トシの読書日記

読書備忘録

3月のまとめ

2014-03-31 19:38:02 | Weblog
今月読んだ本は以下の通り


村上春樹「ドライブ・マイ・カー」「イエスダディ」「木野」
中島義道「哲学の道場」
大江健三郎「晩年様式集―イン・レイト・スタイル」
佐野洋子「神も仏もありませぬ」


と、たったの4冊でありました。まぁ、今月はいろいろあったのと、大江健三郎にかなり難渋したので、仕方ないというところでしょうか。



3月 買った本0冊
   借りた本3冊

いつ死んでもいい でも今日でなくていい

2014-03-31 19:20:13 | さ行の作家
佐野洋子「神も仏もありませぬ」読了



佐野洋子のこの手のたぐいのエッセイは、いくつか読んでるんですが、姉が貸してくれたので読んでみました。


相変わらずの佐野さんです。歯に衣着せぬ文章は、なかなか痛快です。生きていくことの愚かさ、みじめさを笑いに変え、泰然自若の姿、かっこいいです。


楽しく読ませてもらいました。




姉に以下の本を借りる


イーヴリン・ウォー著 小林章夫訳「ご遺体」
文藝春秋3月号
柴田元幸責任編集「モンキー」

しかし私らは生き直すことができる

2014-03-31 18:23:21 | あ行の作家
大江健三郎「晩年様式集―イン・レイト・スタイル」読了



久しぶりの更新となってしまいました。いろいろとバタバタしておりまして、本書もその合間に少しづつ読みついで、ようやっと読了したというところです。1ヶ月近くかかりました。


本書は、小説というよりも、大江健三郎の集大成とでもいうべき作品ではないかと思います。


今まで著者(一応話の中では長江古義人となっておりますが)が書いてきた小説(私小説風のもの)の中に登場する主人公の妻 千樫、妹のアサ、娘の真木、この三人が、自分達の一面的な部分でしか書かれていないことに不満をもち、三人がそういったところを新たに書き直してそれを古義人に見せ、この「晩年様式集―イン・レイト・スタイル」に+αとして加えてもらうよう、持ちかける。この辺のくだり、かなりややこしいです。


そして「懐かしい人への手紙」に登場し、死んでしまった(殺された?)ギー兄さんの息子であるギージュニアがアメリカでテレビ関係の仕事をしていて、古義人のドキュメントを制作するという名目で来日し、古義人にインタビューを試みる。そこには当然先の三人の女性も加わり、話を補足したり、反論したりということで、なにか、古義人が槍玉にあげられている感がなくもないです。


そしてまた、無二の親友であった塙吾良の自殺に関連して、吾良と死の直前まで親しくしていたシマ浦という女性もそこに加わり、このあたりも相当にややこしいです。


本書はこういったインタビューを通して、古義人(=大江健三郎)の来し方行く末を見つめ、「3・11後」の日本はどうあるべきかということを、大江自身が残り少ない人生の中で、自分が生きているうちには成就しそうもない「核廃絶」という問題、しかしそれでもそれに向かって戦うという覚悟を決めるという話であります。


作中にも触れられている通り、おそらく本書が大江健三郎の最後の作品になるものと思われますが、その締めくくりに相応しい出来になっていると思います。


難を言えば、話がかなり込み入っていてややこしく、文もいつものことではありますが、回りくどく、読むのにかなり骨が折れました。とにかく疲れました。

「私」とは何か

2014-03-12 15:34:03 | な行の作家
中島義道「哲学の道場」読了



ちょっと読みかけたらやめられず、またまた寄り道をしてしまいました。中島義道の新刊が出たら、ついつい買ってしまうという、どうにも困ったもんです。しかし、本書は今までとはちょっと違ったおもむきで、哲学はとにかく難しい、生半可な気持ちでやるなら時間の無駄であると、まったく自分に向かって言われたかのような内容でありました。


かなり難しい内容で、カントの有名な「純粋理性批判」の中で「誤謬推理」という箇所を取り上げて哲学のなんたるかを説いているんですが、ちんぷんかんぷんとまでは言わなくても、かなり難解です。


まぁ哲学の入口をほんのちょっとのぞいただけでもよしとしますか。

示唆の深い迷宮

2014-03-05 15:50:21 | ま行の作家
村上春樹「ドライブ・マイ・カー」「イエスタディ」「木野」読了



文藝春秋の2013年12月号・2014年1月号・2月号にそれぞれ書き下ろされた短編です。文芸誌に掲載だし、短編なんで三つまとめて1冊ということにしときます。


「ドライブ・マイ・カー」と「イエスタデイ」の2作は、はっきり言って凡作だと思います。がしかし、「木野」はよかった。いかにも村上春樹らしい作品でした。


妻に浮気をされ、離婚し、会社も辞めて小さなバーを始めた木野という男の話なんですが、いろいろなことがあって心に深い傷を負うんですが、それを忘れることでしのいできた主人公の心情が深く胸に刺さります。

ラストの部分、引用します。

〈木野の内奥にある暗い小さな一室で、誰かの温かい手が彼の手に向けて伸ばされ、重ねられようとしていた。木野は深く目を閉じたまま、その肌の温もりを思い、柔らかな厚みを思った。それは彼が長いあいだ忘れていたものだった。ずいぶん長いあいだ彼から隔てられていたものだった。そう、おれは傷ついている、それもとても深く。木野は自らに向かってそう言った。そして涙を流した。その暗く静かな部屋の中で。〉


木野が心の傷に正面から向き合い、強く生きていくことを決意する場面です。表現の仕方が春樹らしくていいです。


大江健三郎の「晩年様式集――イン・レイト・スタイル」を読むのにちょっと回り道をしてしまいました。次、いきます。

2月のまとめ

2014-03-05 15:41:59 | Weblog
2月に読んだ本は以下の通り



獅子文六「コーヒーと恋愛」
小山田浩子「穴」
柴田元幸「代表質問――16のインタビュー」
大江健三郎「大江健三郎――作家自身を語る」聞き手・構成 尾崎真理子


以上の4冊でありました。


2月はなんといっても大江健三郎のインタビューでしたね。大江をより深く理解することができました。インタビューアーの尾崎さんもすごい。小山田浩子の「穴」も面白かった。もう一回ぱらぱら読み返していて気づいたんですが、この作家は人物の描写に実に長けています。それが物語の面白さにつながっていると思いました。


2月というのになかなか公私にわたって忙しく、あまり本が読めませんでした。まぁ中味が濃かったからそれでよしとします。



2月 買った本 2冊
   借りた本 2冊