ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

上下駅売店@上下

2019年03月24日 | 旅で出会った食メモ

JR上下駅には列車は滅多にやってこないが、駅舎のみやげもの屋は充実している。府中界隈のお菓子は大概揃っており、くにひろ屋の洋酒ケーキもここで購入。ツチノコにゆかりがあるらしく、記念?グッズや銘菓「つちのこ饅頭」なんてのも。洋酒ケーキとの詰め合わせもあったので、味見を兼ねてこっちも買ってみた。キロ売りの塩けんぴも気になったが、重そうなので断念。

待合室の一角では地元の方々がお茶の時間で、列車待ちがてら自分も片隅でいただいた。あまり列車が来ない駅、これはこれで居心地がいいものだ。


旅で出会ったローカルごはん…広島・上下宿 『お食事処ことぶき』の、ぎゅ〜そば

2019年03月24日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
天領の白壁の町・上下の街並み歩きに没頭してしまい、13時過ぎのバスで帰る予定がうっかり乗り過ごしてしまった。次のバスは16時過ぎ、列車も同じぐらいない。なので府中に戻って府中焼きで昼ごはんの予定を変え、上下駅前に店を構える「お食事処ことぶき」の暖簾をくぐった。時間調整が目的でご当地料理は考えておらず、小腹を埋める感覚でおばちゃんオススメの「ぎゅ〜そば」をなんとなく注文した。

これがちゃんと地元の食材を用いた逸品で、上下産のそば粉で打ったそばに、具には薄味に煮た上下牛のモモ肉をのせてある。太めでこしがしっかりしたそばは、ソバの香りが高く手打ちのなめらかさ。上下牛も赤身の味わいがかみしめるごとにあふれ、山里のそばらしいどっしり食べ応えがある。

上下ぎゅ〜そばは地元・上下町のタケダフーズが展開しているご当地そばで、ここをはじめ市内の4つの店舗で提供している。上下町は標高400メートルの立地のため、そば栽培や畜産に適した冷涼な気候が特徴。ともに指定農家・畜産家に生産を依頼しており、立派な地産地消のそばといえる。この店のそばは上下牛の味わいを生かした、シンプルな組み立てにしてあるという。ちらし寿司ほか、親子丼とのセットも人気だそうで、店の看板メニューとなっているようだ。

食べ終えても列車の時間までは、まだ1時間半ほどある。町歩きの整理と振り返りをしながら、もうしばらくゆっくりさせてもらいましょうか。

上下宿てくてくさんぽ5

2019年03月24日 | てくてくさんぽ・取材紀行
翁橋を渡ると町並みの外れだが、ここには上下の町が栄えた元となった代官所の跡がある。1700(元禄13年)の水野家の断絶後、池田綱政の治世の際に置かれ、石見の大森代官所に所領が統括された際に出張陣屋となった。維新後は役場や小学校に使われたが、いまは「天領上下代官所跡」との説明板が、石垣の基礎の上に立つのみとなっている。

翁橋へ引き返して反対側の通りを行くと、こちらにもなまこ壁に格子の商家が並んでいる。主たる通りよりいくらか建物が小ぶりで、細い千本格子に花のような壁紋などの意匠が見られる。いまは旅館、料亭、電気屋、玩具屋などほとんどが現役で、「めし」「酒」「御宿」の文字が見られる看板に、いくらか当時が偲べるような。

その通りの最奥には、芝居小屋「翁座」が構えている。大正期に建てられた、芝居や映画の常設小屋で、由緒書きには鶴田浩二も出演したことがあるとも。中が見られないのが残念だが、かすれた「映画実演」の文字の跡に年季が感じられる。

ざっと歩いて1時間、軽く食事をしたら引き返しましょう。

上下宿てくてくさんぽ4

2019年03月24日 | てくてくさんぽ・取材紀行
通りの中程から翁橋にかけては、さまざまな消化の建築が点在し、豪商ゆかりの地を彷彿とさせる。大成権薬局は、銅板の屋号看板が右読みなのに時代が感じられる。豪商のひとつ・造り酒屋の重盛本店は、間口が広く重厚ななまこ壁が重々しい。メガネ型窓が据えられた土蔵が目を惹く永井硝子店、ベンガラの赤い格子にハイカラな行灯が和モダンな三玉医院など、個々に意匠が違うため歩いていて見飽きない。

通りの後ろ寄りには、瀬川百貨店と吉田本店の、これぞ豪商の店たる商家が荘厳だ。シックな黒漆喰に緻密な千本格子が美しく、吉田本店は二つ並んだなまこ壁の商家に配された、立派な袖卯辰に店としての格が偲べる。最奥には昭和なレトロ看板が頑張る久保金物店、火の見櫓と白壁のコントラストが美しい明治時代の警察署、大正期のバス待合所でモダンな石造りに欧文の屋号が掲げられた片野製パンなど、時代が多彩な建物が近くに集まっている。

まだ3月のため、店頭にはそれぞれ雛飾りを配しており、上下に古くから伝わる土人形「享保雛」を配する商家も。やや遅めのひな祭りを目で楽しみながら、もう少し歩いてみましょう。

上下宿てくてくさんぽ3

2019年03月24日 | てくてくさんぽ・取材紀行
上下教会は上下財閥角倉家の蔵を、昭和25年に上下キリスト教会が改造して教会建築にしたものである。白壁に赤いたもとの塔がランドマークで、遠目には洋館に見えるが間近で見ると、土蔵からニョッキリと塔が伸びる独特の造り。蔵を所有していた角倉家は、江戸期から農林業を営む大地主で、当地で立ち上げた銀行が広島銀行のいち前身となっている。

上下は江戸期に、上下代官陣屋から豪商が銀を委託され、「掛屋」という金融貸付業が盛んだった由縁がある。掛屋は33軒あり、扱われた銀は「上下銀」と呼ばれた。明治期になると条例発布を受けて、角倉家をはじめ彼らは銀行を起業していく。いわばこの山間の宿場町が、数々の金融業者の発祥の地でもあったのだ。そうした史実は、上下教会の斜め向かいにある上下歴史資料館の展示に詳しい。

館内には、角倉家で東宮侍従となり教育の普及に邁進した角倉志郎ほか、当地出身の小説家・翻訳家の岡田美知代の展示が充実している。岡田は「花ものがたり」「愛と真実」がベストセラーとして知られ、田山花袋との師弟で「蒲団」のモデルになったとも。この資料館は旧岡田邸を利用していて、2階には花袋が投宿したという、岡田家の和室も再現されている。

街並み入り口の展示施設で町の基本をさらったら、さらに通りを奥へ歩いてみましょう。