トシの読書日記

読書備忘録

日常生活に侵入する蠱惑的な魔法

2019-09-17 14:01:26 | ま行の作家



スティーブン・ミルハウザー著 柴田元幸訳「私たち異者は」読了


先週は岡崎美術館へ「キスリング展」を観賞しに行きました。素晴らしかったです。自分の勝手な思い込みで、キスリングという画家は風景画の人だと思っていたんですが、人物画もたくさんありました。その人物画が良かった。どの絵の人物も同じような目が描かれているんですが、その目が良かった!   

それはともかく…


本書は令和元年に白水社より発刊されたものです。


待望のミルハウザーの新刊です。しかし、これは自分の気持ちの問題なんですが、なかなかのめり込むことができず、読了するのに2週間ほどかかってしまいました。本作に全く非はありません。あくまで自分の問題です。


全部で7編の短編が収められた 作品集です。とはいえ、表題作の「私たち異者は」は73項のやや長めの作品となっております。そしてこの作品がすごかった。これまでミルハウザーといえば精緻できめ細かな描写が大きな特徴であったわけですが、本作品はなんというか、そこから更に進化して、ちょっとひと味違う展開に持ってきているというのが自分の印象です。


日常生活の中に異物を挿入させて、そして物語は淡々と進んでいく、といったらいいんでしょうか、読んでいて奇妙な違和感を覚えるんですが、読み進めていくうちにそれが快感につながっていくんですね。そしてその話をすんなり受け入れている自分がいるわけです。業師ですね。そして紛れもなく職人です。


久しぶりに自分の心に深く入り込んでくる味わいました。これで少しは読書のペースも上がるかもしれません。



姉と恒例の「定例会」を行い、以下の本を借りる


リチャード・ブローディガン著 藤本和子訳「芝生の復讐」新潮文庫
ホルヘ・フランコ著 田村さと子訳「外の世界」作品社
ダーク・ソルスター著 村上春樹訳「ノヴェルイレブン、エイティーン」中央公論新社
多和田葉子「地球にちりばめられて」講談社



また、ネットで以下の本を購入

岸政彦「図書室」新潮社
平野啓一郎「ある男」文藝春秋社

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