松家仁之「光の犬」読了
本書は2017年に新潮社より発刊されたものです。
夜、仕事終わりで帰る車の中、よくNHKラジオの「ラジオ深夜便」を聞くんですが、月に一度くらい「やっぱり本が好き」(だったか?)というコーナーがあり、長江朗という、作家で書評家の人がいろいろな本を紹介していて、本作品も取り上げられていて(大分前ですが)、興味が湧いて買ってみたのでした。
441頁という長編で、読了するのに少し時間がかかりましたが、かなり読み応えのある作品でした。
北海道に住む添島一家の三代にわたる物語です。父、眞二朗、母、登代子、長女、歩、その弟、始、そして眞二朗の三人の姉たち、眞二朗の母、よね、それから添島家で飼われていた北海道犬たちと、主な登場人物はこんな感じです。
特に主人公というものはなく、語り手も歩だったり始だったり登代子だったりと、いろいろに変わります。全体にとりとめもない話の流れという印象で読み終え、なんだかなぁという読後感だったんですが、時間が経つにつれ、じわじわと感動がこみ上げてくる感じで、ちょっと自分でそれに驚いています。堀江敏幸のテイストにも少し似ているところも自分のストライクゾーンだったのかも知れません。
読んでいる間は自分の評価は少し低かったんですが、今は全然違いますね。やっぱりいいです、この小説。
姉の歩と弟の始の細やかな心情が、幼いときから50代半ばまでの人生が精緻に描かれていて、それが心にじんわりと染みてよかったですね。歩は30代半ばで癌で亡くなってしまうんですが。
この松家仁之という作家の他の作品も読んでみたくなりました。まぁその前に読みたい本が山ほどあるので、どうなるか分かりませんが。
ネットで以下の本を購入
カルロ・ロヴェッリ著 冨永星訳「時間は存在しない」NHK出版
そして姉から以下の本を借りる
アンナ・カヴァン著 佐田千織訳「あなたは誰?」文遊社
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