

a lot of people

2008-02-17 02:24:50 | あ行の作家
奥田英朗「ララピポ」読了

これも「ダーティ・ワーク」同様、連作短編集でした。なんかこういうの、はやりなんすかね。
社会の底辺で生きる、どうしようもない男と女達の滑稽で惨めなお話です。
まぁ読みやすくて面白いには面白いんだけど、底が浅いという感は否めないですねぇ。

奥田英朗がこういう物書きだってことがわかったのが収穫でした。もう同作家の本は手に取ることはないと思います(笑)