「名物にうまいものなし」という言葉がありますが、これは観光客向けの料理やみやげものを指しているようです。どこどこへ行ったらぜひ食べなきゃといった感じの、ガイドブックに載っているおススメ料理って、大体が「よそ者」を意識しているよう。名物ということで旅の印象には残るが、よく考えてみると味の方はイマイチだったってことも多い。値段の方も「観光客プライス」で高めと、名物といっても地元の人はそんなにしょっちゅう食べているのではないのでしょう。
そんなよそ行きの料理に対して、地元の人が普段食べている、その土地に真に根付いた味覚が近頃注目されています。といってもブランド魚や銘柄肉、伝統の郷土料理といったご馳走とは違い、庶民的で安価ないわゆる「B級グルメ」が中心。よく、山間部の温泉の夕食に地元特産のキノコや川魚ではなく、マグロや鯛の刺身が出た、といった話がありますが、「都会から来る人に、自分たちが普段食べているようなものを出すのは恥ずかしいから、都会の人が喜びそうな『ごちそう』を出す」というのが地方の人の心理とか。そんな訳で今までは知る人ぞ知る程度だった庶民の味が、このところの「ローカルフード」ブームで一気に露出が増えてきました。
かつては御当地グルメといえば思い浮かぶのはラーメン程度でしたが、最近では名古屋グルメや讃岐うどんのブレイクで注目。それに続けとばかり、富士宮や横手の焼そばで町起こし、米軍基地のある佐世保のアメリカンスタイルのハンバーガー、札幌ではラーメンにとって変わったスープカレーなど、地域も料理もバリエーションがかなり豊かになったようです。変わり種もお目見えし、埼玉・行田のフライ(小麦粉をといて鉄板で焼いてソースで頂く。揚げ物ではない)、長崎のトルコライス(洋食盛り合わせのようなもの。トルコ料理とは関係ない)は、名前を聞いただけでは中身が想像もつかない?
本書ではそれぞれの料理の簡単な背景が載っていて、「なぜこの土地にこんな料理が?」という理由が分かって面白い。執筆陣も日本のおでん研究の第一人者である新井由己氏、「タコヤキスト」の熊谷真菜さん、さらにコラムニスト泉麻人氏、庶民文化の町田忍氏など、サブカルチャー本ならではの個性的ラインナップ。食べに行くならお勧めの店ガイドもいくらか載っていますが、役立つのは巻末のオフィシャルサイトと関連ガイド本の紹介ページ。観光課や商工会、元締めの組織などのホームページや食べ歩きマップは気合いが入ったつくりのものが多く、現地に食べに行く際にはとにかく役立ちます。
味本旅本3連発を書いていたら、行きたいところ、食べたいものがあれこれ出てきてしまった。北海道最果て、日本最東端の根室名物「エスカロップ」とは一体何だろう? 新潟の「イタリアン」とはどんなもんだろう? 仕事もひと段落したことだし…。
◎『日本全国ローカルフード紀行』 六耀社刊 本体1500円+税
そんなよそ行きの料理に対して、地元の人が普段食べている、その土地に真に根付いた味覚が近頃注目されています。といってもブランド魚や銘柄肉、伝統の郷土料理といったご馳走とは違い、庶民的で安価ないわゆる「B級グルメ」が中心。よく、山間部の温泉の夕食に地元特産のキノコや川魚ではなく、マグロや鯛の刺身が出た、といった話がありますが、「都会から来る人に、自分たちが普段食べているようなものを出すのは恥ずかしいから、都会の人が喜びそうな『ごちそう』を出す」というのが地方の人の心理とか。そんな訳で今までは知る人ぞ知る程度だった庶民の味が、このところの「ローカルフード」ブームで一気に露出が増えてきました。
かつては御当地グルメといえば思い浮かぶのはラーメン程度でしたが、最近では名古屋グルメや讃岐うどんのブレイクで注目。それに続けとばかり、富士宮や横手の焼そばで町起こし、米軍基地のある佐世保のアメリカンスタイルのハンバーガー、札幌ではラーメンにとって変わったスープカレーなど、地域も料理もバリエーションがかなり豊かになったようです。変わり種もお目見えし、埼玉・行田のフライ(小麦粉をといて鉄板で焼いてソースで頂く。揚げ物ではない)、長崎のトルコライス(洋食盛り合わせのようなもの。トルコ料理とは関係ない)は、名前を聞いただけでは中身が想像もつかない?
本書ではそれぞれの料理の簡単な背景が載っていて、「なぜこの土地にこんな料理が?」という理由が分かって面白い。執筆陣も日本のおでん研究の第一人者である新井由己氏、「タコヤキスト」の熊谷真菜さん、さらにコラムニスト泉麻人氏、庶民文化の町田忍氏など、サブカルチャー本ならではの個性的ラインナップ。食べに行くならお勧めの店ガイドもいくらか載っていますが、役立つのは巻末のオフィシャルサイトと関連ガイド本の紹介ページ。観光課や商工会、元締めの組織などのホームページや食べ歩きマップは気合いが入ったつくりのものが多く、現地に食べに行く際にはとにかく役立ちます。
味本旅本3連発を書いていたら、行きたいところ、食べたいものがあれこれ出てきてしまった。北海道最果て、日本最東端の根室名物「エスカロップ」とは一体何だろう? 新潟の「イタリアン」とはどんなもんだろう? 仕事もひと段落したことだし…。
◎『日本全国ローカルフード紀行』 六耀社刊 本体1500円+税