大船はかつて松竹の撮影所があった、映画の街として知られる。跡地のそばにある「ミカサ」は、そのスタッフや俳優、女優にも贔屓にされた洋食屋だ。ロケにも使われたという洋館風の外観、当時にしてはハイカラだったろう店内のたたずまい。下町風情のこの地にありながら、今なお映画制作が盛んで華やかな頃の名残をとどめる、瀟洒な雰囲気を醸し出している。
撮影所御用達の店だけに、メニューにはそこで働く人たちの意向が反映されたものもある。「カツめし」は、カツレツとライスをナイフ&フォークで食べるのが時間がなく面倒、ということで生まれた品だ。醤油味のご飯の間にカツとキャベツを挟んだそれは、いわばワンプレート洋食か洋風カツ丼か。忙しい撮影関係者に向けた、融通と遊び心による名物だろう。
これと双璧の人気メニューが、洋食屋の定番といえるオムライスだ。一般的にはチキンライスをオムレツでくるんで仕上げるが。ここのはチキンライスの上にオムレツをのせたスタイル。しっかり目に焼かれたオムレツにスプーンをかけたとたん、半熟の玉子がトロリとくずれ流れる。これが酸味の効いたチキンライスと程よくからみ、食味は極上のオムライスそのものである。
ふわとろの甘いオムレツ、鶏肉ごろごろの本格チキンライスをそれぞれ味わい、いざオムライスとしてかかることに。そこで嬉しいのが、ソースが二種類も添えてあること。まんまトマトのフレッシュさ炸裂のケチャップは、子どもの頃の記憶に繋がる懐かしい味わい。シイタケにシメジにマイタケたっぷりのドミグラスソースは、深い薫香の中にさらりと苦味がよぎる大人のテイスト。どちらもグレイビーボートが空になるまで、しっかりかけ回さずにはいられない。
千変万化のその味には、多彩な個性派俳優が出入りした店ならではの、とりどりな華を感じられたような。名残がほぼなくなった界隈ながら、撮影所ゆかりの洋食はそのレシピに、往時の賑わいや面影を伝え残しているようにも思える。
撮影所御用達の店だけに、メニューにはそこで働く人たちの意向が反映されたものもある。「カツめし」は、カツレツとライスをナイフ&フォークで食べるのが時間がなく面倒、ということで生まれた品だ。醤油味のご飯の間にカツとキャベツを挟んだそれは、いわばワンプレート洋食か洋風カツ丼か。忙しい撮影関係者に向けた、融通と遊び心による名物だろう。
これと双璧の人気メニューが、洋食屋の定番といえるオムライスだ。一般的にはチキンライスをオムレツでくるんで仕上げるが。ここのはチキンライスの上にオムレツをのせたスタイル。しっかり目に焼かれたオムレツにスプーンをかけたとたん、半熟の玉子がトロリとくずれ流れる。これが酸味の効いたチキンライスと程よくからみ、食味は極上のオムライスそのものである。
ふわとろの甘いオムレツ、鶏肉ごろごろの本格チキンライスをそれぞれ味わい、いざオムライスとしてかかることに。そこで嬉しいのが、ソースが二種類も添えてあること。まんまトマトのフレッシュさ炸裂のケチャップは、子どもの頃の記憶に繋がる懐かしい味わい。シイタケにシメジにマイタケたっぷりのドミグラスソースは、深い薫香の中にさらりと苦味がよぎる大人のテイスト。どちらもグレイビーボートが空になるまで、しっかりかけ回さずにはいられない。
千変万化のその味には、多彩な個性派俳優が出入りした店ならではの、とりどりな華を感じられたような。名残がほぼなくなった界隈ながら、撮影所ゆかりの洋食はそのレシピに、往時の賑わいや面影を伝え残しているようにも思える。