ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカル魚でとれたてごはん…室蘭 『旬菜ダイニング福わらい』の、クロソイ料理各種

2015年06月27日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
室蘭市の魚・クロソイを味わうべく、「旬菜ダイニング福わらい」を17時過ぎに再訪。なんとテーブル席に予約の札が置かれ、「鮮魚店の方の紹介ですね」とていねいに案内されることに。急な予約ながら好対応に恐縮しつつ、席に着くと「本日の室蘭産クロソイ菜譜」と記された品書きが目に入る。室蘭屈指の本格中華の店らしく、4種の料理はいずれも中華の技法を駆使したもので、ひととおり試したい誘惑に駆られてしまう。

が、まだディナータイムが始まって間もないところで、希少で高価なクロソイを独占するのも気がひける。締めにクロソイの焼きそばをいただくので、酒の肴の一品をおまかせで、とオーダー。すると中ジョッキに合わせて、広東風蒸し物がセレクトされた。ホロリとほぐしてひと口いくと、食感の柔らかく優雅なこと。皮目は軽くねばり、身はプリッと踊り、舌ざわりはシルキーな気品ある身である。ソースは小魚からとった魚露(ユーロウ)を使っており、塩っ気が強いがしっかりからめても負けないほど。身とネギとソースをレンゲで一緒にいくと、それぞれが抱合して味に膨らみが出てくる。

追加の甕出し紹興酒を運んできた姉さんに、これは美味いと感嘆すると、「味がしっかりしていて、白身の割に歯ごたえシャッキリでしょう。だからしっかり加熱して味付けの濃い中華料理にもぴったりですよ」と嬉しそう。クロソイは淡白ながら身の味が強靭なため、和風のみならず中華や洋食の素材にも向いている。そのため、味わえる店のジャンルが幅広いのも特徴で、刺身や焼いたり煮たりするほか、独自性のある料理にも出会えるのだとか。

ならば料理一品だけではもったいないとばかり、勢いにのって唐揚げも追加だ。揚げたて熱々のは衣がパリリ、身がサラリ皮目がねっとりと、うっとりする食感の三重奏。揚げたことで白身の旨さが活性化して封じられるから、香りの膨らみがより豊満になったよう。つけダレは唐辛子に香辛料や香味野菜を加えた紅油(ホンユー)で、すっぱ辛い中華のオリエンタルなテイストも、やはり白身の味がしっかり受け止めている。

二品進んだところで清水鮮魚の話を思い出し、料理のクロソイは室蘭の養殖ものか聞いたら、地元で水揚げの天然ものとのこと。追直漁港での養殖はまだ生産が安定しておらず、出荷量が限られるためかえって値段が高いという。とはいえ天然物の水揚げも海況や漁獲状況次第なところもあり、総じて供給が不安定なのが実情らしい。市の魚としてPRしている割に供する店の情報が希少なのは、そうした背景からなのだろう。「昼過ぎに予約して叶ったのだから、今日は運が良かったね」と姉さんが笑っている。

幸運の締めくくりの焼きそばも広東風の柔らか麺で、皮付きのクロソイの切り身が三切れのっている。ほぐして麺とガバッとすすると、シンプルな塩味のためするする入ってしまう。干しエビにもやし、キクラゲ、青梗菜とともにすすっても、瑞々しさがしっかり光るのはさすがか。もう一品の四川風辛子煮まではたどり着けず、これにて満腹。これらの料理に使われたクロソイは30センチほどので、三品で1尾弱いただいたことになる。漁獲がある日は、一匹丸ごと蒸したり海鮮サラダ風にしたりと、料理のバリエーションも増えるという。

雨にたたられた室蘭で、地球岬も行けず工場夜景も見られなかった中、ラッキーで味わえたクロソイは黒い魚体に秘めた白くきらめく華、さながら漆黒の室蘭港に煌き立つ工場夜景の灯のごとしか。程よく酔っての帰り道、そんなご当地所以の褒め言葉が浮かんできた。回った酔いのせいか、水族館でのヤツのあの面構えも、美味いぞどうだ! とドヤ顏に思えてきたりして。

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