私事であるが、旅とレジャーの出版関連の仕事に就いて間もない頃、旅行の情報誌の編集をに携わっていたことがある。イレギュラーな雑誌で残業が非常に多く、夕方に出てきた校正を夜なべして読み、翌朝までに戻すなんてことがしょっちゅう。先輩方に追われて右往左往していたが、駆け出しでろくに戦力になっていなかったことだろう。そんな中でひとつの楽しみだったのが、徹夜に備えてエネルギー補給のための夜食だ。下っ端の私が、近所の弁当屋へ買い出しに行くことが多かった中、仕事場が銀座界隈なだけに、たまに近所へ繰り出してちょっとばかり贅沢をしたことも。時には編集長にごちそうになったりと、当時のいい思い出である。
銀座のはずれにある洋食の老舗「煉瓦亭」もその頃よく訪れた店で、フライを中心に豊富なセットメニューが揃っている。新富町で所用を済ませた帰りに久しぶりに前を通り掛かり、たまには寄ってみるかと店頭の品書きを見ると、どのメニューも千数百円から2000円以上するものばかり。あれから10余年、バブルの末期で羽振りがよかった? 当時に比べ、今では残業も減り家族持ちの身の上。昼飯にそう贅沢はできないが、懐かしさに背中を押されて思い切って入ってみることにする。昼時は周囲に勤めるサラリーマンの行列ができる有名店で、13時をやや過ぎた今は店内に数組の客が残っているのみ。昔のままの、高さがあるカウンターに座ってメニューを一覧すると、見覚えのある品が多く残っているのにうれしくなってしまう。まだ20代前半のガンガン働いてはどんどん食べていたあの頃、夜食によく頼んでいた「洋食弁当」を探してみたらあった! ハンバーグにカツ、海老フライ、カニコロッケの4種がつき、ちょっと量が多そうだが、空腹と懐かしさに押されて頼んでみることにする。
カウンターからは厨房が丸見えで、頑固な洋食職人といった感じの親父がふたり、淡々と調理にかかっている。左の緑のタオルを頭に巻いた親父はフライパン、右の丸刈りの親父はフライヤーに付いていて、すぐ目の前のカウンターに付くやや若い人が盛り付け担当のよう。それぞれからできあがった揚げ物や焼き物を手際良く器に並べ、ソースをかけたりつけ合わせをのせたりと仕上げにかかっている。自分が注文した分らしい弁当箱が出てきたので、盛り付けの人の手順を見ていると、ご飯とつけ合わせのパスタを詰めるとすぐ、丸刈りおやじから海老フライとカツが揚がってきた。弁当箱に並べてさっとタルタルソースをかけると同時に、今度は緑タオルのおやじから焼き上がりのハンバーグが到着。パスタの上にのせてデミグラスソースがかけられると、「お待ちどう様」と差し出された。それぞれのタイミングばっちり、手際のいいこと。
当時は軽く平らげていたこの弁当、改めて見ると揚げ物が箱からはみだすほど満載で相当なボリュームだ。中がとろりとクリーミーなカニコロッケ、海老がブツリと瑞々しく揚がっている海老フライ、肉の柔らかなカツと、どれも外はカラッと香ばしく、中身は素材の豊かな味がそのまま生きている。揚げ上がりが軽いので、さっくりしつこくなく食べられるのも昔のまま。ハンバーグはデミグラスソースの酸味がほど良く、さっぱりと味覚が変わってより食が進む。好みのものがちょっとずつ詰まっているので、まるで「おとな向けのお子さまランチ」である。
空腹のせいか懐かしさのせいか、案ずることなく平らげると、いつの間にか店内は遅い昼ご飯のサラリーマンで満席になっている。「Aセット」「Bセット」「カニコロ」「メンコロ」とフロアと厨房の間に符丁の注文が飛び交うと、目の前の器にフライやソテーなどが盛り付けられ、ちょっと目移りがしてしまう。支払いをしていると「はいオイスター1枚」の声も。カキフライのシーズン到来のようで、改めてまたお昼に食べにくるか。好物のカキフライのためなら、数日の節約生活もなんのその、である(2005年10月7日食記)
銀座のはずれにある洋食の老舗「煉瓦亭」もその頃よく訪れた店で、フライを中心に豊富なセットメニューが揃っている。新富町で所用を済ませた帰りに久しぶりに前を通り掛かり、たまには寄ってみるかと店頭の品書きを見ると、どのメニューも千数百円から2000円以上するものばかり。あれから10余年、バブルの末期で羽振りがよかった? 当時に比べ、今では残業も減り家族持ちの身の上。昼飯にそう贅沢はできないが、懐かしさに背中を押されて思い切って入ってみることにする。昼時は周囲に勤めるサラリーマンの行列ができる有名店で、13時をやや過ぎた今は店内に数組の客が残っているのみ。昔のままの、高さがあるカウンターに座ってメニューを一覧すると、見覚えのある品が多く残っているのにうれしくなってしまう。まだ20代前半のガンガン働いてはどんどん食べていたあの頃、夜食によく頼んでいた「洋食弁当」を探してみたらあった! ハンバーグにカツ、海老フライ、カニコロッケの4種がつき、ちょっと量が多そうだが、空腹と懐かしさに押されて頼んでみることにする。
カウンターからは厨房が丸見えで、頑固な洋食職人といった感じの親父がふたり、淡々と調理にかかっている。左の緑のタオルを頭に巻いた親父はフライパン、右の丸刈りの親父はフライヤーに付いていて、すぐ目の前のカウンターに付くやや若い人が盛り付け担当のよう。それぞれからできあがった揚げ物や焼き物を手際良く器に並べ、ソースをかけたりつけ合わせをのせたりと仕上げにかかっている。自分が注文した分らしい弁当箱が出てきたので、盛り付けの人の手順を見ていると、ご飯とつけ合わせのパスタを詰めるとすぐ、丸刈りおやじから海老フライとカツが揚がってきた。弁当箱に並べてさっとタルタルソースをかけると同時に、今度は緑タオルのおやじから焼き上がりのハンバーグが到着。パスタの上にのせてデミグラスソースがかけられると、「お待ちどう様」と差し出された。それぞれのタイミングばっちり、手際のいいこと。
当時は軽く平らげていたこの弁当、改めて見ると揚げ物が箱からはみだすほど満載で相当なボリュームだ。中がとろりとクリーミーなカニコロッケ、海老がブツリと瑞々しく揚がっている海老フライ、肉の柔らかなカツと、どれも外はカラッと香ばしく、中身は素材の豊かな味がそのまま生きている。揚げ上がりが軽いので、さっくりしつこくなく食べられるのも昔のまま。ハンバーグはデミグラスソースの酸味がほど良く、さっぱりと味覚が変わってより食が進む。好みのものがちょっとずつ詰まっているので、まるで「おとな向けのお子さまランチ」である。
空腹のせいか懐かしさのせいか、案ずることなく平らげると、いつの間にか店内は遅い昼ご飯のサラリーマンで満席になっている。「Aセット」「Bセット」「カニコロ」「メンコロ」とフロアと厨房の間に符丁の注文が飛び交うと、目の前の器にフライやソテーなどが盛り付けられ、ちょっと目移りがしてしまう。支払いをしていると「はいオイスター1枚」の声も。カキフライのシーズン到来のようで、改めてまたお昼に食べにくるか。好物のカキフライのためなら、数日の節約生活もなんのその、である(2005年10月7日食記)
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