トシの読書日記

読書備忘録

非日常へ逃れる

2018-06-19 17:49:12 | や行の作家



吉田知子「日本難民」読了



本書は平成15年に新潮社より発刊されたものです。先日、名古屋、栄のジュンク堂、丸善と本を買いに行ったんですが、本書は見当たらなかったので、ネットで買いました。


戦争が始まり、「連合軍」が日本に攻めてきて、東京はもう危ないということで、人々は山へ海へ逃げていきます。50代半ばとおぼしき主婦の視点で描かれたこの小説は、やはり吉田知子のテイストはあるものの、ちょっと物足りない作品というのが自分の感想です。


深い山の中の閉鎖した温泉宿に自分と夫と隣りに住む男と3人で逃げ込んできた彼らは、何人かの人達と非日常の中で日常的な日々を過ごします。しかし、そこも危ないということで、またそこから逃げ出すわけですが、そのあたりの様子がいかにも吉田知子的なシニカルな描き方で、そこは面白かったです。


アマゾンの本書のレビューで、なぜ戦争になったのか、何の説明もないし、結末もただなんとなくという感じで終わってて、つまらなかったというのがありましたが、この方は吉田知子は読まなくてもいいですね。この恐ろしいものに追いかけられて、右往左往、逃げまどうこのシチュエーションを楽しめばいいのであって、戦争が起こった理由なんかどうでもいいんです。


吉田知子の面白さを理解できない、残念な人でありました。


もう一冊、吉田知子の本をネットで注文してあるので、こちらを楽しみにして待つことにします。


コメントを投稿