突然、天からお達しがあったかのように、「あの店のアレが食べたい!」とピンと来て、頭の中が一色に。そんな食欲のわき方、経験があるのでは。しかしながら、お目当ての店に入れなかった時の落胆といったらない。「孤独のグルメ」では、五郎さんがハマったハヤシライスの店が廃業していて、代わりの店をなかなか決められないシーンがある。挙句迷ったら豪華に、とステーキを選んだものの「今日はこの味が横滑りしていく」と心のつぶやき。こういう喪失感は、高価な品で代替しても埋められないことを、軽妙に言い得ている。
先日の忘年会の後、帰りの電車内で締めラーに「磯子家」のラーメンが、ピンと来てしまった。家系のとんこつ醤油に中太麺は、塩っ気と炭水化物を体が欲する、飲んだ後に最適。頭の中ががそれ一色となり、駅から足早に店に向かったが、同じ嗜好らしき酔客が店をぐるりと囲むように、長蛇の列が続いている。
深夜の寒空でこの行列はご勘弁、と、酔い覚ましを兼ねてほかの店を探しながら、国道16号線沿いを歩き出す。チェーン系などやっている店はパラパラあるが、磯子家のあの味がロックオンされた状態のため、なかなか食指が動かない。せめて「家系」といきたいけれど、付近には磯子家のないのは、あいにく熟知している。
のはずが、環状線との交差点の手前で、とんこつ醤油の香りとともに「いちばん家」との屋号を見つけた。聞くと10月にオープンしたばかりだそうで、家系とあればありがたく締めラーにさせていただく。醤油ラーメンをオーダー、麺はほぼ太麺の、がっしりした食べ応え。スープは白っぽい見た目の通り、とんこつ臭がかなり強烈で、背脂も浮きかなり手強い。家系というか、麺太め脂多めの博多とんこつラーメンといった感じか。でも五郎さん節でいえば「まずくない、決してまずくないぞ」の、ハマるとやみつき系のパンチ力である。
物差しになっていた「磯子家」の味に比べ、脂も濃さも太さも優り、おかげで気持ちの「横滑り」もなくご馳走さま。ピンときた料理の代替には、同ジャンルのより個性が強いものが、ピタッとハマるのかも知れない。ところでこのラーメンは強力ゆえ、ピンとくる好みになるかは、もう少し酔いどれで通ってみての評価かな?
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