ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

ローカル魚でとれたてごはん…洞爺湖 『とうやMarche』の、ひめます定食

2015年06月26日 | ◆ローカル魚でとれたてごはん
洞爺湖を周遊する遊覧船の眺めからは、この湖のアイヌ語の語源がよく分かる。トー(湖)ヤ(丘)すなわち丘に囲まれた湖との意で、出港した温泉街を振り返れば背後に峻鋭な昭和新山から大有珠、明治新山まで、湖を囲うように山並みが連なっている。「蝦夷富士」こと羊蹄山も望めるだが、あいにくの曇り空で見ることができない。

湖に浮かぶ観音島の先の瀬戸を抜け、最大の大島を経て引き返す道中、湖に生息する魚の説明が船内に流れる。ヒメマス、ワカサギ、コイ、ウグイの中でも、特にヒメマスは洞爺湖の名物なのだとか。釣りや刺し網で漁獲され、漁期は6月と12〜3月に限られるというから、ちょうど走りの時期である。午前に訪れた大沼公園では聞かなかった種なので、湖魚料理を続けて味わうのも面白そうだ。

桟橋から坂をやや登ったところにある「とうやMarche」は、洞爺湖地場産品協同組合の直営店でまさにピッタリな店。品書きには当地で肥育している、「とうや湖あか毛和牛」の料理が目を引き、ほとんどのお客がオーダーしている。やや誘惑されつつ、丼やステーキやハンバーグのページをめくっていくと、その名もズバリひめます定食を発見。洞爺湖産のヒメマスほか、米や野菜も地場産、味噌汁のワカメまで噴火湾産と、とことん地物にこだわった定食のようである。

ヒメマスを指すアイヌ語「カバチェック」の「平たい魚」の意味通り、運ばれてきた皿にはすっきりスマートなのが2尾素揚げされて並んでいる。箸でほぐすと、淡い紅色の身がスッと細長くついている。脂はほとんどなく、純粋な赤身の味が湖水のごとく清らかである。塩と醤油が添えてあり、一尾目はあっさりと塩でいただいたら、塩鮭の味が思い出されてこれはビールが進む。

ヒメマスは名の通り、サケマスの仲間である。原種はベニザケで、海に下らずに湖水のみで育つ「陸封型」のものが、ヒメマスに分類される。ベニザケはレッドサーモンの別名の通り、鮮やかな紅色の身肉とごってりのった脂が特徴。オホーツク海からロシアにかけての寒い海を回遊する、ワイルドな生態のせいだろう。が、片や周囲の山々に文字通り封じられ、澄み切った湖水により育まれたヒメマスの、箱入りらしい精悍さもなかなかなものだ。

ご主人によると、料理に用いるヒメマスは、釣りで漁獲したのを氷水で保管、真空パックしたもので、刺身にできるほどの鮮度という。味付けなしでシンプルに揚げてあるから、素材そのままの味が引き出された料理といえる。さらに味わったヒメマスは何と、今朝とれたものをそのまま料理しているそう。氷水に漬けようとしたら、ちょうどオーダーしてくれたからね、と笑っている。

二尾目を箸でさばいたら、茶色い脂がややのっていたので、醤油をかけまわすと焼きザケ風に。身に染みた醤油がほっこり香ばしく、こちらはごはんのおともの味である。揚げた皮がパリパリと、香り立ち食欲をさらにあおる。地元食材のご飯とサラダと味噌汁も、残さずいただいてごちそうさま。魚どころの北の大地にて、思わぬ湖魚探訪となった、道南の二湖のハシゴ旅である。

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