トシの読書日記

読書備忘録

言葉の持つ毒

2012-03-21 17:18:44 | や行の作家
吉本ばなな「とかげ」読了



毎晩寝る前に少しづつ読んで、読み終わるのに3ヶ月ほどかかってしまいました。吉本ばななの「キッチン」という作品があるんですが、これがまた素晴らしい小説で、この作家の力量に感心したものでしたが、これはちょっとどうなんですかねぇ。


ちょっと自分の書く言葉に酔ってるきらいがあります。何を言ってるのかわからないところがちょいちょいあって、例えばこんな文章…


<私の愛は君のと少しちがう。たとえば君が目を閉じた時、まさにその瞬間に宇宙の中心が君に集中する。すると君の姿は無限に小さくなり、後ろに無限の風景が見えはじめる。君を中心にして、それはものすごい加速でどんどん広がる。私の過去のすべて、私の生まれる前のこと、書いたことのすべて、今まで私が見てきたすべての眺め、星座、遠くに青い地球の見える暗黒の宇宙空間まで。>



表現したいことはなんとなくわかるんですが、なんだかなぁという思いが、どうしてもつきまとってしまうんですね。それで、なんだかいらいらしながら読んだ3ヶ月でありました。



この作品を読了した翌朝の新聞で、ばななの父である作家で哲学者の吉本隆明氏の訃報を知って、ちょっと不思議な気持ちになりました。

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