先日さかえやで頂いた牛丼と並ぶ、市場で働く人向けのスタミナ・ファーストフードといえばカレーだ。実は築地の場内・場外には、この両方のメニューを出す店がいくつかあり、さかえやでもマイルドな味わいのポークカレーが、牛焼肉丼と双璧の人気メニューになっている。それどころか、牛カルビ焼肉とポークカレーを両方ご飯にのせた、「焼肉カレー」という超ボリュームメニューもあるぐらい。このように2種の具をご飯にのせることを、築地界隈では「合がけ」と呼んでおり、ピザの「ハーフ&ハーフ」といった感じ。どっちを食べたいか迷うときには、ちょっとうれしいシステムである。
新大橋通り商店街の築地4丁目交差点寄りにある「大森」は、この「合がけ」発祥の店といわれ、以来40年来の根強い人気を誇っている。例によってこの通りの店ならではの、5~6人座れば満席のカウンターに腰掛けると、「今からあなたのスタミナを10時間守ります」との迫力ある貼り紙の文字が。とろろご飯とのセットメニューなど、ほかにも元気のでそうなメニューがいくつもある中、頼むのはやはり名物の合がけ。皿に盛たご飯の上に辛口のポークカレーと、焼き豆腐とタマネギ入りの牛丼がぴったり半分ずつのって出された。
一瞬、どちらから食べようか迷ってしまうが、まずは築地初物のカレーからひと口。長時間じっくり煮込まれているらしく、タマネギなどの具があまり形を残しておらず、トロリと柔らかな食感だ。牛丼と一緒に食べやすいようにやや辛口に仕上げてあるため、ピリッとした刺激につい食が進む。一方、牛丼の方は厚めの肉とタマネギ、そして焼き豆腐がごろりとたっぷりのっていて、見るからにボリューム満点。肉は脂身が少ない和牛を使っているためあっさりと食べやすく、タマネギは歯ごたえがしゃっきりと、カレーと対照的に食べごたえがある。ご飯にもしっかりと染みた甘辛いつゆがまた、カレーの辛みと好対象。付け合わせも半分には福神漬け、もう半分には紅ショウガが用意されているのがおもしろい。
しかしこの料理、考えてみればポークカレーの豚肉、牛丼の牛肉に加え、「畑の肉」大豆を使った豆腐まで入っている。この日はこれから結構忙しいけれど、貼り紙の文句通り今日1日ありがたくスタミナを守ってもらえそうである。(2004年6月2日食記)