ウマさ特盛り!まぜまぜごはん~おいしい日本 食紀行~

ライター&編集者&散歩の案内人・上村一真(カミムラカズマ)がいざなう、食をテーマに旅をする「食紀行」を綴るブログです。

旅で出会ったローカルごはん16<北海道編>…激辛なのに体にいい 札幌新名物スープカレーを汗だくで頂く

2005年11月24日 | ◆旅で出会ったローカルごはん
 二条市場でウニやイクラを買ってしまうと、昼食をとる予定の店が開店するまで特にすることがない。狸小路にあるコーヒーショップで小一時間ほど時間を潰して、さっきホテルから歩いてきたアーケードを再び引き返す。最終日の昼食、この旅最後に頂くローカルフードはスープカレーだ。目指す「カレー&ごはんカフェOuchi」は通りの西外れにある小さな店で、控えめに掲げられているだけの店の看板にあやうく見過ごすところだった。開店直後で、木の扉を開けて店に一歩入ると仕込み中なのか、香辛料の香りがすっきりと漂っている。暗めに落とした照明に、凝ったデザインのテーブルセットなどインテリアは個性的、カレーショップというよりカフェのようなしゃれた雰囲気である。

 小さなブックレットのようなメニューをめくると、スープカレーはベジタブルときのこ、鶏、角煮の4種の具に、濃さが違う「さらさら」と「とろとろ」の2種のルーが用意されているとある。チキンカレーのさらさらを選んでから、次に辛さの選択。マイルドから始まりレギュラー、ホット1~4の6段階の辛さが設定されていて、辛めをオーダーしたいと店の人に話したところ、「さらさらはとろとろより1.5倍辛いです」とのアドバイス。熟考の上、3番目にあたる「ホット1」に決定。待ちながら改めて店内を見回すと、なぜか「E.T」のオブジェが目立ち、例の表情でこっちを見ている大きな人形と目が合ってしまった。

 スープカレーはこのところ、札幌の新しい地元の味として知られるようになり、今や札幌ラーメンに匹敵するほど旅行者の関心が高まっている。そもそも北海道は古くからカレーが食生活に根付いており、開拓時代に米食文化の普及の一端を担っていたとか、札幌農学校のクラーク博士が生徒への栄養補給のために推奨したとか、その起源には諸説唱えられている。スープカレーが話題になってきたのはここ数年だが、誕生したのは30年ほど前と意外に古く、薬膳を意識した独特のスタイルが定着して次第に広まっていったという。サラサラのルーにスパイスを強めに効かせ、具は野菜や肉など道産の食材を主に使用。素材の味を引き出す調理法で、種類豊富かつ豪快に使うのが特徴だ。店によって、ベースはインドをはじめスリランカ、タイ、インドネシア、欧風など様々で、ラーメン同様に食べ比べをする愛好家も増えてきているとか。ラーメンの食べ過ぎは油分や塩分、炭水化物の取り過ぎにつながり体によくないが、薬膳カレーなら代謝が良くなったり、薬効があったりして健康にいいのだろうか。

 しばらくして運ばれてきたカレーはラーメン丼のような鉢に入っていて、ご飯だけ別皿になっている。丼から覗く大振りの鶏もも肉が迫力ものだ。チキンカレーでは珍しく、煮込むのではなく揚げてあり、骨を持ってひと口かぶりつくと皮がバリッ、肉はしっとりほろりとジューシー。半分ほどかじって、残りはばらしてスープに浸して後のお楽しみにする。肉の迫力に加えて野菜もたっぷり種類豊富で、キャベツに玉ネギ、インゲンにピーマン、どっさりのカイワレと数えながら食べ、さらに底には沈んだニンジンがゴロゴロ。カレーにつきもののジャガイモのかわりに、山芋なのが面白い。野菜は持ち味や彩りを考慮して、素材ごとに煮たり揚げたり下ごしらえを変えており、インゲンや赤ピーマンは油通ししているおかげで色鮮やかで味が濃い。これは「野菜スープカレー」といってもおかしくないほどだ。

 あまりに具がたっぷりなので、先にいくらか食べないとスープが見えてこない。地元客にならってナイフとフォークで鶏と野菜を食べ進めながら、合間にスープをスプーンでひと口。最初にビシッと熱く感じたのは、数口食べると実は熱さでなく激しい辛さなのに気付く。舌に叩き付けられるように厚みがあり、頭を覚醒させてくれる。この店のスープは豚骨と鶏ガラをベースにしており、およそ20種に及ぶ様々な香辛料を合わせて2日間煮込んだ手間をかけたもの。複雑な立体感のある辛味に加え、賽の目に切ったトマトの酸味が、辛いのに後をひく味わいとなっている。甘味があるキャベツと玉ネギは、スープがこれだけ辛い方が持ち味が出るよう。具をほぼ食べ追えて残りのスープでライスを食べているうちに、ようやく辛さに慣れてきた。

 すっかり汗だくになって食べ終えて、気がつくとまわりは女性客ばかり。ランチタイムが佳境を迎えるころで、しゃれた店内とこの客層にこれは場違いとばかり、店を後にする。北海道を横断して魚どころやローカルごはんを食べ歩く旅は、これにて予定した分は無事終了。帰りの夜行列車「北斗星」が出発するまであと半日あり、小樽へ足を延ばして寿司屋通りを攻めるか、石狩へ遠征して本場のサケ料理をいってみるか。体力と胃袋、あと財布の? 余力は、もう少しばかりありそうだ。(2005年10月30日食記)

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