トシの読書日記

読書備忘録

実用的タイムトラベル計画

2008-09-29 17:27:57 | な行の作家
ニック・ハーバード著「タイムマシンの作り方」読了

すみません。僕にはムリでした(笑)めちゃ難しいです。相対性理論は、ある程度理解して臨んだんですが、もうひとつ、量子論というのもマスターしてないとこの本は読めません。

タイムマシンという、誰もが興味を示すものに軽いノリで入っていこうとしたんですが、ものの見事に突っぱねられました(苦笑)

でも、考えてみたら、現在の地球に未来からタイムマシンに乗って誰かがやってきたという話は聞いたことがないんですが、これはこれからの未来、ずっと先までタイムマシンは完成しないということではないでしょうか。ってことは、これだけ科学的に、物理学的にタイムマシンの可能性を論じていても、それを完成させることは不可能ってことだと思うんですけどね。

関係諸氏の意見を待ちたいと思います。(ってコメントする人いないし 笑)

個人的な心境の変化

2008-09-25 17:37:58 | ま行の作家
村上春樹「中国行きのスロウ・ボート」読了

村上春樹、初めての短編集。

今まで村上春樹の書く小説は、全て無条件で好きだったんですが、何の心境の変化か、この短編集を読むうち、その方針は少し修正したほうが良いのでは、と思い始めました。

たしかに村上春樹の書く世界は素晴らしく、読む者を全く別の世界へ連れて行ってくれるんですが、小説に深みがないというか、思いつきで書いて「これ、ちょっといいでしょ」みたいにほくそ笑んでる感じがするんです(笑)
この小説集でいうと「貧乏なおばさんの話」とか「ニューヨーク炭鉱の悲劇」とか「土の中の彼女の小さな犬」とか。小手先で書いているというイメージがどうしても拭えません。まぁ、それでもおもしろいんですがね(笑)

村上春樹、やっぱり長編かなぁ。

物理のお勉強Ⅱ

2008-09-25 17:29:36 | さ行の作家
佐藤勝彦 監修「タイムマシンがみるみるわかる本」読了

うーん・・・わかったようなわからないような(笑)

タイムマシンは、理論的には作ることは可能だそうです。でも、技術的には当分ムリでしょうね。でも、「現在」から「未来」へ行く、又は「現在」から「過去」へ行くことはできても、そこから「現在」に帰ってきることはできないようです。要するに行きっぱなしってことです。これでは意味がないように思うんですがねぇ。

相対性理論が日常に使われている例としてカーナビがあります。カーナビはGPS衛星からの電波を受信して自分の現在地を割り出すシステムですが、そのGPSは高度2万キロの上空を猛スピードで周回しているため、衛星内では地上に比べて時間がゆっくり進むんです。それを補正するために毎秒100億分の4.45秒遅く進む設計にしてあるんだそうです。それをしないと、たった1日で数キロメートルもの位置の狂いが生じるんだそうな。相対性理論、恐るべしです(笑)

耳にしたことはあるけど、なんのことかよくわからない語、例えばブラックホール、超高速粒子タキオン、ワームホール、エントロピー、宇宙ひも、パラレルワールド・・・。これらのものが理解(大体ですが)できただけでも大収穫としましょう(笑)

物理のお勉強

2008-09-25 17:14:08 | さ行の作家
佐藤勝彦 監修「相対性理論がみるみるわかる本」読了

中島義道の本をずっと再読してきて、「時間」というものにぶつかり、中島氏の本筋からははずれるんですが、「過去」、「未来」って見ることができるのか、いわゆるタイムマシンを作ることは可能か、という方向に興味がそれていきまして、それを理解するにはアインシュタインの相対性理論を理解しないといけない。これがまたむずかしいんですね(苦笑)それで、いわゆる「サルでもわかる相対性理論」みたいな本がないかなぁって思ってたら、あったんです。この本です。実はコンビニで偶然見つけて買いました。その隣に「タイムマシンがみるみるわかる本」というのもあったんで即、買いました。まるで僕のために用意しておいてくれたみたいです(笑)

で、読んでみたんですが、僕の知りたいことが今ひとつはっきりと書いてなくて、個人的には少し不満でしたが、でも相対性理論を理解するには非常に親切でわかりやすい本でした。

物体が光速に近いスピードで移動すると、その部分の時間は遅く進むとか、質量が増える(重くなる)とか、それがなぜそうなるのかということがよく理解できました。でも、人にきちんと説明できるかというと、ちょっと・・・(笑)

次、タイムマシンの本、いきます。

不幸になるために愛し合う

2008-09-25 16:56:51 | や行の作家
吉田修一「さよなら渓谷」読了

最近、中島義道に傾倒気味で、少し哲学病に陥ってる感じがするので、まったく毛色の違うものを読んでリハビリしようと思ってます(苦笑)

そして本作品。これはあれですね。桐野夏生の描く人間ドラマみたいな小説でした。「OUT」みたいな。あと、角田光代の「八日目の蝉」も同じような感じだったなと思い出しました。しかし、最近はこういう系統の本は好まなくなりましたねぇ。なんというか、人間の悲しい性というか、業というか、そういったものを綿密なプロットで組み立てられたりすると、なんだかなぁ・・・という気持ちになってしまうんです。

それよりも自分が好きなのは、他の人がマネできないようなきらりと光る表現とかキレのある文体とか、それらから醸し出されるその人独自の世界、みたいな小説にグッと引きずり込まれます。例えていうなら小川洋子、川上弘美、小池昌代、蜂飼耳・・・ありゃ、女性ばっかりだ(笑)男性作家では村上春樹、堀江敏幸、町田康、橋本治あたりですかね。

話を本書に戻して、これは、主人公が大学時代、レイプ事件を起こした、相手の女子高生と十数年の時を経て出会い、一緒に暮らし始める(!)わけですが、そんな男女が愛し合うことができるのか、というのがこの小説の大きなテーマになってます。

吉田修一という作家は、何年か前に「パークライフ」という小説を読んだときに、あ、この空気感、いいなぁと思った人なんですが、こと、この小説に至っては、ずいぶんと様変わりした印象です。学生時代、キラキラ輝いててすごく素敵だった女の子が、20年ぶりのクラス会で会ってみたら、普通のおばさんになってたみたいな(笑)

いろいろな本を読んでいく中で、この作家はもういいな、というものにもよくぶつかります。そういった意味で「さよなら渓谷」、いい体験をさせてもらいました。

自転車に乗って天国へ行った詩人

2008-09-25 16:35:39 | た行の作家
高田渡「バーボン・ストリート・ブルース」読了

高田渡の自伝です。まさに波乱万丈、すごい人生です。

高田渡が16才くらいの時から音楽を始め、死に至るまで一貫していたことは「自分のやりたいことだけをやる」という、非常にシンプルなものでした。でもこれ、なかなかできることではありません。

高田渡を知ったのは、僕が15才、中学3年のときです。当時、親友だった小林君が、「これ、いいよ」と言って貸してくれたのがサードアルバムの「ごあいさつ」というレコードでした。その時は、なにもわからず「これ、いいなぁ」と思って聴いていたんですが、この本を読んで、このアルバムのレコーディングスタッフが、はっぴいえんど、加川良、岩井宏、中川イサトと、そうそうたる顔ぶれであることを知り、びっくりしました。ぜいたくなアルバムです。

このアルバムに入っている「生活の柄」という曲、今でも風呂にはいると、つい口ずさんでしまうくらい好きな曲です。

アルコールが原因で肝臓をこわし、3年前に亡くなった高田渡、改めて冥福を祈ります。

哲学病です

2008-09-17 14:54:23 | な行の作家
中島義道「行きにくい・・・」読了

またまた中島義道です。「哲学病」という名のもとに、あちこちに書いたものをまとめたもの。

4章の「生きにくさをかみしめる」は、「うるさい日本の私」と「醜い日本の私」に著した思想の根幹をなすものです。5章の「哲学的読書案内」では、自分の「人生を<半分>降りる」をちゃっかり宣伝してます(笑)

その中にあって、2章の「神経症的時間論」、これには目からウロコでした。「今」とは何か、「過去」とは「未来」とは何か、これを改めて問い直すとき、「私」は、どうして生きているのか、「私」は、何故死んでしまうのか、この根源的ともいえる疑問のことを考えずにはいられません。

中島義道「時間を哲学する」これを次に読みます。また、考え方の主題からはちょっとずれますが、ニック・ハーバート「タイムマシンの作り方」、これものぞいてみることにしましょう(笑)

不条理という条理

2008-09-17 14:46:13 | か行の作家
カミュ「異邦人」読了

中島義道氏の薦めにより、こんなスタンダードな古典(?)を手にとってみました。

確か、中学生くらいのときに読んだような記憶があるんですが、そんな子供にこの作品の深さがわかろうはずもありません(笑)まぁ、背伸びしたいお年頃だったんですね。

今、改めてじっくり読んでみて、中島氏がこれを推す意味がよくわかります。

主人公ムルソー(この名前は、フランス語の「死」と「太陽」をあわせた造語のようです)は、養老院にいる母の死を聞き、通夜と葬儀には行くものの、涙を流すなど、悲しい様子を全く見せず、その翌日には恋人と海へ行って遊び、喜劇映画を見て笑いころげ、その夜、その恋人と寝る。

自分のしたいことをしているんです。そういう意味では、自分に正直な人だと思います。
自分は、親が死んだらどうするだろうと、思わず自問しました。そんなに悲しい気持ちにはならないのではないかと思うんです。でも、ムルソーのように正直(?)にふるまうことは、とてもできません。

もうひとつ。ムルソーの恋人マリイは、至極まっとうな女性で、ムルソーを愛しているんですが、この、ムルソーとマリイの結婚に関するやりとり、少し長いんですが、引用します。
「・・・・(マリイが)自分と結婚したいかと尋ねた。私は、それはどっちでもいいことだが、マリイの方でそう望むのなら結婚してもいいと言った。すると、あなたは私を愛しているかときいてきた。前に一ぺんいったとおり、それにはなんの意味もないが、恐らくは君を愛してはいないだろう、と答えた。じゃあ、なぜあたしと結婚するの?というから、そんなことは何の重要性もないのだが、君の方が望むのなら、一緒になっても構わないのだ、と説明した。・・・(中略)・・・(マリイが)別の女が、同じような申し込みをして来たらあなたは承諾するか、とだけきいてきた。もちろんさ。と私は答えた。・・・」

どうですか。これ。まぁ、ここいらへんが「不条理文学」と騒がれる所以であるかと思うんですが、僕はこのあたり、読んでて、いっそすがすがしい思いがします。これほどまでに「愛」というものを信じないというか、感じない、感情をそぎ落とされた(そぎ落とした)人間というか、すごいです。

そして、友人をうらむ人間を、ちょっとしたことで、ピストルで殺害してしまうわけですが、このあたりもすごい。男は、一発で倒れるんですが、その死体に向かって、さらに4発弾丸を撃ち込むんですね。感情のかけらもないのが見てとれます。

この殺人の罪で、彼は死刑になるんですが、その裁判の様子も、彼の感情は大きく揺れ動くこともなく、すんなり死刑が確定してしまうんです。

こうやって彼の動向を追っていくと、ムルソーという人間は、非常に無機的な、まるでサイボーグのような印象を受けるかもしれないんですが、そうではなくて、彼も頭の中ではぐるぐる思考をめぐらしているんです。その顕著な例が、最後、彼の独房に御用司祭が訪ねてきて、いわゆるお説教というものをぶつわけですが、司祭が「いいや、わが子よ、私はあなたとともにいます。しかし、あなたの心は盲いているからそれがわからないのです。私はあなたのために祈りましょう」と最後に言ったとき、ムルソーは、突然「キレる」んです。
「貴様の信念など、女の髪の毛1本の重さにも価しない!」と。そして、「焼き殺すぞ!」とか、罵倒の限りを尽くすんです。
あ、ちゃんと感情、あるじゃんってね(笑)

そして、最後の最後、自分は幸福であると確信して死んでいくんです。

人を愛さない(愛せない)
自分の死に関して大きな感情の揺らぎがない(死刑になって今死んでも、どうせいつかは死ぬんだから同じこと)

これは、中島義道の思想に通じるものが多分にあります。もちろん、こういう生き方を是とするものではないんですが、その心持はわかるというか、共感する部分は、かなりありました。

静かで、そして重い感動が胸の内に広がっています。

切れ味鋭い短編集

2008-09-13 23:28:30 | あ行の作家
井上光晴「ゲットーマシン」読了

昭和53年から56年の間に「文学界」に連載(?)していたものをまとめた短編集です。全部で33もの短編が収められているんですが、どれも5~8頁くらいの超短編です。

相変わらずの井上光晴の世界です。ただ、短すぎてなんだかもったいないような作品も少なからずありました。もっとふくらませればおもしろい小説になるのにと(ってえらそうですね 笑)
でも、まぁ、楽しめました。井上光晴、さすがです。

真実の世界

2008-09-13 23:22:22 | ま行の作家
町田康「宿屋めぐり」読了

足掛け7年にわたる連載物が単行本になったようです。
久々の町田康、しかも600頁の大長編!わくわくしながらページを開きました。

内容は、「告白」と似た印象を受けました。テーマは全く違うんですが、時代背景がそんな感じなんですね。

人が生きていく上で、真実一直線にいければそれにこしたことはないんでしょうけど、時には嘘をつかなければいけない。人を救うための嘘なら、むしろそうするべきであると。
まぁ、この長い長い小説で、言いたいのはそれだけではないんですがね(笑)
相変わらずのへなへなした(笑)文章で、おもしろく読ませてもらいました。

一番最後、ついに主が現れて、この小説のメインテーマとなるようなセリフを言うんですが、そこに少し疑問を感じました。もう少し納得のいく終わらせ方をしてほしかったなぁ。

とまれ、町田康、相変わらず好調です。
蛇足ですが、出てくる人物の名前がね(笑)おもろい。石抜坂抜ヌヌヌノ王子とか別鱈珍太とか燦州ポポポ呪師とか(笑)