ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

町で見つけたオモシロごはん23…横浜・神奈川新町 『なりこま家』の、丼から肉がこぼれるカルビ丼

2006年01月04日 | ◆町で見つけたオモシロごはん
 明日から仕事始め、正月休みも今日で終わりの方も多いのではないでしょうか。ブログも内容、更新頻度を正月モードから復帰、今日から通常の内容とペースで進めていきます。まずはこんな話から。読んで頭の中からスタミナをつけてみてください(?)。

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 猛烈な空腹に襲われた時、丼で飯をしこたま食べまくりたい衝動に駆られることがある。おかずは何といっても肉。焼肉屋でカルビに地鶏、豚トロをじゃんじゃん焼いてはご飯をどんどんおかわり、もいいがひとり飯にはちょっと贅沢か。むしろ思い立ったら食べられる牛丼やカルビ丼、焼肉丼のような肉載せどんぶりこそ、そんな時に似合うような気がする。カウンターに腰掛けて黙々と肉を食らい飯をかきこむ、これぞ働く男の飯。ファーストフードの牛丼屋が受けているのは、ボリュームに加えてそんなシンプルさと気取りなさが受けているのかもしれない。

 そして多忙を極めたこの日も、昼食を食いそびれてひとり彷徨う午後3時。お気に入りのラーメン屋でラーメン&ライスをドン、といき、底抜けの空腹を埋めてから次の仕事へ向かおうと、横浜駅から京浜急行で3駅目の神奈川新町駅で下車した。第1京浜の沿道にはラーメン屋をはじめファミレスやチェーンの回転寿司などが集中、横浜中央卸売市場が近いせいか、トラックの運転手向け定食屋などしっかり食える店もあり、歩くにつれ空腹ゆえの迷いが生じてくる。加えて焼肉屋に「ホルモン」「ジンギスカン」の看板を見たら、胃袋はラーメンライス程度ではもう収まらない。いつものラーメン屋の前をするりと通り越し、数軒となりの『なりこま家』へ。とにかく量をたっぷり、しかも安く食べたいなら、界隈でこの店に並ぶところはない。

 赤を基調にした派手な店頭には、定食やカレーに丼物などメニューがバンバン張り出され、外観からして迫力が感じられる。店内に入ったとたん肉の焼ける音とともに、香ばしい匂いが漂ってくるのが実にいい。中は厨房を囲むようにカウンターがぐるりと配置され、チェーンの牛丼屋に似た感じ。どこかうらぶれたムードで、何だか場末のドライブインのような雰囲気でもある。お客はサラリーマンや学生が中心で、中には工事現場の作業員や警備員の姿も。ほとんどがひとり客で、下を向き黙々と食べている後ろを通って、カウンターの奥の席へ落ち着いた。壁の張り出されたメニューに目をやると、「ボリュームあります」と書かれたカツカレーライス、「味と量で勝負」とあるカルビ焼肉定食など、これまた迫力ある添え書きがすきっ腹をなかなかそそってくれる。

 ところが目の前を運ばれていく料理はいずれも、添え書きの言葉をはるかに越えた内容に驚くばかりである。向かいの席のカルビ定食は、数枚の肉が折り重なるようにどっさり盛られ、隣の席の手作りメンチ&コロッケ定食は、丸々と分厚いコロッケがごろり。そして店自慢のハンバーグ定食には、牛肉100%の大きいのが何と3つものっている。量ばかりでなく、ハンバーグは「やきあがりまで10~15分かかります」とあるなど、味のほうも本格的。さらに驚くのは値段でどれも400~500円程度が中心、一番高いカルビ焼肉定食で700円という破格の安さだ。この店、実は経営主が精肉卸加工業者で、その利点を生かした量と値段が看板という訳なのである。

 たっぷりの定食メニューもいいが、空腹にガツガツいくなら丼物がいちばんだ。ここは店の看板メニュー「カルビ丼」で決まりである。480円という安さにさらにプラス100円の大盛りにしたら、丼から盛り上がりこぼれそうなほどに大盛りの肉、さらにサラダもたっぷりなのがありがたい。戦いを挑むように、丼めがけていざ突撃。肉は牛丼のよりずっと厚く、ふわり柔らかいところや歯ごたえがあるところ、厚手のに細切れと様々なのが精肉加工店直営風か。その分食感が多彩で、ああ肉を食っているという満足感があふれてくる。甘めのタレが肉によく染みガンガンかき込めるウマさ、おかげでたっぷりの飯もじゃんじゃん減っていく。

 半分ほど食べてから卓の上のソースをたっぷりかけ、牛丼風に? 七味もかけてさらにガシガシ。ほかの客と同様に、物も言わずわき目も振らず、ひたすら肉と飯をかき込み続ける。ちょっと前にお茶漬けでこんなCMがあった気がするが、極めつけの空腹を埋める時は本能むき出し、欲望のおもむくままといった感じになるのだろうか。おかげで丼が空になる頃にはお腹も心もすっかり満たされ、気分良く店を後にする。駅近くの吉野家の前を通ると、「すき焼き定食」のポスターを発見。最近の吉野家の人気メニューで、さっきのカルビ丼と同じ値段だが、迫力と破壊力は断然勝負あり、である。(2005年12月20日食記)


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