以前東京駅のチキン弁当を取り上げた際、ターミナルからの旅立ちごはんの意義について綴った。旅立ちに当地の名物駅弁をいただくことは、旅情を盛り上げる一大セレモニーでもある。最近は駅のホームにも、チェーンのコンビニが見られるが、リーズナブルでもノリ弁当や手巻きおにぎりでは、日常ごはんの延長っぽくて、旅の始まりの盛り上がりに欠けるように思える。
夜行列車での旅立ちは、翌朝まで何も買えない強迫感があり、酒や肴を必要以上に買いすぎてしまう。今夜のサンライズ出雲の旅でも、窓枠は酒肴の大名行列状態となる中、主役はやっぱりご当地弁当をチョイス。深川弁当は、構内フードコートにあるつきじ喜代村の一品で、ご飯の上をアサリがビッシリ埋め尽くした迫力の見た目に惹かれ、ビジュアル買いした。
相模川を渡ったあたりで、ビールとともに弁当を開いたとたん、てんこ盛りのアサリがこぼれんばかり。水管がシコッ、パンパンに丸い身がプリッと、鮮魚卸売も手掛けるだけにアサリの質はさすがだ。磯香と、しっかり効いた砂糖甘さが、同じ下町名物の佃煮を思い出させる。
酒も進むが、錦糸卵に笹がきゴボウとかっ込むと、ご飯とも相性バツグン。そもそも深川めしは、気短な江戸っ子がアサリのすまし汁を飯にぶっかけて食べたのがルーツとか、大工の弁当だったアサリ混ぜご飯とか言われている。下町に根付いた所以からして、旅立ちごはんにはもってこい。でも江戸期の労働めしなのなら、実は今で言うホカ弁ノリ弁の範疇なのかも?
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