ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカル魚でとれたてごはんbyFb…南三陸町・泊浜のカキ

2013年05月08日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん

 炊き出しで訪れた南三陸町は、震災で被災する前は漁業の盛んな地だった。サケやサンマなど沿岸漁業の漁獲に加え、全国区のブランド魚介として高評価なのが、ワカメとカキだ。ワカメは三陸ワカメの名で知られ、肉厚で歯ごたえの良さが特徴。カキも都市部の有名レストランが産地指定買いするほど、質の良さには定評があった。栄養価が高い湾育ちゆえの品質だっだが、震災時に津波で船や加工施設が流失。未曾有の損害から2年近く経ち、昨年秋頃から少しずつだが養殖が再開している。漁獲量は以前とは比べ物にならないものの、漁業復興に向け少しずつ歩み出しているようだ。

 訪れた泊浜も、ワカメにカキ、ホタテの養殖が盛んな漁村だが、ワカメは少しずつ戻ってきている一方、カキとホタテはかなり厳しい状況らしい。被災で漁業者が減ったのに加え、失った設備への投資問題が、重くのしかかる。加工施設を再建するには数千万円のお金がかかるのに、水揚げがないから用意できない。どちらも評価されたブランドだから、続けたいのだけど… との言葉に苦渋の念が伝わり、実にやるせない。

 比較的回復傾向のワカメの話を伺っていたら、売り物じゃないけどどうですか、とバケツ一杯のカキが登場した。殻をむいた身を何もつけずにツルン、といくと、はちきれんばかりにプリプリの身が滋味の塊。潮の香りと乳製品香で、魅惑的かつ元気が出る旨味に、ひとついただいただけでもう言葉が出ない。

 さらに大鍋に無造作にゴロゴロ放り、ふたをして5分ちょっと火にかけたら、上等な蒸しガキのできあがり。泡を吹いているのを取り出し、湯気があがっているうちにホクホクと口へ。香りが穏やかな分、全面に押し出た甘みに圧倒され、黙々と三つ、四つから数えた記憶も定かでないほど。さらに、旨味を完璧に封じ込めたカキフライも合わせ、気がつけば数ダースのカキを平らげてしまったような。

 泊浜の港は国指定の避難港のため、比較的早期に整備されたという。しかしながら、個人の漁業者では応じきれない諸問題も多く、以前の通りの漁業実績に、とはなかなか簡単にはいかないらしい。そんな中で我々外部の人間ができることは、当地の優れた味覚に感動し、忘れないことなのかも。南三陸のブランド魚介の再興を、山積したカキ殼を前に改めて願って止まない次第だ。



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