中村文則「世界の果て」読了
文芸誌「文學界」に掲載された五編の作品をまとめた短編集です。2009年に単行本、2013年に文庫が発刊されました。
中村文則の小説なので、こんなこと言うのは当たり前なんですが、もうどん底に暗いですね。今まで本作家の作品はいくつも読んできてるんですが、どれにも通じる「暗さ」があります。
一番最初にある「月の下の子供」が印象に残りました。これは芥川賞を受賞した「土の中の子供」とタイトルが呼応してるようですが、内容は特には関係がないように思われました。
不動産会社に勤める主人公が、ある物件の家で幽霊を見る。その家を自分が気に入ってしまい、そこを借りようとするお客様には、なんだかんだと理由をつけて他の物件を勧め、自分は仕事が終わるとその家へ行って幽霊と話をする。そして彼はその幽霊に誘導されるように入水自殺をしようとするが、死にきれず、「色々考えてみるし。」と幽霊につぶやいてこの小説は終わっています。
このわけのわからなさ感がなんともいいですね。ま、とにかく中村文則の世界です。楽しませてもらいました。