トシの読書日記

読書備忘録

クミコの孤独

2019-04-09 17:53:54 | ま行の作家



村上春樹「ねじまき鳥クロニクル第三部鳥刺し男編」読了



第一部、第二部でいつもの書き出しを忘れていました。本書は平成9年に新潮文庫より発刊されたものです。


この壮大な三部作を読み終えて、大きなため息をついています。いえ、決して悪い意味でのため息ではありません。すごいですね。すごい作品です。自分なりに考えるんですが、本作品のテーマは「愛」と「暴力」ではないかと思います。


ノモンハン事件という史実を脚色して「皮剥ぎボリス」という暴力に立ち向かう間宮中尉の物語、そこに現代の綿谷ノボルという悪(暴力)を叩き潰そうと立ち上がる岡田トオルのストーリーをオーバーラップさせるあたり、まさに手練れの技です。ほんと、うまいですねぇ。その岡田トオルの姿がクミコに対する強い愛を感じさせるわけですね。いやいや読ませます。


第二部でギタリストにバットで殴りかかられ、その男を何回も殴ったというエピソードも第三部を読み終えて、ようやくその意味を飲み込むことができました。


綿谷ノボルとクミコとの間に何があったのか、例によってそういった部分ははっきりとは明かされずじまいでしたが、しかし充分に読みごたえのある、素晴らしい長編でした。

コメントを投稿