中村文則「何もかも憂鬱な夜に」読了
本書は平成24年に集英社文庫より発刊されたものです。
以前、中村文則は初期の頃の作風からエンタメの方向へ向かっていると「掏摸(スリ)」か何かを読んだときに思ったんですが、本作は「掏摸」以前のもので、やはり内容は底抜けに暗いです。しかし、読み進むにつれ、そのどん底の暗さが妙に心地良くなったりもするわけですね。
施設で育った刑務官「僕」が主人公の話なんですが、内容はわりと分かりやすいです。殺人の罪を犯した者が死刑に処せられるのは正しいのかどうか。自殺した友人からその直前に送り付けられてきた手記、「僕」がまだ若い頃、さまざまな音楽、文学等の芸術を教えてくれた「あの人」との思い出…。それらを通じて生と死、そして希望とは何かを問う作品ということだと思うんですが、いやーどうなんですかねー。ちょっと青臭い感じであまり好きになれませんでした。
30代くらいのまだ青春が終わってそんなに年月を経ていない人には結構はまる小説なのではないか、そんな気がしました。