トシの読書日記

読書備忘録

オイディプス王と佐伯さん

2019-05-07 14:43:44 | ま行の作家



村上春樹「海辺のカフカ」(上)読了



本書は平成17年に新潮文庫より発刊されたものです。


さて、村上春樹祭りもいよいよ大詰めを迎えてまいりました。このあとも読みたい本、よまなきゃという本が目白押しなので、そろそろこの辺(本書の上、下巻)で打ち切りにしたいと思っております。


前回読んだ「ねじまき鳥クロニクル」はテーマを簡単に言ってしまうと「愛」と「暴力」であると思ったんですが、本書の(上)だけ読んで思うのは、なんというか、もっと複雑なものが入り組んでいて、なかなか一筋縄ではいかないような読後感でありました。


田村カフカ(主人公)、カラスと呼ばれる少年(カフカの心の中に住む友人)、ナカタさん、星野青年、大島さん、佐伯さん、田村浩一(カフカの父)といったところが主な登場人物なんですが、聞いたところによると、本作品はギリシャ神話を下敷きにしているようなことらしく、それでちょっと調べてみたんですが、主人公のカフカがオイディプスとして、母が甲村図書館館長の佐伯さんということなんでしょう。だとするなら下巻でカフカと佐伯さんが交わる場面があるということなんでしょう。


あと、父、田村浩一(ジョニーウォーカー)を殺したのは作中の文章を読むかぎり、ナカタさんということになっていますが、田村カフカが意識を失って気がついたら服に血がべったりとついていた、というのは多分ナカタさんがジョニーウォーカーを殺した時刻と符号するということなんでしょう。なので現実に田村浩一を殺したのはナカタさんであるけれども、なんだろう、メタファーとしてカフカが父親を殺したという意味に著者は受け取らせたいということなんだと思います。自分は浅学にしてそれ以上のことは推察できません。


「ねじまき鳥クロニクル」も、それ以前の作品に比べて、より深いテーマを掲げていると感じたんですが、本作品は、それらをさらに深く掘り下げたものを感じます。小説として、文学として、より本質に近づいた感じがします。


下巻が非常に楽しみです。

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