ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカル魚でとれたてごはん…那覇・牧志公設市場の、沖縄近海の魚介

2016年08月27日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
市場は町の様々な姿を映すといわれる。那覇の市街にもいくつもの市場があり、その立地ごとに各々の役割を担っている。南国独特の品揃えにウチナー気質のフレンドリーさと、内地のそれとはかなりカラーが異なるが、町の台所なのは同様。市民や料理人や旅行者が行き交う、ご当地の食文化の発信地なのは同様で、場内を歩き回り店のオバァ(おばちゃん)と話しながら買い物を楽しめば、ゆるい島時間が流れるローカルな気分にどっぷり浸れること、請け合いである。

牧志公設市場は「公設」と唄うからして、地元の食生活を担う小売市場の役割を担っている。それ以上に「見どころ」でもあり、観光客が目当てとする市場でもある。国際通り中ほどのむつみ橋交差点から延びる、「市場通り」のアーケードに足を踏み入れると、沖縄みやげや食品雑貨、アクセサリー、琉球ガラスといったみやげ物屋がずらり連なり、呼び声が実に賑やか。那覇屈指の観光スポットである国際通りが最寄りなだけあり、どこか東南アジアの国々の観光マーケットを思い出させる活気に、何とも圧倒されてしまう。

しばらくしてちょっとした広場の右手に、「那覇市第一牧志公設市場」の看板が目に入る。通りに面していくつかの入り口があり、北側からから入るといきなり、グラサンした豚のチラガー(顔の皮)が出迎え。見入っていたら「記念写真撮るかい?シャッター押してあげるよ」と店の人から声がかかり、観光地色の濃さがうかがえる。市場の北寄りは精肉コーナーになっており、「もぎたて」のような生々しい豚足やソーキ、塩漬け豚肉のスーチカー、ほぼ塊の三枚肉(バラ肉)ブロックなど、あらゆる部位がバラされて積まれ並ぶ様は圧巻だ。最近人気のあぐー豚に石垣牛といった、銘柄肉の宣伝も目立つ。

地元の買い物客よりも、スマホのカメラを片手にした観光客が多く行き交うこの市場、成り立ちはもちろん庶民の台所としてである。沖縄が本土復帰した1972(昭和47)年に建設され、以後40年にわたり戦後の沖縄の食を支えてきた。現在、場内の店舗は100を数え、うち4割が鮮魚店と精肉店。県産の魚介や畜産品、野菜をはじめ、水産加工品に調味料まで沖縄の食材はすべて揃い、内外へ向けた沖縄の食文化の発信地としての役割をなお、担っている。先ほどの豚の顔とか熱帯魚のような鮮魚とか、キャッチーな品々が多いこともあり、テレビや雑誌の沖縄特集の御用達にもなっているようだ。

中央の通路を越えると一転、水産コーナーとなり、観光客の人通りが増え呼び声も激しく賑やかになる。お客のお目当ては、色鮮やかに店頭を彩るトロピカルな魚たち。美ら海水族館の「サンゴの海」水槽で悠々泳いでいたのが、氷敷きの品台にカラフルに陳列され、記念写真のスポットとなっている。頭をきれいに揃えてみたり、群泳してるように配置したりと、見せ方を工夫している分、アート作品のようにも見えたりして。どの魚にも沖縄言葉と標準的和名を併記した札が添えてあるから、眺めるだけで楽しく勉強になる。これまで料理屋で味わった魚の復習にもなるし、店の人にあれこれ尋ねながら散策してみよう。

オヤジさんによると、派手な色にかかわらずこれらの魚は全部白身で、いずれも沖縄の近海でとれたものという。鮮魚店で売っている以上、もちろんいずれも食用だが、ずんぐりしたイラブチャーのターコイズブルー、目がぱっちりしたアカマチ(ハマダイ)のルビーのような紅色、背がレモンイエローのビタロー(ヨスジフエダイ)、深紅のバラ色に斑点のアカジンミーバイ(スジアラ)などの派手派手さを見てしまうと、次に食べる機会があるとき尻込みしてしまいそうな。県の魚で料理屋の定番である大衆魚・グルクンも、淡い桜色がきれいだ。

貝類や甲殻類を扱う店では、大振りだったり奇妙な形だったりするエビ・カニ・貝類が並び、鮮魚店というよりは水族館の亜熱帯コーナーか観賞魚店の様相である。サザエの親分みたいな夜光貝、オブジェのようなシャコガイ、マングローブガニと呼ばれるガザミ(ワタリガニ)、ずんぐりしたセミエビなど。驚いたのはその隣の店で見かけたアバサー(ハリセンボン)で、メロンぐらいの大きさはある。地元では汁物のタネにするらしく、まだまだ大きいのもいるそう。精肉コーナーのチラガーに負けず、こちらもグラサンをかけて観光客にアピールしている。

写真を撮らせてもらったり、質問にいろいろ答えてくれるのが、観光客向けの市場のいいところだが、そのあとの売り込みが激しいのもお約束。魚談義が終わると待ってました、とばかり商談を仕掛けられるのが、なかなかシビアだ。「昼ごはんはまだ?これ買ってってよ」「身はバターで焼いて頭とアラは汁にすれば、定食になるよ」と、みやげ用よりも買って料理してもらうように、との勧めが主なのが面白い。買う際に店に調理代を払えば、2階で提携する食事処で料理してもらえるフォーマットになっており、旅行者には人気になっているのだとか。

とりあえずロケハン、とばかり2階に足を伸ばしてみたら、 オープンなフロアに店舗がざっくり区割りされ、食堂街というよりはフードコート風に見える。客は丸テーブルを囲み、くだんの魚料理をおかずに麺やごはんものをグループでつついており、台湾か香港の大衆食堂で見たような光景を思い出す。試してみるのもいいが、食材は一匹単位の購入となり、調理代を含めるとひとりだと結構高くつきそうだ。

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