三島由紀夫「花ざかりの森・憂国」読了
本書は昭和43年に新潮文庫より発刊されたものです。
ずっと前から姉に「読め読め」と言われていた三島の短編集をやっと読了することができました。他に読みたい本がいつもあって、まぁそのうち…とずっと思っていたのですが、今回、勇躍手に取ってみたのでした。
一番最初に収められている「花ざかりの森」という文庫で50項ほどの作品、いやぁ、これが一番難関でしたね。恥かしながら何が書いてあるのかさっぱりわからない。何のことを言っているのか、誰の何の話なのか、読めども読めども頭に入って来ず、これは先が思いやられると暗澹たる気持ちになったんですが、その後の作品はそんなこともなく、コントのようなくだけた短編もあったりして、面白く読めました。
しかし、「憂国」にはびっくりしましたね。「花ざかりの森」同様、三島の代表的な作品ということは知識として知っていたんですが、こういう小説だったんですね。
近衛歩兵の中尉が2・26事件で叛乱軍に加入した自分の親友の青年将校達を討たねばならないことに懊悩を重ね、皇軍相撃の事態必至となる情勢に痛憤して自害したことを扱った短編なんですが、これぞ三島の作品と膝を打ってしまいました。ここまで甘美なエロスとタナトスを描いた作品を知りません。
他にも、中年の婦人が若い頃見合いをして断った相手をずっと気にかけていて、何年かぶりにその男と会う機会を得て、男は今でも自分のことを慕っていると思い込んでいたら、とんでもない勘違いだったという「遠乗会」という作品。同じような話が、ジュンパ・ラヒリの短編集にもあったことを思い出しました。
いや、やっぱり三島由紀夫、すごい作家です。これも姉おすすめの「豊饒の海」四部作、読まねばと思っております。
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